連載:日本の家電メーカーが倒れる時 2 「未来の暮らしはこう変わる」

第1回「黒船、有機EL」 (前回)
 http://ggsoku.com/2012/01/series-oled-1

●前回の記事を補足

 管理人の文章が悪かったことに加えて、思慮不足により第1回のタイトルを「黒船、有機EL」としたことも相成って、あたかも「有機ELテレビがとても強大な力を持っており、有機ELテレビだけで全てをなぎ倒してしまう(バカ売れする)」といったような伝え方をしてしまいました。ご迷惑をお掛けしましたことをお詫びいたします。

 今回、大きな錯誤があった部分のみを補足させて頂きます(コメントして下さった方の中に、上手い書き方をされていた方がいらっしゃったので、一部お借り致します)。

 若干言葉遊びのような形になってしまいますが、歴史上の黒船はその役目の通り、アメリカ合衆国大統領の親書を携えて日本に開国を迫ったもの(伝える役・威圧を与える役)と解釈して用いました。つまり、当時の日本にとってはアメリカ合衆国および開国の要求が脅威であり、それを伝える役目が黒船です。また、黒船自体にインパクトがありましたので民衆の間で一騒動が起こりました。

 これを第1回の記事に当てはめると、国産メーカーにとって本当の脅威はスマートテレビ(GoogleTV)であり、それを伝える役の黒船が有機ELテレビになります。有機ELテレビは技術的にインパクトがあるため、「まさに、黒船だ」と考えた経緯があります。したがって、有機ELテレビは無視できない存在であるというのが筋です。

 有機ELテレビだけでもダメですし、GoogleTVだけでもダメという考えであり、両方を同時に満たしてようやく売れる可能性が生まれるといった趣旨が1回目です。もちろん、有機ELにあたる部分はソニーが新発表したCrystal LED Displayでも構いません。しかしながら、有機ELテレビもCrystal LED Displayも、ただ高画質でデザインが良いだけでは本当に売れるのか懐疑的です。消費者の大多数は液晶テレビで必要十分を満たしています。そこで、GoogleTVというジャンル(カテゴリー)を新たに盛り上げる一方で、それを利用しつつ、その中での戦いに「高画質」というポテンシャルで勝利するというのが最も有効な手段であると考えています。

●世界は必要十分に満足してしまうのか

 最近、『スマート』という言葉をよく見かけます。「洗練された・賢い」といった意味で用いられ、スマートフォン、スマートグリッド、スマートテレビ…などといった具合に、「スマート」を冠する商品やサービスが増えているようです。ある種のバズワード化しつつあるこの単語ですが、”スマート”ブームの発生にはしっかりとした理由があります。

 その理由一つが、「コモディティ化への対応に伴うネット対応を”スマート”と呼んでいること」です。新興国を含めて様々な国が商品開発に携わるようになった結果、競争が激化し、それに伴ってコモディティ化が驚くべきスピードで進んでいます。1980年台に、世界で通用する電化製品を企画・製造する国は非常に限られていました。ところが今では、中国・インド・台湾などを筆頭に、様々な新興国も加わっているのです。このことは「グローバル化」という単語で置き換えることができますが、グローバル化は同時に競争の激化を生み出しています。

 企業は他社製品との差別化を行うために、特に、電化製品分野(中でもAV機器)においてはインターネットとの融合を強く意識するようになっています。双方の親和性が高いことが融合を加速させる主な要因ですが、インターネットに魅力的なコンテンツ(動画配信やSNSなど)が流通しはじめたことも要因の一つになっているようです。そして、これらのネットコンテンツと融合する機能を「スマート」と呼んでいることで、スマートな●●商品が増えていると言えます。

 一方、AV機器とネットの融合をはじめとする、いわゆる「高機能化競争」の対にいるのが「低価格競争」です。必要十分の機能のみを提供し、人々に安価に商品を提供する流れです。

 高機能化には開発リソースの増大がつきものです。機能が増えれば開発時間もバグも増え、比例するように人員も費用も増えていきます(例:日本の携帯電話)。ところが、苦労の割に鮮度が短いというジレンマが存在するのです。テレビの付加機能が「何かを映す」という本質の機能を超えることがないように、どんなに素晴らしい付加機能を開発しても本質の機能を超えられないため鮮度が短いのです。また、苦労して開発した付加機能も、いずれ技術革新によって安価に提供されるという悲劇も待ち受けています(例:5万円で買える3Dテレビ)。

 これらのことを考えると、いずれ安価になってしまうのであれば開発費も設備投資も必要最低限に抑えた方が得策に思えてしまいます。電化製品に限って言えば、テレビ、冷蔵庫、掃除機、エアコンなどは十分に進化したように思え、これ以上の改善は費用対効果に見合わないように見受けられるのです。これらのことを考慮すると、今後は必要最低限の機能を満たした製品で溢れる退行世界(※1)が訪れるのでしょうか。

 この答えを求めるには市場経済の観点や産業構造などの幅広い視点から探る必要があるのですが、(本サイトの主題である)技術的な観点からのみ探るのであれば、どうやら退行世界は訪れないようです。退行する世界を否定するもの、それは「真のスマート化」であり、それを狙っているのがAppleやGoogleをはじめとする世界を変えるビジョンを描くことが出来る企業であると管理人は考えています。

(※1 「退行」は完全に逆行する語句ですので、実際は「遅滞」が正しい語句であるように思えます。ここでは、退行世界の方がイメージが伝わりやすかったことに加え、進化を否定することは文明の退化であるという考えの下、「退行世界」としました。)

●真のスマート化を狙う企業たち

  では、「真のスマート化」とは一体何なのでしょうか?

 それは、人の気持ちを予測して自動で動作する機械に代表されるような、SFで描かれるの未来暮らしを実現する基礎システムです(より具体的な例は次項)。しかし、SFだからといって馬鹿にしてはなりません。重要なのは、SFがSFでなくなるために、世界の名だたる企業は実現に向けたロードマップを描きそれに従って着実に歩んでいるであろうということです。

 人々は大抵、SF映画やSFドラマを通じて未来のモノをいきなり目にします。驚くような未来のイメージをいきなり目にするものですから、現実とのギャップによって「実現しない世界」と感じてしまいがちです。まるで、1968年に『映画 2001年宇宙の旅』でiPadの原型を観ても大抵の人は夢物語と感じてしまったように、実現までの道筋が想像できなければ現実味を感じられないのは当然なのです。

 

 しかし、世の中にはいい意味で「馬鹿」がいます。SFの世界を実現しようと着実な道筋を立てて一歩ずつ進む人がいるのです。その道筋と目指す未来の形が「世界を変えるビジョン」であり、それを描ける企業が世界を変えるのです。

 世界を変えるビジョンが文明に進化をもたらすことは歴史が証明してきました。新しい技術などが起因となって、性質の異なる複数の産業に大きな変革が起こる時、それに伴って「私たちの生活が物理的に大変便利になる」という効果が発生しています。それは小手先だけの便利さではなく、生活自体を変えてしまうような圧倒的な便利さです。古くは蒸気機関や自動車、直近の例では電化製品やITがそれにあたり、同時にその時々の退行を否定してきました。「真のスマート化」こそ、次世代の「物理的な便利さ」を人々に提供するものであり、同時に、退行する世界を否定するものであると考えています。

 
 余談ですが、現在スマートという名を冠している「スマートテレビ」は真のスマート化にあたるものなのでしょうか。

 今現在、GoogleTVやiTV(※2)の主な機能であるビデオオンデマンドやインターネットブラウジング機能について考えると、人々の余暇活動を満たしたり、好奇心を刺激する程度に留まっています。ビデオレンタル店に赴く必要がなくなるという点では物理的な便利さを提供していると言えますが、生活自体を変えてしまう圧倒的便利さとは言えません。

 したがって、2012年現在のスマートテレビはあくまでも電化製品やインターネットサービスにカテゴライズされる商品でしかなく、産業を変革するほどの力は無いといえ、真のスマート化を踏襲しているとはいえません。このことからも”現時点では”、日本の名だたる企業にとって脅威になるような存在にならないことが推測できます。……”現時点では”。

(※2 Apple製TVのiTV[仮称]は正式に発表されておらず、スティーブ・ジョブズ公認伝記で触れられているにとどまっており、実際の機能がどのようなものなのか判明していません。従って、GoogleTVと同様の機能が実装されているという噂を基に名前を列記しています。)

●真のスマート化の具体例
 ~人体から人の気持ちを読むことは難しい
  しかし、過去の蓄積情報から人の気持ちを読むことが出来る~

 真のスマート化の具体像がよくわかる例を1つ紹介します。

 米IBMは、昨年12月19日(現地時間)に「Next Five in Five(今後5年間に実現する5つのイノベーション)」の最新版を発表しました。これは5年毎にIBMが発表している未来予測であり、前回の2006年から5年経ったため最新版が発表されました。その内容は以下の通りです。

 

  1. 家庭用電力の”人力による供給”
  2. パスワードが不要に
  3. 読心術の実現
    IBMは脳をスマートフォンやPCと接続する方法を研究しており、例えば誰かに電話をかけたいと考えるだけで電話がかけられるようになる仕組みに取り組んでいる。この取り組みでは、人の表情や興奮度、集中レベルなどを認識する脳波センサーを搭載したヘッドセットを開発しているという。この技術は5年以内にゲームやエンターテインメント業界に採用され、将来的には医師がリハビリテーションや自閉症の治療に利用できるようになるとしている。
  4. デジタルデバイドの解消
  5. 迷惑メールが価値ある情報に
    スパムフィルターの高度化だけでなく、ターゲティング技術による広告のパーソナライズ技術が進歩することで、広告個人にとっての貴重な情報源になる。例えば、自分の好きなバンドのコンサートチケットの情報が、予定が開いている日に特定して提供されるといった具合だ。

 

 この発表を受け、ニュースサイトなどでは「心が読める時代がくる!」といった感じで取り上げられていましたが、重要なのは3番ではなく5番です。一見すると地味な予測ですが、この予測こそ最も大切なものだと思います。

 小見出しにあるように、人体から人の気持ちを読むことは難しく煩雑なのです。3番の例がまさにそれであり、実際にはヘッドセットのような機器が必要になります。それらの機器は将来的に小型化されることが考えられますが、装着が必須であることには変わりがありません。また、電話をかけたいと頭のなかで思うことが必要なように、アクションを起こすには人が何らかの意思を示す必要があるため、能動的なものとなります。

 一方、5番の場合は過去の蓄積データを解析して推測するという方式が用いられており、欲しいと思っているものを受動的に受け取ることが可能になります。実は、この過去の蓄積データから答えを導き出すという手法は、機械的な推測のトレンドになっています(末尾に付録として掲載)。あくまでも推測なので精度が鍵を握りますが、IBMの例にあるように、もし、とあるバンドのコンサート情報が欲しいと思ってる人”だけ”に精確に広告メールを配信することができれば誰も迷惑しません。それどころか、届いた人に感謝されるほどの大きな価値を生み出します。

 このターゲティング技術とパーソナライズ技術はなにも広告メールの話だけではありません。究極的には、人間が「したい」、「やりたい」と思ってることを機械システムが99.999%の精度で推測し、その欲求に先回りして応えることに行きつきます。

 例えば、(実現はしないでしょうが)自宅リビングのドアを開けたいと思ってる人の欲求を推測して近づくだけでドアが開くが、開ける予定はなく素通りする人には無反応な家庭内自動ドア。ソファーに座ってテレビを見たい人の欲求を推測し(見たいチャンネルはNHK)、ソファーに座っただけでテレビの電源が自動でオンになりNHKが映る機能。これらはターゲティング技術、パーソナライズ技術の究極系です。まさにSFに出てくる未来世界のようですね。

 では、仮にこれらの機能を実現するためにはどのようなシステムが必要なのでしょうか。

 自動反応するテレビの例を考えると、テレビだけが高度な学習システムを備えて賢くなれば実現できるのかといえば、必ずしもそうではなさそうです。テレビに内蔵カメラを付けてソファーに座った人物を画像認識し、過去の視聴履歴から好みを割り出しNHKを表示するといったことは実現できそうですが、誤作動が多そうです。ただ休むだけでソファーに座ったのにテレビの電源がオンになったら迷惑ですし、いつもは民放を見ているけど、今日はたまたまNHK紅白歌合戦を見たいだけという1年に1回レベルのレアパターンでは、いつもの民放視聴履歴をテレビが反映して、NHKではなく民放を最優先表示してしまいそうです。

 これらの予測ミスを防ぐためには「人」を多角的に捉える必要があります。つまり、テレビだけでは「とある個人」の欲求・行動パターンを学習するだけの機会が極めて少なく単一的なのです。テレビ単体でテレビの学習システムが蓄積できる情報は、せいぜい顔認識情報や過去の視聴履歴程度です。

 仮に、「とある個人」がインターネットの検索サイトで『紅白歌合戦 2020 出演順』という単語で検索をしていたとします。その情報をテレビの学習システムが入手できたら予測精度は大幅に上昇しそうです。また、過去にコンビニ「ローソン」の電子端末ロッピーで、とあるバンドのコンサートチケットを購入した履歴があり、その購入履歴をテレビの学習システムが入手できたらどうでしょうか。また、そのバンドが紅白歌合戦に21時30分頃出演することもテレビが把握していたとして、対象の人物がソファーに21時20分頃着席したとしたら…。これらの情報を複合的に結びつけることにより、1年に1回レベルのレアパターンであっても、その人物は紅白歌合戦を見る為にソファーに着席したと、高い精度で判断できそうです。

 上記の機能を提供するためには高度なデータマイニング技術や、それらを提供するための超巨大なクラウドコンピューティング(設備)が必要となることは言うまでもなく、プライバシーの問題も残されており、この先10年で実現されるかといえば非常に難しいでしょう。しかし、GoogleやAppleが目指している未来はまさにこれであると思われ、NFCを使ったGoogleウォレットなどの決済システムにも手を出し始めていることを考えれば、着実にロードマップに従って歩みを進めていると管理人は推測しています。

 ここまでをまとめると、重要なことはとても簡潔です。それは、電子機器やサービスがインターネットを通じて連携し合う、このことが「真のスマート化」なのです。1つの機器(上記例ではテレビ)が入手できる個人の趣味嗜好には限りがありますが、様々な機器に備えられたセンサーからの情報や、サービスの利用履歴を共有し合うことで仮想的に「人を見続ける(監視する)」ことが可能になり、予測精度が大幅に上昇します。

 これは現実世界でも同じです。新しい友達を深く知るには、長く時間を共有して会話や行動からクセや好みを知るように、機械(サービス)が人を知るには、やはり人を見続ける必要があります。私たち人間が友達の気持ちを推測する時、過去の行動やクセに関する記憶データなども判断材料にして気持ちを推測します。友達の頭に手を当てて脳波を読み取るエスパーな人は存在しません。これらのことからも、人を推測する技術は過去データの蓄積と解析にありそうだ、ということが推測できます。

●家庭内でのハブ的機器の必要性

 家庭内用途において、様々な機器に備えられたセンサーからの情報を集約したり、クラウド上にあるデータにアクセスしたりするにはゲートウェイが必要となります。この役目に最も適したものがテレビであると、AppleやGoogleは考えているのではないかと思います。スマートテレビが将来的に大変なものになると見る理由はここにあります。

 しかし、なぜハブの役目はテレビが担うのでしょうか?
 それにはいくつかの理由がありますので箇条書きでまとめます。

 

  • 非常に多くの家庭でテレビはコンセントに常に接続されている
  • ディスプレイ機能(画面)が例外なく付いている
  • スピーカーが付いているのでアラート音などを出すことが出来る
  • 機器の物理サイズがある程度大きい為、付加機能を提供するモジュールを加えやすい
    (超薄型テレビであっても、チューナー部はある程度の大きさを有している)
  • ネットワークに繋げやすい
  • 携帯機器ではなく据え置き機器であるため常に自宅内に存在し、自宅内機器の制御に向いている
  • 家庭用PCが近い将来タブレットなどに置き換わる可能性があるため、PCは不適当
  • テレビコンテンツが衰退する可能性があるが、据え置き機としては比較的安定している

 

 このように考えると、家庭内でのハブ的存在としてはテレビが最も適しているように思えます。しかし、テレビにはデメリットも存在します。それは、買換えが頻繁に起こらないということです。例えば、今年中に発売される第二世代GoogleTVが、仮に10年後に真のスマート化に対応しようとした場合、全く対応できないことが予想されます。このことに対して、現行AppleTVのような小型外部機器で対応するのか、それとも別の手段で対応するのか、専用の拡張規格が用意するのか、実際のところは分かりません。

 いずれにせよ、GoogleTVやiTVがテレビを通じて提供したいのは真のスマート機能であり、現在はスマートテレビ自体のジャンルを確立する時期であると考えています。そして、真のスマート化の黎明期に相当する機能(例えば、スマホのGPSと連動して外出先から自宅空調がオンになる等)が搭載されたとき、スマートテレビの本当の普及が始まるのではないかと思います。このことが理由で、現在のGoogleTVやiTVに全く魅力がないと見えても全く油断できないと考えているのです。黎明期に突入するまで、恐らく5年はかからないとおもいます。すべてはわずかな1歩と経験の積み重ねから始まります。Appleが何度失敗してもAppleTVを諦めなかったように、AppleとGoogleはこれからも何度転んでも諦めることはなさそうです。

 

 次回は、具体的なホームネットワーク構想やアメリカ合衆国が進めるスマートグリッドと絡めた「白物家電戦略」については詳しくご紹介します。AppleはなぜSiriを重要視するのかなどにも触れる予定です。

●付録:ビッグデータの可能性

 人を推測する技術は人から読み取るのではなく、過去の蓄積情報から推測するものであると述べましたが、このことに関してTechCrunchにタイムリーな記事が掲載されましたので付録として紹介させて頂きます。なお、関連するところを太字にしています。

■ 人工知能は今コンピューティング〜ネットワーキング全般の中でどうなっているか

編集者注記: このゲスト記事は、シリコンバレーの伝説的投資家Vinod KhoslaKhosla Venturesのファウンダ)からの、三部から成る寄稿の第一部だ。

(中略)

昨年、Googleの研究部長Peter Norvigが、New York Postにこんな記事を書いていた:

今から40年前の12月に、ニクソン大統領は癌に対する宣戦布告を発し、この疾病の撲滅のために”国のすべての力 を総動員する”と誓った。50年前にはケネディ大統領が宇宙開発競争を宣言し、その年代(1960年代)の終わりまでには人間を安全に月に着陸させると約 束した。そして54年前には、人工知能のパイオニアHerbert Simonが、“現在の世界には思考する機械がある”と宣言し、10年後にはコンピュータがチェスの世界チャンピオンになる、と予言した。

月への上陸には成功したが、癌と人工知能における取り組みは、その大望を達成していない。しかし、ある程度の進歩は実現した。癌では:

単一の“治療法”を望む者たちは幻滅した。癌は単一の問題ではなく、複数の問題が互いに絡み合っている症状だからだ。しかしそれら複数の問題に対しても、少しずつ研究の進歩は続いている。

人工知能も、月上陸より癌の研究に近い性質を持つことが明らかになった。映画の中で想像されたHAL 9000やC-3PO、Commander Dataといったアンドロイドは実在しないが、A.I.の技術は、今ではわれわれの生活の多くの局面に関与している。


たとえばA.I.は、ほとんどの人間よりも強いチェスコンピュータを実現し、Jeopardyでは人間名人を負かした。そのほかA.I.は、広告のターゲティングを支援し、Microsoft Kinectの人間の動きの認識能力を支え、もっとすごいのでは、Googleの自己運転自動車がサンフランシスコからロサンゼルスまでドライブするのを助けた。このようなインテリジェントなシステムは、ウォール街においては投資などの判断を伴う取引を行い(そのおかげで元MITの数学者が今では投資ファンドを経営して、このような判断を要する分野で最高の業績を上げ、ウォール街のヒーローになっている)、またもちろんそれは、Siriの会話インタフェイスとして人の求めに…その多くに…応じている(その第一世代のIQは三歳の子ども並みと言えるが、世代を重ねるごとにより賢くなっている)。Jeopardyのコンピュータチャンピオンや自己運転カー、Siriのような会話インタフェイスなどは、いずれも、数年前にはきわめて実現が困難と考えられていた技術だ。

Commander Dataの時代に考えられていた人工知能は、コンピュータの論理回路の超高速な馬鹿力に頼る、というものだったが、しかし成功したシステムはロジックのルールよりもむしろ、実例を利用した。過去の大量の問題とその(論理的というより確率的な)解をコンピュータに与え、それらの実例から、目の前の問題の解を”見つけ出させる”のだ。とくに、人工知能の最近の主な進歩は。そのようにして、不確かな条件下での推論を行わせる分野で顕著だ。

(後略)

http://jp.techcrunch.com/archives/20120109khosla-artificial-intelligence/

 専門的なものが多いので、関連する部分を噛み砕いて説明します。

 引用したTechCrunchの記事では、ここ最近の人工知能(推測・判断能力)が目まぐるしく進化した理由は、コンピュータの力だけに頼るのではなく、過去の膨大な蓄積データを解析することによって傾向を導きだし、そこから推測を行う方法を採用したことにあるとしています。

 膨大なデータは「ビッグデータ」と呼ばれており、より良い答えの導き出し方(取り出し方)を見つければ宝の山となり、見つからなければただのゴミデータになります。

 ビッグデータの価値を左右する要素は、「データを効率よく集める方法の確立」と「正しいデータを効率的に取り出す方法の確立」にあると言えます。なお、真のスマート化では、インターネットによる機器やサービス間の連携が「データを効率よく集める方法の確立」を構成するものです。

 未来を知るには過去を知る必要がある。何かの格言に出てきそうですが、コンピュータの世界でも同じことが起きているとは実に興味深いことです。

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