スイス連邦材料試験研究所(Empa)、フレキシブルCIGS太陽電池で世界最高の変換効率を達成

スイス連邦材料試験研究所(Empa)は18日、フレキシブルタイプのCIGC薄膜太陽電池においてセル変換効率20.4%を達成したと発表しました。

この結果は、2011年5月に同チームが記録した従来最高値18.7%を1.7ポイント上回り、同タイプの太陽電池では世界最高記録となります。なお、変換効率の測定評価はドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(ISE)が行ったとのことです。

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太陽電池の原理

記事の詳細な内容について触れる前に、まず太陽電池の発電の仕組みについてごく簡単に説明をさせて頂きます。

太陽光電池に光が当たると、光が内部に含まれる電子と衝突します。この時、光の持つエネルギーの一部が電子に吸収され、電子はそれまでの状態よりも多くのエネルギーを持つようになります。この光からエネルギーをもらって高エネルギー状態になった電子を半導体の仕組みを利用して取り出すことで電流が流れるようになります。

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(注釈: 図は産業総合技術研究所のウェブサイトより引用)

詳しく説明しようとすると、長くなる上に専門的な用語(pn接合、内部電界、バンドギャップといった単語を聞かれたことがありますでしょうか?)を使わざるを得ないため割愛しますが、より詳しく知りたい方はこちらのサイトが参考になります。

ここでは、「太陽光電池に光が当たる→光のエネルギーが電子に伝わり、電子がエネルギーを多く持つようになる→半導体の仕組みを用いて電子を取り出す→電気が流れる」くらいのイメージで問題ありません。

太陽電池の方式

一口に太陽電池といっても様々な方式が開発・実用化されています。 

分類方法は様々ありますが、大抵の場合は素材のかたまり(バルク)使用しているのか薄い膜状にしたものを使用しているのかでまず大別され、さらに、使用されている材料によって以下の図のように分類されます。

今回、Empaが発表した太陽電池は赤い四角で囲った「化合物系」の中の”CIS/CIGS系太陽電池”に分類されます。一方、現在市場に出回っている太陽電池のうち8割近くを占めているのが青い四角で囲った「多結晶シリコン太陽電池」になります。

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(注釈: http://monoist.atmarkit.co.jp/club/print/print.php?url=/feledev/articles/eventrepo/19/thinfilm_a.htmlより引用)

変換効率

もう一つ、太陽電池の性能に関する説明をする上で欠かせない「変換効率」という言葉があります。

これは、照射された太陽光のエネルギーのうち何%を電力に変換できているかという値を指します。この値は太陽電池の方式によって異なります。少々データが古いですが以下に主な方式の変換効率を示します。

図1

 

(注釈: http://eetimes.jp/ee/articles/1010/17/news002.htmlより引用)

後ほど改めて触れますが、図にあるように今回発表されたCIGS系太陽電池は現在主流となっている結晶Si型の太陽電池に対してわずかに及んでいませんでした。

ちなみに、変換効率の測定は実験室内で太陽光に見立てた光を照射し、発生する電流・電圧を解析することで行うのですが、詳細については話がだいぶ複雑になるため今回は割愛致します。興味のある方は少々専門的ですが以下の産総研のサイトが参考になるかと思います。

「参考: 太陽電池の原理-変換効率とは

※太陽電池の性能を評価する指標として、変換効率ではなく単位面積当たり出力や発電コストを用いるべきとの意見もありますが、今回ご紹介しているのは試作段階のもので、まだそれらを算出できるほど技術が成熟しきっていないため、今回はあえて触れません。機会がありましたら、別途説明をさせて頂きたいと思います。

また、蛇足ですが、昨年12月にシャープから「化合物3接合型」というタイプの太陽電池でセル変換効率37.7%を達成したというプレスリリースが出ています。太陽電池全体として見た時、研究レベルではこれが現時点での世界最高値となっています。

CIGS太陽電池&今回の発表について

今回取り上げたCIGS太陽電池の”CIGS”とは、使用されている銅(Copper)、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)の4元素のイニシャルをとって命名されたものです。このCIGSタイプの太陽電池は、その構造から以下のようなメリットがあります。

  • 変換効率が高い
  • 数µm以下の超薄膜でも光を十分吸収できる→
  • 温度上昇に強い→熱帯地域などの過酷な環境下でも展開しやすい
  • 経年劣化が少なく長期信頼性に優れている
  • 黒一色の落ち着いた色彩である→商用展開しやすい

しかし、デメリットもありました。それは先にも少し触れましたが、市場シェアの8割以上を占めていると言われるシリコン系太陽電池ほど変換効率が高くなかったことです。

比較的成膜のしやすいガラス基板上に形成したタイプのCIGS太陽電池では、2011年にドイツの太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)のセルが変換効率20.3%という、同タイプの世界最高値を記録してようやく研究レベルではシリコン系と肩を並べるほどになりました。しかし、曲げることの出来ない固体基板の太陽電池であったため、応用面で少々難がありました。

今回Empaが発表したセルでは、変換効率でZSWのそれを上回っていることに加えて基材に柔軟性のあるフィルムを使用していることで、より幅広い用途への展開が期待されます。言い換えると、高性能化と商用性の向上という2点を同時に実現する快挙を成し遂げたことになります。

Empaによると、今後は開発パートナーであるスイスのFlisom社 と協力して、ロール・ツー・ロール方式による生産コストの低減及び大面積製造技術の確立をめざすとのことです。

薄膜状の軽量・フレキシブルな太陽電池モジュールは、その特徴から、屋根や建物外面への設置の他にも自動車や携帯機器への搭載、家電製品への適用など非常に幅広い用途が期待されており、今後の実用化が期待されます。

こぼれ話

このCIGSタイプの太陽電池、日本では甲子園球場の屋根に取り付けられています。設置されたのが2009年なので今のものほど変換効率は高くありませんし、採用されているのは固体基板タイプのものですが、こういった新しい技術が身近なところから徐々に広がってきていると思うとワクワクしますね。

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(注釈: http://www.honda.co.jp/news/2009/c091001.htmlより引用)

PS. 実は太陽電池は専門外のため、表現が微妙になっている部分があるかもしれません。不明な点がありましたら、コメント欄に残して頂ければ分かる範囲で極力回答させて頂きます。

[Empa via SJNニュース 再生可能エネルギー最新情報]

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