アップルとサムスンに忍び寄る、スマートフォンのコモディティ化による恐怖

『HTCだろうがNokiaだろうがMotorolaだろうが、どこの携帯メーカーだって製造原価なんて似たようなものだ。NVIDIAのプロセッサーにシャープのディスプレイは変わらないのだから』

フロリダ州マイアミに拠点を置く比較的マイナーな携帯電話メーカー、Blu Products社のCEOを務めるSamuel Ohev-Zion氏の言葉からは、過去にPC価格の急速な下落によって多くのメーカーが撤退に追い込まれたという、PC市場の事例を思い起こさずにはいられません。

 PC出荷台数

コモディティ化とは

コモディティ化(commoditization)とは、あるジャンルにおける製品が、さまざまな理由からメーカーやモデルごとによる製品の個性を出せず、品質・機能などが画一的になる事を言います。結果的にメーカー側は価格面でしか差異を出せなくなり、コモディティ化が進んだ製品群は価格が下落傾向となります。

メーカー側には「収益が上げにくくなる」「新規参入が増えて競争が激化する」といったデメリットが多い一方、消費者側からは「品質の良いものが安価で入手しやすくなる」というメリットも併せ持っています(コモディティ化が進む要因はこちらのWikipediaなどをご参照下さい)。

スマートフォンにおけるコモディティ化

冒頭で紹介した携帯電話メーカーBlu Products社のフラッグシップモデルである「Blu Life One」は、今年4月下旬からアマゾンなどの小売業者において299ドル(約2万8千円)で販売されます。同機はAndroid 4.2にHD解像度の5インチIPS液晶、1300万画素カメラを搭載し、薄く軽いそのボディに詰められたスペックはGalaxyやDROIDといった世界ブランドにも引けを取りません。

 BLU PRODUCTS ONE

このような安価な端末は中国の新興メーカーだけでなく、欧米の比較的小さく・新しいメーカーからも登場しています。事実、前述したようにBlu Products社は米国企業です。

携帯電話に使用されている多くの部品は標準化、モジュール化されており、現在ではプラモデル的(買ってきた部品を組立てるという意味)な感覚でハイエンドのAndroid端末を安価に作り出す事が可能になってしまいました。

このような流れを踏まえて、Samuel Ohev-Zion氏は「機能・性能が同じなのであれば人々はアップルやサムスンといったブランド携帯よりも、より安価な物を求めるはずだ」と語っています。

PCの歴史とスマートフォンの将来

PCのコモディティ化による価格下落時にも、DELLは製造方法や物流、会社経営を工夫し、IBMはブランド力によって、コンパックは常に最新・最速の部品を使う方針で差別化を図ることで収益を確保し、一時的な競争を繰り広げました。その一方で、基本的な機器の構成に大きな差異はなく、一番大事な「PCの役割・活路」では差別化することはできませんでした。

そして今、スマートフォンがPCと同じような道を歩み続けるのであれば、PCと同様のシナリオが予想できます。

現時点ではノーブランドのスマートフォンはそれほど市場には出回ってはいませんが、今後、多くのノーブランドスマートフォンがアップルやサムスンの半額程度で出回ったらどうなるでしょうか。日本、北米、欧州といった地域ではキャリアからの販売奨励金制度があるため、単純な比較は難しいかもしれませんが、それ以外の地域では特に販売数を増やして行くと予想されています。

また、iOSとAndroidの関係を考えるにあたり、PCでのMacとWindowsの歴史を見てみましょう。

Macは80年代におけるPCの発展において、明らかに競争の先頭を走っていました。そして、Windowsが生まれ、多くのバグやセキュリティーホールがあったとしても、Macで出来る事と同じ事を安価に提供する事に成功して市場を奪い、Macのシェアを4%程度まで追い込みました。

iOSにもMacと同じような事が起こるのでしょうか。もちろん、iOSはすばらしいOSですが、当時シェアを奪われたMac OSもすばらしいOSでした。上記の例をもってして「スマートフォンのOS競争においてもPCと同じ事が起こる」と説明するには時期尚早かもしれませんが、類似点は確かに存在しています。

現時点ではノーブランドの安価なAndroid端末があまり出回っていないために、世界市場においてiOSとAndroidは互角に戦っていると筆者は感じています。しかしながら、今後安価なノーブランドAndroid端末が台頭してきた時がiOS搭載端末にとって真の正念場となり、当時のMacと同じ道を辿るのか、それともブランド力と新たなイノベーションによって、競争力を保つ事が出来るのかが注目されます。

また、Android端末の雄と言われるサムスンに至っては、ノーブランド端末と直接対決になるため、より厳しい状況が予想されます。

[Forbes]

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