このニュースをリアルタイムに追えなかったので、後発記事という形でちょっと補足したいと思います。(KDDIがちょっとかわいそうだったので)

 今回発表されたのは、17日よりイタリアで開催される「ミラノサローネ 2012」で展示されるスマートフォンのコンセプトモデルです。以下、KDDIのプレスリリースより。

●コンセプト
エレガンスとテクノロジーの融合。アナログとデジタルの融合。 ハイメ・アジョンは相反する二つの要素を融合し、デザインに落とし込みました。テクノロジーの進化に伴いスマートフォンはPC、TV、ミュージックプレーヤー、スケジュール帳、その他たくさんの機能を持つアイテムになりました。忙しい毎日に便利な「道具」として消費するのではなく、美しいフォルムの時計の竜頭を巻き、旧式の機械のようなボタンを押す。そんな一瞬が忙しい毎日を少しだけ贅沢なものに変えていきます。

●デザイン
今回のコラボレーションで象徴的なものが、アナログ時計付きのデザインです。また、サイドには時計の竜頭を施しました。細部までこだわり、時計は手巻き式で竜頭を巻く仕様です。デザイン性と実用性を併せ持つ大きなホールはストラップホールとして利用できます。サイドには本体色に合わせたラバー素材を使用し、滑りにくくするなど、実用性に配慮しました。

 一瞬みると、「なんじゃこりゃ!?」といった感じでボロクソに言われるのも納得ではあります。こういう素直な意見というのも大切なものなので一概にポイッと切り捨てるのはよくありません。しかしながら、ちょっとだけ知って頂きたいことがありますので、お時間がある方はこの記事を読み進めて頂けると幸いです。

ミラノサローネはデザインのオリンピック

 個人的な話ではありますが、管理人は家具(と木材)・照明、などが大・大・大好きでして、「ミラノサローネ」と聞くと一度は足を運びたいと思ってしまいます。というのも、このミラノサローネという展示会は国際的な家具の見本市でして、イタリアという場所柄と歴史が反映された歴史のある展示会なのです。

 日本の一般向け市場で身近な例を紹介すると、パナソニック電工(現・パナソニック)の取り組みなどが有名だと思います。

 パナソニック電工の「MODIFY」は、デザイナーの深澤直人氏と共同で開発した照明です。例えば上の画像にある「SPHERE」は球体を全体を使った照明なのですが、デザイナーが持つ「光る丸い球を実現したい」という想像力とは裏腹に製造することは非常に困難でもあります。

 球体の製造ムラで生じる不均等な影の映りや、内蔵電球・関連部材そのものの影を消すためにはかなり苦労されたと聞いています。しかし、それを超えてこそ「電気×インテリア」というマッチングが生み出す現代のインテリアデザインがあるわけです。困難を超えて実現に漕ぎ着けた上で一流の展示会で展示できることは、デザイナーにとっても開発に関わった者にとっても喜びの一つとなり得ます。

 パナソニック電工は一般向けとはいえ、基本は住宅設備関係者向けの商売ですのでインテリアコーディネーターや建築家へのアプローチを常に考えています。従って「ミラノサローネに出品することは大々的に宣伝すべき価値がある」ということを十分に理解されていると思われます。と、同時に「ミラノサローネ」という単語を使うだけで対象とするユーザー層ほぼ全員に意味も背景も伝わるという読みもあるわけです。

異業種に切り込むときの難しさ

  KDDIはINFOBARなどを送り出した「iida」というデザインプロジェクトを有していますが、基本は通信会社です。デザインに深く結びつく分野というよりは通信の安全性・信頼性などを重視したアピールに長けています。そして、そんな企業のプレスリリースや新情報を待ち望むユーザーもそういった側面にアンテナを張り巡らすユーザーが多いと思われます。つまり、ミラノサローネに対する認識の低さを予め踏まえておく必要があるのです。

 (ここからは深読みというか邪推に近いものですのでご注意ください。)

 iidaに携わる方ほぼ全員がミラノサローネの意味と背景を十分に理解されていると思います。その一方で、今回のスマートフォンコンセプトモデルに関するプレスリリースは別紙があるものの、非常にあっさりしたものでした。専用ページまで作り、トップページで大々的に宣伝し、ミラノサローネの展示物を汐留に移設してまで日本人に”魅せていた”パナソニック電工と比べると扱いがとても小さいです。

 あくまでも推測ではありますが、KDDIの広報担当者とミラノサローネが持つ意味の大きさを十分に共有できていなかったのではないかと思われます。確かに、別紙では細かい説明とミラノサローネ自体の説明がありましたが、ある程度お金をかけてデザイナーと共同で取り組んだプロジェクトならば同日中に専用サイトの立ち上げ位はあってもよかったと思います。

 また、普段スマートフォンに興味のある層とインテリアコーディネーター・建築家とを比較すると、ミラノサローネの認識率が極端に低いものと思われます。だからこそ、ミラノサローネの意味を頑張って伝えなくてはならないですし、KDDIのデザインに対する姿勢を広く伝えるチャンスでもあったわけです。セオリーに従ってプレスリリースを簡潔にするのであれば、なおさら専用サイトで踏み込む必要があったように思えます。

 プレスリリースをもとに記事を書く記者もミラノサローネの意味を全員が理解してるとは限りませんので、今回の件に触れたいずれの記事もさらりと触れられる程度で踏み込んだ説明がなされないまま公開されていました。いや、本来はそれが正しいプレスリリース記事の書き方なのですが、良くも悪くも、それを見た読者はプレスリリースよりもさらに少ない情報で構成された記事を読んで、端末に対する印象をSNSで拡散します。

頑張って作ったのにもったいない!

  このサイトでは常に言ってるので「またか」と思われるかもしれませんが、「見せ方」と「本当の意味での消費者視点」というのは非常に大切であると今回の件でも思いました。せっかく頑張って作っても宣伝方法1つ間違うだけでブランドや会社の姿勢までも「ダメだな」と評されてしまう時代です。

 車分野であれば「コンセプトカーは100%商品化されない」という常識が通用しますが、スマートフォンとなるとそうとは限りません。事実、これがそのまま出てくると思われてる方もいらっしゃいました。

 コンセプトモデルがそのまま製品化されることはほとんどありません。しかし、コンセプトモデルを作る行為やデザイン見本市で展示することに意義はあります。

 これからも素晴らしいデザインへの取り組みを続けるために、「見せ方」について非デザイン職の方も学ばなくてはならない時が来ているのかもしません。

[KDDI公式]