連載:日本の家電メーカーが倒れる時 1 「黒船、有機EL」

第2回 「未来の暮らしはこう変わる」
 http://ggsoku.com/2012/01/series-oled-2/

●はじめに

 韓国サムスン・LG製有機ELテレビ関連ニュースを取り上げる時に「プラス面に捉えすぎである」とご指摘を頂くことがあり、一度、その理由をしっかりとご説明する機会を設けることが読者の皆様への礼儀であると考え、今回の連載を書くことにしました。

 サムスン製有機ELテレビが、単に高画質だけならば、過去のように取り上げることもないのですが、実は、サムスンが有機ELテレビに背負わせた役割はとても大きい考えています。過去に半導体(DRAM)や液晶で没落した日本企業の事例を鑑みるに、過小評価は大きな過ちを生みます


日本人はあの時、今の姿を想像できただろうか

 サムスンが有機ELに背負わせた役割の大きさについて触れる時、どこまで触れるべきなのかしばらく悩みました。それらには未来の予想が含まれており、あまりにも話が壮大になりすぎてしまう恐れがあったからです。

 例えば、近日発表されるであろうiPad3の予想は現実に即したものですが、裏付けがないまま5年や10年スパンの話をすると、それはSFになってしまいます。とはいえ、機密情報であるロードマップや関連情報を外部公開する企業はなかなか存在しません。

 ロードマップが私たちの目に触れることがなくても、企業はそのロードマップに従って世界を変えようと努力します。大きく変わる時が必ずやってくるのです。予想を外す恐れがある未来の話をせずに、過去の検証のみを書き連ねた方が評価を得られやすいので、その逃げ道を選ぶこともできました。しかし、たとえ外したとしても皆様と未来について考えることで得られるものがあるのではないか?と考えるに至りました。

 また、過去に企業が犯した失態に対して「あのやり方が悪かった」と後付理論で批判に徹するのもアリですが、「じゃあ今後どうすればいいの?」という解決策をひとつも示さずに、文句ばかり垂れていても何も始まらないという想い(反省)がこの記事を執筆する動機づけの一つになっています。

 連載の流れとしましては、第1回は有機ELテレビについて、第2回はAppleとGoogleが目論むテレビを基軸とした未来の生活についてを2日連続でお送りします。第3回以降は原則2日1回のペースで更新し、合計5回のシリーズでお届けします。

 本シリーズは未来の予想も扱う内容ですので、「こういう見方も存在する」という心構えでご覧頂けると幸いでございます。1つの創作ストーリー状態ではありますが、内容とその予想には管理人なりの自信をもってお届けします。そして、シリーズを通して皆様の中にある考えを深めて頂き、活発な議論がコメント欄で行われることをとても楽しみにしております(管理人は全てのコメントを拝見させて頂いております)。

 また、本シリーズは皆様から質問も募集いたします。お寄せいただいた質問に対するアンサー記事も別途掲載予定です。質問は、コメント欄やTwitterのDM、電子メール(匿名可)でお受けいたします。ちょっとした疑問でも結構ですので、お気軽にご質問をお寄せください。(※Twitterのリプライだと気付かないことが多々あります)

 さて、前置きが長くなりましたが、Apple、Google、SAMSUNGが描く未来の物語がここから始まります。私たちの生活はどのように変わるのか、スティーブ・ジョブズが残したロードマップとは、そしてその時、日本企業はどう動くべきなのか。

 シリーズ「日本の家電メーカーが倒れる時」、どうぞお楽しみください。

●サムスンの高級路線は日本で成功するのか

 先日、日経新聞・電子版が報じた「サムスン、薄型TVで日本再参入 有機EL13年にも」(元記事消失)の記事によると、サムスンは2013年中にも、3D対応40インチ液晶テレビや55インチの有機ELテレビを投入するとしています。また、投入するモデルは「値崩れを避けるために、高級路線で行く」としていますが、過去に一度、日本の薄型テレビ市場から撤退したサムスンが高級路線で再参入することを疑問視する声も少なくありません。

サムスン電子が日本の家電業界から撤退 – 2007年11月9日
http://gigazine.net/news/20071109_samsung_pullout/

 この声は至極当然であると思います。端的に言ってしまえば、前回の日本参入の際にブランド構築に失敗しているのです。ブランド(信頼)が構築できなかったにも関わらず、今度は高級路線で行くと言っているのですから、日本人にとっては怪しい商人が「本物」と称する金銀を売り歩いているようにしか見えず、それが金メッキなのか純金なのか判別することが難しい状況にあります。

 日本の家電市場は極めて特殊であり、世界で活躍する家電メーカーが多数存在する国は日本以外に存在しないと言ってもよいほどです。と、いうと実は若干の誤解があります。正確には「日本ほど、メーカーそれぞれが高級品に位置づけられる程のブランドを確立している国は存在しない」といった感じでしょうか。

 テレビを発売しているメーカーをざっと列挙するだけでも、シャープ・ソニー・パナソニック・東芝・日立などのそれぞれが一流メーカーに位置しています。店頭に並ぶほぼ全てのテレビが世界的にみて高級ブランドで、しかもそれぞれがある程度に安い、という激戦区なのです。また、購買判断を行う際に日本以外のアジアメーカーに対する信頼度が極めて低い国であるということも見逃すことができません。

 このように、高級メーカーが軒を連ねる日本市場で、過去にブランド構築に失敗したサムスンがさらに上をゆく「高級路線モデル」を投入するとしているのですから、尋常じゃない愚策で、負け戦に見えるのは当然です。しかし、その見方は本当に正しいのでしょうか。実は、その見方は大きな誤りであると管理人は見ています。


LGも同じく55型有機ELテレビを世界発売する
上記画像は商品画像であるが、あまりの綺麗さにハメコミ合成か否かで
賛否両論。まもなく開催されるCES2012で真偽が明らかに。

●高級路線こそ、サムスンが日本を切り崩す最後の手段

 液晶テレビの値段は十分に下がり切りました。日本市場も例外ではなく、32インチのフルHDモデルが3万円台で売られており、3D対応機種でも5万円台まで値下がりしています。3・4年前では考えられない程の値崩れを起こしています。

 仮にサムスンが低価格戦略を遂行したらどうなるでしょうか?

 サムスンも含めてどのメーカーもギリギリの消耗戦を繰り広げており、為替相場を見据えた生産を行ったり、製造・輸送コストを1円でも下げたりと努力しています。したがって、パネルを自社生産しているサムスンといえど、他社と比較した値下げには限度があります。それどころか、パネルの自社生産が足かせになる可能性もあるのです。

 このような状況下で、サムスンが32インチフルHDテレビを29,800円で販売したとして、日本の消費者にとって魅力のある商品に映るでしょうか。隣でソニー製テレビが32,800円で売っていたとしても、日本人はサムスン製テレビを選択するのでしょうか。サムスンはおそらく、この問いに「無理であるし、メリットが皆無である」と結論を出したのではないかと思います。

 ドンキホーテやイオン向けの格安テレビを手掛ける役目は、既にサムスンのテリトリーから大きく離れています(日本という場所ならば)。
万が一安物ブランドのイメージが定着すれば、自社のスマートフォン「GALAXY」のイメージを損なうだけでなく、今後の商品展開の足かせになる恐れがあるのです。かといって、他社と同じ物で勝負をしかけても強靭な日本ブランドを前には負けてしまいます。ならばどうするか。

 サムスンが出した答えは「有機ELを基軸とした高級路線である」と管理人は見ています。

●液晶テレビの没落

  サムスン日本再参入のシナリオに触れる際、サムスンが投入するとされている「高級液晶テレビ」と「有機ELテレビ」の2種類は別個に考える必要があります。なぜならば、高級液晶テレビの方は全く売れないと断言してもよいからです。恐らく、サムスンもそのことを承知のことでしょう。

 では、なぜ高級液晶テレビは全く売れないと断言できるのでしょうか。

 それは、液晶テレビの差別化が極めて難しい状況にあるからです。例えば、高級モデルとして売り出す商品が3DやYoutube(ネット)に対応しているだけで何万円も価格上昇することに消費者は納得できるでしょうか。その上、3Dやネット対応のテレビすら安価に販売されている状況です。これらの事情を考慮すると、3Dやネット対応機能を以って高級モデルとするには無理がありそうです。

 次に、Skype機能はどうでしょうか。搭載されたカメラを使って、(主に)離れて暮らす祖父・祖母とビデオチャットができる機能です。この機能を実現するには双方の家庭に同機能が存在するテレビが必要ですし、そもそもこの機能に価格上昇の価値を見いだせる人がどれほど存在するのか不明瞭です。

 では、何を備えたら高級モデルとして恥じない仕上がりになるのでしょうか。

 「高画質化のためのエリア駆動LEDバックライト」はどうかと考えると、対応モデルと非対応モデルを横に並べても誰もが驚くほどの劇的な画質の差は伝わりません。画質を重視する層には確かに違いが分かりますが、老若男女、どの世代にも明確に伝わる画質の差はエリア駆動LEDバックライトでは生まれないのです(RGBアレイ方式も難しい)。

 その他の様々な高付加価値機能の一つ一つについて考えても、消費者にとっては「余計なオモチャ」程度にしか映らないことが想像できます。まるで、日本の携帯電話のように「ムダな高機能化」状態に陥っているのです。

 このような事態は日本以外でも例外ではなく、ほぼ全てのテレビメーカーが苦しんでいるといっても過言ではありません。また、「消費者にとってムダな高機能化に映る」という悪循環は、第1世代GoogleTVが失敗した理由の1つにもなっています。さらに、第2世代GoogleTVやApple製TV(iTVと呼ばれる)の成功予測を難しくしている要因にもなっていると考えられます。

 コモディティ化により低価格競争に突入した液晶テレビは、商品自体の価値をも下げてしまい、どんな付加価値をつけても成功しにくい体質になってしまいました。これが、サムスンが投入する高級液晶テレビが失敗する理由だと考えています。

●有機ELは武器になるのか

  では、もう一方の有機ELテレビはどうでしょうか。

  これについては、正直なところ「結果は分からない」というのが現時点では正しい回答ではないかと思います。しかし、後述するいくつもの要素が絡んでいるため、管理人の個人的予想では「成功するのではないか」と考えています。

  その理由の1つに、圧倒的高画質を有している点が挙げられます。大型有機ELディスプレイを展示会でご覧になったことがある方はご存じかと思いますが、その画質に見る者は圧倒されます。まさに印刷物が動いているかのような発色の良さです。ソニーが過去に発売した11型有機ELテレビ「XEL-1」も十分にすごいものでしたが、大型パネルになると印象はさらに変わります。

 55インチの大型サイズで有機EL方式を採用しているならば、量販店の店頭で消費者に与えるインパクトは非常に大きなものになることでしょう。特に、横に液晶テレビが並ぶ状況になりやすい店頭では差が顕著になると思われます(恐らく、サムスンは自社の液晶テレビを横に並べる展示方法を量販店にお願いしてくるはずです)。

 画質に関する尺度は個人の感覚でもあるので一概に言いにくいものではありますが、液晶テレビと有機ELテレビの画質差は、DVD vs Blu-rayにおける画質差を遥かに凌ぐレベルであり、有機ELが持つ高画質という特性は、液晶テレビにつけるオモチャ的付加価値とは全く別次元の「価値」を有していると管理人は感じています。

 次に、2つ目の理由として、ターゲット層が富裕層に向いている点が挙げられます。

 サムスンが投入を予定している有機ELテレビは55インチです。55インチのサイズを求める消費者は平均より上の所得があり、広いリビングを有しています。その層は価格よりも品質(画質)を優先しやすい層でもあります。サムスンによる日本再参入自体の成功確率は決して高くはありませんが、一番成功しやすい層を選択するならば間違いなくこの層です。この層に対して、液晶陣営がオモチャのような付加価値しか提示できないのに対し、サムスンは有機ELという圧倒的画質の価値を提供できることが日本メーカーにとって打撃になる可能性があります。

 また、吉永小百合(シャープ)によってブランドを構築される世代は初めから相手にしていない可能性があります。言うならば、スマートフォンでGALAXYが選択肢に入る年代(40~50歳)までといったところでしょうか。

  しかし、個人的な感覚としては、高画質と適切なターゲティングだけで成功するとは到底思えません。では、なぜ成功すると予測しているのかというと、それは3つ目の理由にあります。

  3つ目の理由は世界規模の話になりますが、サムスンが有機ELテレビを世界展開する際にGALAXYと同じ手法を採用する可能性があるということです。このことが、成功する大きな要因になると考えています。したがって、サムスンの有機ELテレビにはGoogleTVが標準搭載されるのではないかと予想しています。このことについて、次項以降で詳しく扱っていきます。

 ※焼き付き問題についてはCES 2012の発表を見ない限り何も言えないので、今回は触れないこととします(個人的には焼き付き対策に関して、技術的なブレイクスルーが起こったとは考えにくい)。もし、焼き付き保証で新品交換サービスなどを提供したら、80年台にリコール問題の苦境を逆手にとってレクサスが北米で地位を得たように、大きな変革が起こるかもしれません。

●有機ELテレビはGoogleTV標準搭載の可能性

  もし、サムスンが有機ELテレビにGoogleTVを搭載しない場合、戦いの構図は「液晶テレビ vs 有機ELテレビ」という非常に大きなセグメントで区切られたものになってしまい、厳しい戦いを強いられることが予想されます。なぜなら、多数の相手に画質のみで勝負することになるからです。

ところが、GoogleTVを搭載することで構図は一変(チェンジ)します。このことはちょっと難しいのでもう少し詳しく書いてみましょう。構図チェンジの話と、かなり上で書いた第1世代GoogleTV失敗の話は非常に関係が深いため、それを例に説明します。

 第1世代GoogleTVが失敗に終わった理由の1つとして「消費者にとってGoogleTV機能がムダに映る」という理由を挙げました。これは、GoogleTVを採用した機種が1種類の時にもっとも起こりやすい現象でもあります。つまり、1種類の状態ではGoogleTVという価値が、消費者にとって単なる液晶テレビの付加価値程度にしか捉えられていなかったのです。言い換えるならば、GoogleTVというジャンルの形成に失敗した状態です。そのことにより、消費者の目には「多数の液晶テレビ同士の戦い」という構図に映ったのです。

 ところが、多数のメーカーがGoogleTVに参入することでGoogleTVという1つのジャンルが形成されます。こうすることで、消費者はジャンル同士で比較するようになり、さらにその中にあるジャンル内で製品を選ぶようになります。まるで、ガラケーには目もくれず、Androidというジャンルの中で1つの端末を選ぶのと同じことです。

 もちろん、初期の時点ではGoogleTVというジャンルの魅力度が低いことが考えられ、上手くジャンル同士の戦いに持ち込めるか不明瞭ですが、GoogleTVというジャンルが魅力的になればなるほど、消費者は普通のテレビには目もくれずにGoogleTVという枠組みの中で消費判断を下す可能性があります。そうなれば、今度はGoogleTVの中でメーカー同士の戦争がはじまります。まさにAndroidと同じ状態です。

 サムスンは、有機ELテレビをGoogleTVというジャンルに属させることで、戦いを有利に進め、更に有機ELという利点を活かしてジャンル内でも勝利しようとしているのではないか、と推測しています。そして、そのジャンル内での勝利のために用いるのがGALAXYでも採られた手法だと考えています。

●圧倒的なスペックは利点になりやすい

GALAXYで採られた手法とは、以前の記事『[回答]スマートフォンの将来、日本企業に足りないもの、FeliCa輸出失敗の裏事情』 で触れた手法のことです。

サムスンの場合、手法はどうであれ「Apple vs SAMSUNG」という構図の構築に成功したのが非常に大きいです。つまり、「Apple vs Android」の構図では、消費者がAndroid端末を発売するメーカー各社に分散するのに対し、「Appleと対峙するAndroidのハイエンド (代表格)はSAMSUNGである」という構図を構築したことによって、消費者は「iPhoneか、SAMSUNGか」という選択肢で悩むことになります。

 1つ前の項でも触れていますが、GoogleTVに参戦するメーカーが多数でてきました。新世代GoogleTVをリリースするメーカーは、ソニー、Vizio、LG、そしてSAMSUNGです。また、Googleのエリック・シュミット会長は「2012年夏には大半のテレビがGoogleTV対応になる」としており、東芝などの参入も噂されています。この構図は、まさにAndroidと同じなのです。

 GoogleTVは早くも戦乱の相を呈しています。Androidの時と同様に、他社よりも一歩以上リードするには「フラッグシップイメージ」は必要不可欠です。それを手に入れるためにサムスンは、RGB方式の有機ELという、LG電子にも持ち合わせてないオンリーワン技術を最大限に活用し、Googleと密に連携して次世代のテレビを切り開いていくことでしょう。

 「次世代のテレビ(GoogleTV)」は「次世代の有機ELパネル」と「次世代のプロセッサ」を搭載した「サムスンがベストである」と大々的に宣伝しても不思議ではありません。さらに、GoogleTVにおいてもAndroidにおけるNexusのようなパートナーシップをGoogleと結び、最先端はSAMSUNGが握っているというイメージ戦略を展開することも考えられます。

  なお、2012年は有機ELテレビが60万円台という調査会社の見込みがあるので、これが本当であれば、サムスンは液晶と有機ELの2つの柱でGoogleTVを投入してくるのではないかと思います。いきなり60万円の有機ELテレビ専売ではターゲットユーザー層が絞られ過ぎています。2年目の2013年には30万円台まで値下がりするという見込みがあるので、例え液晶が貧弱な商品であっても、GoogleTVでの地位を確立するために1年目は液晶テレビを併売し、2年目以降に有機ELテレビを本格的に売り込む足がかりとするのではないでしょうか。また、これらのことは、全く売れないことが分かってる高級液晶テレビを日本にも投入してくる理由と合致する点でもあります。

  さて、日本再参入の話題に限って最後に注目したい事が1つあります。

 それは、有機ELテレビを用いた再参入は「最後の策」であるということです。サムスンがどんなに革新的な洗濯機や冷蔵庫、液晶テレビを日本市場に単体投入したとしても家電業界に切り込むことは不可能です。有機EL+GoogleTVにしかその役目は果たせません。背水の陣ともいえる今回、サムスンがどれほど本気で臨むのか想像することはそう難しくありません。何せ、日本のテレビ・白物家電を切り崩せれば天下を取れるのです。その最後のチャンスをそう簡単に潰すとは管理人は思えないのです。

 GALAXYの成功にはドコモのブランドと広告戦略があったという見方がありますが、SAMSUNGとGoogleはGoogleTVと有機ELパネルの普及の為に、どれほど日本市場に力を注ぐのか楽しみです(恐らくすごい規模)。

●GoogleTV+有機ELから始まるサムスンの日本メーカー駆逐戦略
 iTVとGoogleTVの本質はビデオコンテンツではない

 長くなりましたが、最後に次回に続くお話をご紹介したいと思います。

 GoogleとAppleが次世代のテレビを通じて実現したいことは、映画のレンタルでもなければ、録画機能でもなく、ゲーム・インターネット機能でもないと推測しています。iPadが発表されたときに電子書籍ばかりがクローズアップされましたが、本当の狙いは別にあったのと同じように、GoogleTVやAppleのiTV(仮)における映画レンタル機能などは客寄せパンダにすぎないのではないかと思うのです。

 もちろん客寄せパンダ的コンテンツは最終目標を実現するために必要不可欠なものなのであり、コンテンツ配信業は大きな利益を生むため、GoogleもAppleもコンテンツ獲得に必死になると思われます。しかしながら、本質は別のところにあるという可能性を頭に留めておいて損はないかと思います。

  では、GoogleとAppleは最終的に何をしたいのか。

 それは、白物家電のネットワーク制御とそれを通じた行動情報の蓄積にあると考えています。そして、その行動情報を広告利用目的だけではなく革新的な未来の暮らしを実現するために利用するということ。そして、その家庭用ハブに最適なのがPCやホームサーバではなく、テレビであること。さらに、AV機器から白物家電まで手掛けるサムスンとGoogleの利害関係は一致しているのではないかという予想です。

  端的に言ってしまえば、GoogleとAppleは白物家電は決して販売しませんが、ネットワークによる制御までは食い込んでくると思われます。一方のサムスンは白物家電も販売していますので、Googleとの連携により、自社の白物家電を進化させることでしょう。そのことは、GoogleにとってもGoogleTVの魅力を増す重要な要素になることは言うまでもありません。

 日本の家電メーカーを押し倒すのは「ネットワーク家電制御機能」であり、その制御機能を実現するのがGoogleTVやiTVで、そしてGoogleTVの普及の鍵がサムスン製有機ELテレビであるというのがこのシリーズの本筋です。

 日本の家電メーカーに高度なソフトウェアを組み込むマンパワーが存在するのでしょうか?押し倒す連鎖の入口である有機ELテレビをそれでも楽観視しますか? その疑問の続きは第3回を予定しています。

 次回は、GoogleやAppleが思い描く未来の暮らしについて、Appleの30年ロードマップにも触れながらご紹介していきたいと思います。

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