生き残れるか!?大きく変わるWindows Phone 8プラットフォーム

米国時間20日に始まった「Windows Phone Summit」では、次期スマートフォン向けOS「Windows Phone 8」の発表が行われた。この発表、ハッキリいうと想定外なことばかりだ。Windows Phone 7ではガッカリな印象があったが、今回のマイクロソフトは本気かもしれない。

iPhone、Androidに比べると大幅に遅れを取ったWindows Phone陣営は、起死回生策ともいえる「PCとの共通化」を真剣に繰り出してきた。恐らく、巻き返すチャンスは今回が最後だ。そして、その最後のチャンスに用意すべき武器をしっかりと用意できた印象を受ける。

まずは発表内容が気になる方も多いと思う。発表されたものを羅列してみよう。なお、「Windows Phone 8」は「WP8」と表記する。

発表された新要素など

  • リリースは今秋、SDKは今夏
  • 既存のWP7.5端末はWP8にはアップデートされず、WP7.8になる
  • デュアルコアをサポート
    • 秋の端末はデュアルコアが中心
  • 最大64コアまでをサポート
  • WVGA(800×480)、WXGA(1280×768)、720p(1280×720)をサポート
  • 既存のWP7.5向けアプリは変更無しにWP8の高解像度環境で実行可能
  • 外部メモリにmicroSDをサポート
    • アプリのインストールも可能
  • Windows 8とスマホ向けWP8の統合
    • NTカーネルを共通で使用
    • 外部接続機器、ドライバの共通化
  • Internet Explorer 10を搭載
    • レンダリングエンジンはPC版と同じものを搭載
    • SunSpiderベンチではGalaxy S3やiPhone 4S(iOS6 beta)よりも速い
    • フィッシング詐欺対策
    • マルウェア対策
  • Windows8と共通のDirect X、グラフィックドライバを搭載
  • わずかな変更でPC向けゲームを移植可能
  • iOSやAndroid向けゲームも簡単に移植可能
  • NFCのサポート
  • NFC決済のサポート
    • クレジットカード、デビットカード対応
    • 会員証(ポイントカードなども)対応
  • ウォレットアプリ(決済アプリ)を初めから搭載
  • アプリ内決済に対応
  • 既に一部キャリアが採用してる「セキュアSIM」があればマイクロソフトを通さずに決済可能
  • Nokiaマップ技術を新しい地図に採用
  • オフラインマップのサポート
  • アプリ開発者によるマップ制御
  • ナビゲーション機能の追加
  • BitLockerによる暗号化のサポート
  • セキュアブートのサポート
  • LOBアプリをサポート
  • 端末の管理機能をサポート
    • PCを管理するためのツールとWP8端末を管理するツールが共通
  • Officeアプリをサポート
  • 起動画面の変更
  • WP7.5までにあったスタート画面の右にある画面を廃止
  • タイルのサイズ拡大・縮小をサポート
  • SQLiteエンジン搭載
  • Skypeとの完全統合、電話のように扱える
  • マルチタスクのサポート
  • Nokia、Huawei、サムスン、HTCが端末パートナー
  • クアルコムのチップを採用
  • 180ヶ国50の言語をサポート

不満点をしっかり改善 堅実な進化

機能面をざっと見るならば、端末間で画面解像度がバラバラになることを避けるために設けられていた「解像度縛り」が緩和された。Android端末では当然のように存在する1280×720解像度の端末もWP8から解禁される。


via THE VERGE

要望が強かった外部メモリへの対応も大きい。これはコアユーザー向けというよりは、新興市場向け端末のための措置であるように思う。内蔵メモリを少なくすることで端末価格を安く抑えることが可能になるのだ。今後は新興市場におけるシェアが非常に重要になってくる。それに備える必要があるのだ。

旬のNFCにもしっかりと対応している。「Googleウォレット」のマイナス点をしっかり改善している点にも注目したい。ただし、NFC決済に関しては実店舗での対応状況が要であるので、先を行っている「Googleウォレット」に一日の長があるように思える。しかしながら、NFC決済はスタート地点から一歩踏み出した程度に過ぎない。iPhone5における対応なども含め、2013年から本格始動すると考えて良いだろう。


via THE VERGE

地図のアップデートによるナビ対応やオフラインマップなど、押さえるべきところはしっかりと押さえてきたようだ。

企業向けのサポートはさすがのマイクロソフト

企業向け要素としては、BitLockerによる暗号化対応に加え、端末の集中管理などを既存の環境のまま利用できる点は「さすがマイクロソフト」と唸ってしまう。サポートの強さは完璧と言ってよい程だ。

何よりも、既存の環境を利用できる点が大きい。社内PCを管理するように社用スマホを管理できる。IT管理者にとってこれほど楽なことはない。マーケットを通さない社内独自アプリの配信も可能であるとしており、メッセージングサービスにも対応する。

アップデートのタイミングからインストールアプリの監視、社外秘アプリの配信など、IT管理者が自由自在に制御できる。本当に素晴らしい。

なお、これがWindows Serverの次期プラットフォームでの対応になるのか、アップデート対応になるのかは明らかになっていない。

本気を出したマイクロソフト

さて、ここまで紹介してきたものは正直なところどうでもよい。言葉は悪いが本当にどうでもよい。そう思わせてしまうほどインパクトのある発表が行われたのが今回のイベントだった。

スマートフォンで遅れを取っているマイクロソフトは、ここから逆転するには自社の資産であるWindowsプラットフォームを活かすしかないと考えたようだ。PCと連携を図るだけでは足りないと考えたようで、究極的に「PCと共通化」してしまった。PCとスマホの垣根を可能な限り取り払ってしまったのである。

皆が「やればいいのに…でも現実的に難しいか」と思っていたことを “平気でやってのけた” ことが、WP8に未来を感じてしまう。


via THE VERGE

2007年にアップルがiPhoneを初披露した際に、iOSはMac OS Xベースであることが発表されて拍手喝采を浴びた。今回の発表はそれを上回る統合となる。

PC向けWindows 8で使用されているNTカーネルをそのままWP8にも載せてしまった上に、ソフトウェアを容易に移植可能 or コードを共用可能にしてしまった。つまり、Windows 8用に作られたソフトウェアがWP8環境でも動いてしまうのだ。その互換を実現させるために開発者が要する作業はほんの僅かであるとしている。

さらに、Direct Xを搭載してゲームの移植も容易にしてしまった。Direct Xを基軸に結ばれるということは、当然、ゲーム機「Xbox」とも繋がる話になってくる。Xboxプラットフォームは北米地域で特に強力であり、ゲームアプリ不足に悩むWP陣営には好機となる。発表会ではXboxの人気タイトルが続々と、WP8でリリースされる事が発表された。既に統合効果が表れはじめているのだ。

ソニーは携帯端末にPSPとPS Vitaで切り込んだ。アップルはiOSファミリーという非ゲーム機でゲームのシェアを食いつつある。それをマイクロソフトが黙って見ているわけもなく、Windows Phoneで切り込むことにしたようだ。

スマホ戦争の行方は分からなくなった

今回の発表が、新しい地図、NFC、スペックアップ程度に留まったならばWP8は残念な結果になっていたに違いない。管理人も眠い目をこすりながら、こんな長々とした記事を書く気も起きなかったはずだ。だが、Windows 8との統合が発表されて状況は一変した。マイクロソフトがあまりにも本気なのである。

最近は「iPhone」「iOS」と言ってる管理人がここまで興奮しているのだから、よほどの驚きがあったことが伝わるはずだ。

スマホ戦争の行方は完全に分からなくなった。

WPが対抗馬として残ることが濃厚になった一方で、今回の発表を受けて端末ベンダーとソフトウェアベンダーがどれだけWP陣営に合流するかが未知数であるという点が先を読めなくしている。

一つ気がかりなのは、現段階において「ノキア」「サムスン」「ファーウェイ」「HTC」のみがパートナーであるという点だ。ここに2・3社新たに加わっていれば楽観視できるのだが何とも言えないといったところだ。

ただし、ベンダーは今後増える可能性が高い。まず、今回の発表を受けて多くのソフトウェアベンダーがWP参入を決めるだろう。その上、サムスンのローエンド端末、ファーウェイ端末、Lumiaのローエンド端末の3種類が新興市場でシェアを拡大するだろう。そうなれば、広がる市場を目の前にして他ベンダーがWPに参入しない理由は少なくなる。

では、日本はどうかというと、非常に厳しいのではないかと思われる。というのも、日本のキャリアは既にAndroidというプラットフォームを基軸としてキャリア独自のコンテンツ配信プラットフォームを構築してしまっているからだ。

キャリアが土管屋になっていればWPに積極的にならない理由は無い。魅力的な機種を揃えて加入者を増やしたいからだ。ところが、日本の場合は土管屋どころか優秀なコンテンツ仲介人である。AndroidでうまくやれているのならばWPに積極的になる必要がないのだ。唯一可能性があるとすれば、法人需要に対応するNTTドコモかもしれない。

個人的には本当に先が読めなくなってしまった。イベントの興奮が特に先を見えなくしているのかもしれない。興奮した状態で書いた文章・考えには往々にして穴があるものだ。では「落ち着いてから書け」と言われそうだが、イベントの熱を伝えるという意味でもこの記事を投稿することにした。

スマホ界隈に広がる「なんだか最近は既定路線だなぁ…」的な閉塞感を、WP8は見事に打ち破ってくれたように思う。切磋琢磨する3つのプラットフォーム、これからが非常に楽しみだ。

ソーシャルシェア

コメントソフトウェア改修作業の為、一時的に古い記事のコメント閲覧・投稿を休止しています。