GALAXY Nexus レビュー その2 ―ページスクロールの加速に変化

 

 NTTドコモから12月2日に発売されたGALAXY Nexusのレビュー2回目をお届けします。2回目の今回は、主にAndroid 4.0の機能やブラウザの挙動について紹介します。OS自体の新機能は既に様々なニュースサイトに掲載されていますので、違った角度からAndroid4.0を読み解いていきます。

 

 なんといっても、GALAXY Nexusの最大のウリは最新版のAndroid 4.0をいち早く体験できることにある。GALAXY Nexusは「リファレンス端末」という位置づけであり、今後発売されるAndroid端末の方向性を指し示す教科書的存在になるものだ。これは、Apple一社が全端末を管理して販売するiPhoneには無い仕組みである。

 ここで、Nexusの教科書的仕組みが機能する事例を一つ紹介しておこう。GALAXY Nexusでは、従来利用されていた「ホーム」「メニュー」「戻る」などハードウェアキーが全てソフトウェアキーに置き換わっている。これは、Android4.0からは出来る限りハードウェアキーは利用しないという方針を反映させたものだ。これを踏まえて、来年春頃から登場する多くの端末からハードウェアキーが無くなることが予想される。


GALAXY Nexusではハードウェアキーが廃止された。
代わりにディスプレイ表示のソフトウェアキーが表示されている。
左から順に「戻る」「ホーム」「最近使ったアプリ」キー。

 

 このように、Nexusシリーズはスペック的ベンチマーク(指標)に加え、端末が有する機能についてもレールを敷いて方向性を示しているのだ。Nexusシリーズが一般にはオススメできないと言われる理由は、まさにそのリファレンス端末の性質にあり、一般向けに様々な便利機能や改良が加えたられた汎用端末のほうが何かと使いやすいと感じるのも事実である。つまり、多くの方々には春頃から登場するであろうAndroid4.0を搭載した市販品の方をオススメしたい。

 さて、今現在販売されているAndroidスマートフォンは「Android 2.x系」という「バージョン2」のものが搭載されている。一方、GALAXY Nexusは「Android 4.x系」という「バージョン4」のものが搭載されている。このことに疑問を感じる方がいらっしゃるかもしれない。そう、「バージョン3」を飛び越えて、いきなり「バージョン4」に数字が上がったのだ。では、バージョン3に相当するAndroid3.xはどこに行ってしまったのかというと、それはAndroidタブレット専用のものとして既に提供されている。

 つまり、スマートフォンを担当していたAndroid 2.x系と、タブレットを担当してたAndroid 3.x系が合流し、スマートフォンとタブレットの両方を担当するAndroid 4.0系が誕生したことになる。事実、Android4.0からは1つのOSでスマートフォンもタブレットも対応できる仕組みになっている。AppleのiOSがiPhoneとiPadの両方に対応しているのと同じ構図だ。

 実は、この「Android 3.xを飛び越えた」ということが数々の懸念事項を生み出すことになったと感じた。本稿では、それらの点にも触れながら最新のAndroid4.0やGALAXY NexusにおけるAndroid4.0の挙動について紹介していく。

■ページスクロール時の加速に変化、よりiPhoneらしく

 GALAXY Nexusでブラウジングをしていて真っ先に感じたことは「スクロールの加速度が変わった!」ということ。

 iPhoneを利用している人がAndroidを体験すると、「スクロールが一気に動きすぎる」といった意見をよく耳にする。これは個人の好みに左右されるので、一概に何が良くて何が悪いとは言えないが、Android4.0のスクロールはiPhoneとAndroidの良いところを両立した、とても心地よい仕上がりになったと感じた。

 

■GALAXY S2でのスクロール操作


■GALAXY Nexusでのスクロール操作


 動画では分かりにくいのだが、実際に触ってみると違いを感じることができる。従来は、わずかでも指を速くスクロールさせると瞬間的に加速してページ下端まで一気にスクロールするような動作をしていたのだが、GALAXY Nexusでは「瞬間的」ではなくなり、自然と加速するように変更されたようだ。それでいて、強く弾いた時は加速が弱まることなくページ下端までスクロールするので、従来のAndroidが持っていたメリットも継承している(一方ではデメリットと捉える人もいる)。

 また、緩やかにスクロールさせた際のスクロールも自然な動きになった。このことを表現する際に「摩擦係数」という表現を用いて滑り具合を表現することがあるが、まさに摩擦係数が高くなったといった感じである。Android4.0のコアの部分に関しては感知していないので正しいことは言えないが、どうやらスクロールの挙動選択にいくつかの判断基準があるようだ。その切替が絶妙であり、個人的にはiPhone(iOS)よりもスクロールが心地よいと感じる。

 なお、Android4.0からはGPUを用いたレンダリングにも対応しているが、ONとOFFの両方で差異を感じられなかった。

■ブラウジング性能はGALAXY S2が上回る

 Webブラウジングにおけるピンチやダブルタップによる拡大・縮小操作などでは、GALAXY S2の方がスムーズに動作した。いわゆる「ヌルヌル」といった尺度ではGALAXY S2に軍配が上がる。なお、GPUレンダリングをONにすると僅かに描画性能が向上したように感じた。ちなみに、ページの自動調整はオフにした状態でテストを行なっている。

 具体的には下記の動画をご覧いただきたい。


■GALAXY S2でのブラウジング



■GALAXY Nexusでのブラウジング


■GALAXY Nexusでのブラウジング(GPUレンダリングON)


 GALAXY S2が指に追従してスムーズにスクロールしているのに対し、GALAXY Nexusでは若干の引っ掛かりがある。また、最大限縮小した際のレンダリングでは大きな遅延も感じられた。

 この原因に関しては現時点ではハッキリしたことは言えないというのが本音である。短絡的に考えれば、GALAXY S2とCPUが同クロック(1.2GHz)で駆動するのに、解像度が向上したために処理負荷が高まっていると見る人もいるだろう。その一方で、GPUレンダリングに最適化しきれてないことが原因で、GPUレンダリングをONにしても劇的に改善されず、さらにOFFにした場合はON向けにに最適化されている為、性能が出ないといったことも僅かながら考えられる。それ以外にも、様々なチューニング不足やAndroid4.0用にFlashプラグインが最適化しきれていない可能性など、原因を推測すればキリがないといったところだ。

 なお、レビュー記事のパート3で様々な機種との性能比較を予定している。

■ブラウザのウィンドウも弾くことで削除



 Android4.0のタスクマネージャーに搭載されることで有名になった「ウィンドウを弾くことでアプリを終了できる機能」は標準ブラウザでも利用できる。わざわざ「×」ボタンを押すことなく、指で弾くことで気軽にウィンドウを閉じることができる。小さい画面で「×」ボタンを押す煩雑さから開放されたことは大きなメリットである。

■いい意味で、些細な部分にもこだわり始めた



 Android4.0で気に入った部分の1つに、スリープ状態(ロック状態)に移行するときの画面エフェクトがある。まるでブラウン管テレビの電源を切ったかのような終わり方をする。

 スリープ解除・スリープ入りの際のエフェクトは、iPhoneの効果音が最もよく考えられた「伝える力がある音」であると個人的に考えている。恐らく、Apple社内で何千回も試して選びぬかれた効果音であろうと推測されるが、Android4.0のように「明示的に画面で伝える方法もあるのか!」と、納得してしまった程だ。ただし、ブラウン管テレビを知らない世代にはまったく伝わらないエフェクトであるので、将来的には変わっていくであろうことが予想される。
(また、このスリープエフェクトを端末メーカー各社が採用するとは限らない。)

■メニューキー廃止が巻き起こす波紋

 Anroid4.0からは、従来存在した「メニューキー」が廃止された。その代わりに、マルチタスクにセンシティブに対応する「Recent Appキー(最近使ったアプリ)」が新たに加わった。実は、タブレット向けOSのAndroid3.0時点でこれらの変更は加えられていたのだが、スマートフォンでの採用はAndroid4.0が初めてとなる。

 GALAXY Nexusを2日間使用して頻繁に感じた不便は、まさにこのメニューキーに関することである。主に2つの不便があった。

 1つ目は、メニューキーを長押しすることで利用できる検索機能を利用できなくなったことだ。iPhoneと比較した際にAndroidに軍配があがると感じていた点は「検索との密な融合」であり、その一翼を担っていたのがメニューキー長押しによる検索機能であったと考えている。重要なのはこの検索機能がWeb検索だけを提供する物ではないこと。

 例えば、ツイッターアプリでメニューキーを長押しするとツイートの検索画面が表示されたり、ニコニコ動画アプリでは動画の検索画面が表示されたりするなど、アプリケーションに応じた検索窓が表示されるのである。特に、ブラウザを利用していた際にはWEB検索窓が即座に表示されるため非常に使いやすかった。


■Android2.xでのメニューキーによる検索機能



 これらの事情を考慮してか、Android4.0の標準ブラウザでは若干の改良が加えられている。下にスクロールした際にアドレスバー(このアドレスバーは検索窓としても機能する)が消えることに従来から変更はないのだが、上にスクロールすると即座にアドレスバーが表示されるようになった。したがって、即検索できるという点に変わりはない。しかし、これは標準ブラウザのみに提供されている機能であって、他のアプリに提供されるかといえば必ずしもそうではない。この辺が不便に感じた理由の1つである。


■Android4.0からは上スクロールでアドレスバーが表示される



 2つ目は、アプリケーション側に表示されることになったメニューボタン位置がアプリによってバラバラな点である。下の画像にあるように、とあるアプリでは右上にあったものが、別のアプリでは左下にあったりと、重要な役割を持つボタンが移動してしまうのである。アプリの開発上の制約を無くすために配置する場所を固定にしなかったことが考えられるが、ユーザインターフェイス設計としては手放しには喜べない状況だ。(なお、Android4.0にネイティブ対応していないアプリは例外なく下側に表示されるようだ。)


Android4.0に対応している2chMateは右上に表示されている。
一方、ニコニコPlayerはソフトウェアキーの所に4つ目キーとして表示される。

■変わることへの戸惑いと、変わらないことへの退屈さ

 変わらないことは悪であり、変わることもまた悪である。何かを変えるということは非常に野心的であり、リスクが付き物だ。特に、オペレーティングシステム(OS)においてはその選択に慎重にならなければならない。

 Android4.0から、ほぼ全てが変わったといって良いほど、ユーザインターフェイス仕様やそれを表現するデザインまでもが変更された*。Android3.xを飛び越えてAndroid4.0になった事で、変わり具合に拍車がかかっている。

*実際はAndroid3.0からの部分が多いが、今回はスマートフォンに限った話ということ「Android4.0から」という表現を用いている点をご了承いただきたい。

 Android4.0で加えられた変更は、Android2.x系からスマートフォンを使い始めたライトユーザーにとっては戸惑うほどの大改変だ。ガラケー時代に「N(NEC)に慣れてるから、他のメーカーに移れない」といったような風潮があったが、当時のメーカー間の差異を遥かに超えた変化が加えられている。これがGoogleらしさといえば、なるほどと納得できるが、現在のAndroidのシェアを考えればチャレンジしすぎるのも良くないと個人的には思う。

 Android2.xまでは細部まで熟慮していなかったと認め、Android4.0で変更を加えたことは喜ぶべきことである。しかし、ここまで大規模な変化は今回で最後にしないとユーザーにとって使いにくいOSになりかねない。つまり、OSにおけるユーザインターフェイス設計はそこまで慎重にならなければならないのである。言葉は悪いが、「馬鹿にも受け入れられる」ということは非常に考えぬかれた製品を世の中に提供している証拠でもある。

 果たして、Android4.0は最低5年は本質的には変わらないOSなのだろうかと考えると心配な点が数多く残っている。例えば、先に挙げた「近い将来変わるであろう、ブラウン管テレビの電源を切ったようなスリープエフェクト」もその一つであり、Googleの「変わらないこと」へのスタンスが垣間見られる。Appleが初代iPhoneから一貫してスリープ・スリープ解除音を変更していないことを考えると対極的だ。

 また、メニューキーの廃止もAndroid4.0で決断された変化の1つだ。iPhone(iOS)ではマルチタスクを利用するのに、ホームボタンをダブルクリックするというお世辞にも便利とは言えない方法を採用している。そのことを考えれば、Recent Appキー(以下、マルチタスクキー)としてマルチタスクに特化したキーを用いることは当然の流れである。

 では、「4つ目のキーとして用意すればよかったのではないか?」という意見もあるかもしれない。しかしその方法が採用されなかったのは、前述のように小型デバイスにおける物理的制約や、発売済の旧デバイスへの対応で4つのキーを実装できない理由がある(HTC製端末は除く)。また、それ以上に「人間の脳にとって4つの選択肢は多すぎる」ということだ。Appleがホームボタン1個にこだわるのも、善きシンプルさを追求した結果に他ならない。しかし、そんなAppleも、ソフトウェア側の機能が増えることで「善きシンプルさ」が「悪しきシンプルさ」に変わろうとしている点も見逃してはならない(ダブルクリックによるマルチタスクの例など)。何が良くて何が悪いのか、堂々巡りしてしまう状況だ。では、どうしたら良いのだろうか?

 これについては、オペレーティングシステムやユーザインターフェイスの哲学的話が絡んでくるし、現時点において誰も最適解を導き出せていないのではないかと思う。ただし、GoogleはGoogleなりの一番良い選択肢を選んだようだ。それは、ハードウェアキーからソフトウェアキーに変更したことである。つまり、ソフトウェアキーにすることでキーが持つ機能をユーザーが自由に選べる可能性を残している*。将来的に、マルチタスクキーではなくメニューキーが欲しい場合は設定項目で選べるようになるかもしれない。これはいかにもGoogleらしい。

*ハードウェアキーでも実現可能な機能ではあるが、キーの役割を示すアイコンは変わらないなど、UI設計上の不備が残る。余談ではあるが、キーの役割変更はアプリ開発上の懸念事項を残すことにもなる。導入に慎重になるのはそのためだと推測される。


 機能が煩雑化する一方で、何を変えたら良いのか、何を変えてはいけないのか、その判断が非常に難しくなってきている。”神様”にでも聞かない限り、市場に投入してみなければ結果が分からないといったところだ。

 今回、非常に長くなってしまったが、それだけAndroid4.0は色々なことを考えさせられる楽しいOSであるということだ。正直なところ、まだまだ書き切れないほどである。スマートフォンが進む未来や、AppleのiPhoneとの対決の行方を予想するためにもAndroid4.0に触れることは貴重な体験になるはずだ。

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