レビュー:HTC J Butterfly ハードウェア編

今回のレビューでは、KDDIから発売されたHTC製端末「HTC J Butterfly HTL21」を2回に分けてお届けする。5インチという比較的大きい画面でフルHD表示に対応したこの端末は、現時点では異色ともいえる「ファブレット(Phone+Tablet)」カテゴリに属するが、ハイエンドモデルにおける2013年の主流になるだろう。

そんなこともあり、多くの人にとって「5インチって使いやすいの?使い心地は?スペックは十分?フルHD液晶は綺麗?」と、様々な疑問があるかもしれない。そういった点も踏まえてこの端末をありのままに伝えていく。

大きく感じさせない秘訣は最薄5mm

購入したのはキーカラーのレッド。「レッド」「ホワイト」「ブラック」の3色展開であるが、ブラック色のみ背面にラバーのような加工がされており、レッド色とホワイト色はツルツルした光沢のあるプラスチックで出来ている。

手に持ってみると感じるのは「意外に大きくない」ということだ。それもそのはず。管理人のAndroidメイン端末はサムスンの「Galaxy S3」で、それと比較すると横幅は+0.4mmしか変わらない。したがって横幅での違和感は皆無だった。

エッジは5mm アーク形状になっている

次に感じたことは「薄い」ということ。これも数字が素直に表してくれており、一番厚い部分でも9.2mm。端末は中央部が盛り上がる形でエッジに向かって次第に薄くなっていく。左右両端の最薄部は約5mm。これが影響して薄いと感じるようだ。

『この端末は片手操作で持ちやすいだろうか?』と尋ねられれば、ホールド感は足りないというのが正直な感想だ。それを補ってくれるのが「ブラック色」にのみ施されたラバー加工であろう。店頭にあるダミー端末(冷モック)を触ってもその感覚はきっと伝わるはずだ。大きいので手から逃げるような感覚があるが、それを抑えてくれるのがラバー加工で生じる摩擦という算段である。

そんなラバー加工にもデメリットは存在する。引っかき傷や手脂などが目立つといったことだ。では『片手持ちのホールド感を高めるために、赤や白を諦めて黒を選ぶべき?』と聞かれたらNO(ノー)。個人差があるので必ず店頭で確かめて欲しいところではあるが、欲しい色を我慢するほどの差ではないと感じている。

ただし、電車内で立ちながら使うシーンやナビを使うために歩きながら持つシーンでは不安定さが否めない。というのも、HTC J Butterflyの横幅は4インチ台端末とほとんど変わらない一方で、縦長になっている。戻る・ホームの両キーに親指が届きやすいポジションで持つと重心の関係で端末が不安定になるのだ。わずかながら下寄りに重心を持ってくると安定感が増すのではないかと思う。

触って気持ち良い

前面ディスプレイにはラウンドガラスが採用されている。グラスに注いだ水が表面張力で滑らかに盛り上がるように、エッジが滑らかに仕上げられているのが特徴。エッジ部分に指が触れた時、このわずかな差が心地よさに変わる。これはどの端末でも言っているが、触り心地というのは極めて重要である。何しろ道具との相性に関わる物理的要素だからだ。

画面のエッジに余計な出っ張りがない

エッジを親指でこすりながら余計な話を思い返していた。「3次元CADで画面に向き合っても良い製品は生まれない。現実空間でクレイモデルを何度も作ってデザインすべき」という旨の話だ。この製品がそのような過程で生まれたかは定かではないが、やはり触り心地というのは道具にとって重要な要素なのである。だからガラスの処理一つにしても気を配る必要があるし、それがユーザーの満足度に直結する。意識はしないけれど使っていて気持ちが良いという事がとても大切なのだ。

電源ボタンの位置は賛否

背面に目を移すと鮮烈ながらも深みがあるメタリックの赤が飛び込んでくる。カラーリングがしっかりしてるから安っぽさは感じない。その一方で厚めのクリア塗装が施されているから指紋が目立つ。auのロゴが控えめであるが、なぜその位置に…という謎は残る。

赤外線ポートの横には丸いメッシュがあるが、これは通知用LED。前面と含めて2つ存在する。両方ともに7色のカラー変更に対応。点滅間隔は比較的速い。

画像左:3つの丸が充電ドック用接点
画像右:IPX5相当の防水に対応。microUSBにもカバーが存在

背面下部には3つの接点があり、別売される充電ドック用のものであるとのこと。この端末はIPX5相当の防水を備えているから充電にも使うmicroUSB端子にはカバーが存在する。今のところ充電ドックの発売時期は明らかにされていないが、個人的には防水カバーがとても邪魔に感じてしまうので早期の発売を願いたいところだ。

3つの接点の下には内蔵スピーカーが存在するが、内蔵スピーカーにBeatsAudioを適用することは不可能。これはWindows Phone 8X(HTC 8X)と違って残念な点だ。ただし最大音量でも音が割れるといったようなことはなく、低音も他の機種と比較すると大分よく出ている。ダイナミックレンジが強調されるのは仕方ないところではあるが、音質的にはiPhone 5が上回るように感じた。

側面にはメッシュ加工のようなものが施されているが特に意味はなく意匠として存在している。電源ボタンは珍しく上部中央に配置され、右側面には音量ボタンがある。いずれも金属を模したプラスチック素材だ。

左からSIMスロット/電源ボタン/イヤホンジャック

電源ボタンの位置については賛否両論あるが、確かに迷う。いまだに無意識で音量ボタンを押した後に画面が点かなくて間違いに気づくほど。端末が縦に長いから上部中央というのは押しにくい。片手持ちした際に人差し指で届かないわけではないが、操作のし難さを10段階で示した時に7~8に相当すると感じた。

まさにButterfly

最後に液晶ディスプレイの話。正直にいうと、画面を点けて「これはすごい」というインパクトは伝わって来なかった。ピクセル密度が高いという点で確かに文字は滑らかで綺麗だ。液晶の品質も申し分なく、色温度は日本人好みだし、発色・諧調も極めて素晴らしい。しかし、iPhone時代の非Retina→Retinaのようなパッと見の驚きは感じられない。

とはいえ「フルHDはやはりオーバースペックだったか…」と思ったのは最初の10分だけ。一通り設定を終えてTwitterのアプリを使い始めた頃に異変に気付く。フォローしている人のアイコンが奇妙に思えるほど綺麗なのだ。そこから様々なことに気付きはじめる。

恐らくホットモックを10分以上触り続ける人はそう多くはなく、使い慣れたアプリを弄れる機会もないからこの差に気付くことができないかもしれない。言ってしまえば、使い込まないと分からない程度に訴求力の弱いアピールポイントである。しかし、使えば使う程綺麗と気付くのだ。

ノイズのように見えるものはメタリック調の粒子が再現されたもの

ふと、標準壁紙をよく見るとノイズのような粒子が目立つ。液晶自体に粒状ノイズが乗る不良品か…とも一瞬思ったのだが、よく見てみるとそれはノイズではなく自動車のメタリックカラーなどでよく見られるあの粒子そのものが的確に表現されているのだ。

ここでようやく440ppiの威力を認識し、第3世代iPadのレビューで使用したテスト用画像を開いてみる。すると極めて良い発色かつ自然な諧調で青空が表現され、花びらのディテールをしっかり保った桜の花が咲いている。日月潭の画像では金物飾りの表面にある凹凸が潰れずに表現されている。ここまで凄いのか…というのが正直な感想だ。

文字をMAXまで拡大しても綺麗な輪部

ブラウザを起動してみると文字は縮小状態でも滑らかで、文字が潰れにくいので小さな文字でも可読性が高い。どこまで拡大しても輪部は滑らかで印刷物を見ているかのような感じになる。

しかし、この凄さについて『必要十分を超えたオーバースペックであるか?』と尋ねられたら、多くの人にとってはその通りであると言っても過言ではない。文字は極めて滑らかであるし画像も精細さが段違いであるが、一定値を超えた高み的なスペックである。この記事でいくら凄い凄いと言っても、伝わらない人には絶対に伝わらないだろう(その人が鈍いという意味ではなく)。


細かい文字の視認性という点で440ppiは明らかな効果がある

では、『人間の目で違いが分からないはずだから、無意味か?』と尋ねられたら絶対に違うと断言できる。45cm離しても300ppi台の製品とは違いが分かるし、圧倒的にきれいだ。なによりもブラウザなどで全体表示した際に小さな文字の視認性が格段に違う。

ここでHTC J ButterflyのTVCMをふと思い出してみると、一言も「フルHD」といった表現が出てきていない。そのような文字すら存在していないのだ。鮮やかな風船の下で乃木坂46がHTC Jの時と同じように連写しているだけである。管理人を含む “ガジェオタ” がフルHDに興奮している一方で、どうやらそれらの要素が大勢に通じにくいことを売り手側は完全に理解しているようだ。

HTC J ButterflyがHTC Jと絶対的に違う点はそこにある。つまり、HTCというメーカーを昔から好いていたユーザには「フルHD・高スペック」という側面を見せつつ、「HTC J」で確信した新たな販路・売り方を活かした側面も持ち合わせている。前機種「HTC J」は旧来のHTCファンには必ずしも受け入れられたとはいえなかった。そういった声を汲み取りつつ、前回での成功体験も活かす。まさにガジェオタと “一般層” の両方に訴求する二面性のある端末。それがHTC J Butterflyなのではないだろうか。

そう考えると、フルHDが “売りポイント” になるか否かという論争はこの端末では不毛に思えてしまう。なぜなら、フルHDが売りポイントになるユーザーには一方の側面を見せ、売りポイントにならないユーザーにはもう一方の側面を見せるからだ。名前の由来と関係ないと思われるが、まさに太陽の光を浴びて色が変わる蝶の羽のような感じだ。

ディスプレイをめぐる話はあくまでも推測にすぎないけれど、一時期は不調が伝えられたHTCもWindows Phone 8端末の投入やauとのコラボレーションをきっかけに一皮むけたように思えてならない。今後のHTC製端末がさらに楽しみになってきた。まさにそう思える端末である。

次回は、スペックと動作、SenseUI、消費電力、GPS感度、カメラ、ワンセグなども含めてソフトウェアと絡んだ部分をお届けする。12月17日(月曜)に掲載予定。

ソーシャルシェア

このニュースでディスカッション
  • コメントを投稿する際には「コメントガイドライン」を必ずご覧ください
  • コメントを投稿した際には、コメント機能利用規約(ガイドライン)に同意したものとみなされます
  • 主要ニュースサイトなどの「許可サイト」以外のURLを含む投稿はコメントが保留されます