家電量販店に見る、テレビの今 ―レポート

2012年、日本国内のテレビ市場は販売台数では59.1%減、金額にして63.5%減という厳しい数字を叩きつけられました。さらに世界に目を向けると、韓国メーカーの台頭によって国内メーカーはシェアを一気に落としてしまいました。かつては安物の印象の強かったLGやサムスンも品質を高め、いまや世界シェアの1・2位を取るに至っています。

あまりにも元気のないテレビ市場ですが、家電量販店は今どんな様子なのでしょうか。近所の大手量販店のテレビコーナーの様子を探ってみたいと思います。

今回は先月22日にヨドバシカメラ マルチメディア京都店とビックカメラ JR京都駅店にお邪魔しました。店内の様子はその当時のものであり、現在の状況を現しているとは限らないのでご注意ください。

ヨドバシカメラ マルチメディア京都店の様子

この店舗のテレビコーナーは、2Fの東側(駅に近い側)エスカレーターの周辺にあります。エスカレーターは南北両方向から出入りすることができるのですが、エスカレーター出入口は最初にコーナーに入るときに目に入る、言わばテレビコーナーの「顔」。この店舗の一押しが並んでいるのです。

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エスカレーターを降りた正面の売り場風景。おすすめ「鉄板」テレビが並ぶ。 
※撮影等許可済み 以下同様

まずは、レジに近い側。ここは32〜40型の売れ筋が置いてありました。両端がLG製、中央二つがシャープ製です。一番左は中上位モデルのようですが、残り3つは32型が4万円前後、40型が6万円と、一昔前では考えられないほど低価格です。これを一概に売れていないから価格勝負に出たと言うのは尚早で、店員さんに聞くと売れ筋は生産も増えるので低コスト化が実現するのだそうです。

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もう一本のエスカレーターを降りた正面の売り場。LGの大型特設コーナーがあった。
パネルには「ヨドバシカメラがオススメする」の文字が。
LGから派遣されたと思われる販売員さんが定期的に見回りに来ている。

そして反対側の正面。レジから遠いこのコーナーには、LG製大型テレビの特設コーナーが待ち構えていました。Wiiリモコンに似た新タイプのリモコンやたくさんの3Dメガネが置いてあり、新機能を体験できるようになっていました。実際にメガネをかけてみる人も多く、宣伝効果は高いようです。

さてコーナー全体に目を向けてみますと、このようなメーカーの配置となっていました。

ヨドバシカメラ

ヨドバシカメラ マルチメディア京都のテレビコーナー全体図。

印象的だったのは、LG以外のメーカーもミドルクラス以上は3D再生に対応しているのにもかかわらず、どのメーカーも全くアピールしていなかったところです。映像を体験できるメガネもおいてありませんでした。店員さんにこのことを聞いたところ、いまや3Dに興味を示す人はほとんどいないためだそうです。

国内の多くのメーカーはアクティブシャッター方式(右目用と左目用の映像を交互に切り替え、それに同期してメガネが片目の視界を遮る方式)を採用しています。高度な技術を必要とするこの方式は、明るく高解像度な映像を実現するもののメガネが別売で数千円かかり、家族で見るには追加で数万円かけなければいけないという大きな弱点があります。

対してLGは偏光フィルター方式(光の波の振動方向によって映像を変え、それを特殊なフィルターを使って片方の映像を遮る方式…映画館と同じ方式)を採用しており、安価で軽量なメガネを売りにしています。その価格競争力の違いが、双方の3Dに対するやる気に影響しているのかもしれません。

また、ソニーや東芝の4Kテレビ(ソニーのものはモックアップ)が置いてありましたが、あまり目立っていない印象でした。ちなみにお値段、東芝の55型が40万円、ソニーの84型が168万円です!(1月22日現在)

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東芝とソニーの4Kテレビ。東芝のテレビは実際に映像を流しているが、非常に美しい。

ここで、店員さんにおすすめのテレビを聞いてみました。

おすすめはというと、中型以下では先ほどのエスカレーター正面の2商品、メーカーはLG製とシャープ製。ポイントとしては安価かつ売れ筋であること、外部録画に対応していることが理由でした。

一方、大型テレビはLGと三菱を勧められました。理由は、LGのミドルクラスは他社のハイエンドと同等以上の性能や機能を持ちながら価格が抑えられているため、三菱は赤色の発色性能が高く、大型スピーカーを搭載しているためということでした。

この店員の勧めるメーカーはどれもエスカレーターやレジの周辺にコーナーを構えており、店のオススメが選ばれやすいようになっているものと思われます。

このように、ヨドバシカメラは全体的にLGを勧めているようです。LGはコストパフォーマンスに優れるだけでなく、品質ももはや国産メーカーと肩を並べています。たとえば、倍速(4倍速・8倍速)液晶の処理については東芝やパナソニックと並んで動きが最も自然に処理されていたと感じました。また、新リモコンによる直感的な操作性は他社にはない面白い特長です。メーカーと量販店のごり押しだと言ってしまえば簡単ですが、本当にそれで片づけられるのかと言ったら「No」でしょう。

ビックカメラ JR京都駅店の様子

続いて、ヨドバシカメラから300mほど離れたところにあるビックカメラに行ってみました。ここは2Fの奥の方に、比較的小さなスペースでテレビが集まっていました。

その配置はこのようになっています。

ビックカメラ

ビックカメラ JR京都駅店のテレビコーナー全体図。

エスカレーターの正面は酒売り場、通路の奥に改札口がある関係で日用品・薬コーナーと隣接するという不思議な位置ですが、こちらはヨドバシカメラとはまた違った配置をしています。

敷地の関係か、大型テレビはみな奥の方に追いやられてしまっていました。LGは同じようにレジの近くにあり、大々的に3Dを押し出していました。しかしこの店で違ったのはソニーとパナソニックも3Dメガネが置いてあったことです。個人的にはLGよりソニーの3Dの方が好みでした(パナソニックは映像が3Dではありませんでした…)。

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拡大しないと分からないかもしれないが、
LG(左)の紹介パネルには「ビックカメラ」の文字が。

この店にも東芝の4Kテレビはありましたが、柱の「裏側」に置いてあり、よく見える位置ではありませんでした。

4Kテレビの解像度は圧巻です。55型にもなるとフルHD程度では粗が目立って仕方ないのですが、4Kテレビは近くで見ても気になりませんでした。それなのにアピールされていないのはやはり対応コンテンツが全くと言っていいほど存在しないからでしょうか。

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左が4Kテレビ、右がフルHDのテレビ(それぞれ55型、60型)。
iPhoneで撮影したものをかなり拡大している。解像度よりも色に注目してほしい。
右の画像(特に屋根)はドットが大きいために色ムラが見えるが、左にはそのようなものは見られない。

 

ここでも店員さんにオススメを聞いたところ、特にメーカーは指定されませんでしたが、大型テレビでは55型より60型の方が良いと言われました。ちょっと高い商品を買わせようという魂胆だと思いきや、実際は逆でした。

60型と55型では同じ大きさのガラスパネルから1枚しか切り出しできないため、無駄のない60型の方がむしろ安価になると店員は強調していました。グレードの関係もあるかもしれませんが、確かに全体的に60型の方が安かったです。

一例では、パナソニックの55型(液晶)は30万円強、シャープの60型は15万円弱でした。このシャープ製品はよく売れているそうですが、この値段を付ければ当然かと思ってしまいます。

このクラスの大型テレビは数年前に40型前後の液晶テレビを買った人向けの買い替えを期待して売り込まれています。薄くなったため、部屋の角などに置く場合に従来よりも大きいサイズのものを置けるからです。

しかし、実際にはそれほどの需要があるとは思えません。そもそもテレビ自体、寿命の短い商品ではないからです。大型テレビの普及がほぼ飽和状態に達してしまった今、「できることが大して変わらないのに、わざわざ買い換えるのはもったいない」と思っている方は多いはずです。

新たにテレビを買わせたいのならば、これまでのテレビではできなかった「新しい使い方」をもっと「楽しそう」に見せる必要があります。

まとめ

ここまで、2つの量販店の様子を書いてきましたが、共通しているのはLGと量販店がタッグを組んでアピールしているというところです。どちらの店の写真にもLGと店舗の両方の名が入った看板を見つけることができます。LGからしてみれば日本メーカーに元気のない今がチャンスとみて投資しているのでしょう。

国内メーカーはこれに対抗すべく、何とかして新たな需要を掘り起こし顧客を奪い返したいものですが、新たな流行り言葉となってきた「スマートテレビ」についてもLGが一歩抜け出している印象は否めません。

新しいリモコンをWiiのパクリと言ってしまえばそれまでですが、直感的に操作できるリモコンは素直に「触っていて楽しい」と感じました。こういう感覚が購買意欲にプラスに働きます。国内メーカーはすでに一歩出遅れてしまったかもしれません。今ある中途半端な「なんちゃってスマートテレビ」ではユーザーからあきれられてしまいますが、大画面とインターネットを活用する、全く新しい楽しみ方がきっとあるはずです。

まだまだ伸びしろのある次世代テレビ分野で国内メーカーがいち早く頭角を現すことができれば、また数年で天下を取ることも不可能ではないと思います。

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