ルネサス、処理能力と省電力性を高めた車載情報端末向け次世代SoC「R-Car H2」を発表

ルネサスエレクトロニクスおよびルネサスモバイルは25日、ハイエンド車載情報端末向けのSoC(System on Chip)の次世代モデル「R-Car H2」を発表しました。すでに同日よりサンプル出荷を開始しており、2015年6月からの量産開始を予定、2016年6月には月産10万個を計画しています。

H2-001

「R-Car」シリーズは、主にカーナビなどの車載情報端末用に作られたSoCパッケージであり、現行型の「R-Car H1」は2011年に発表され、2012年末よりサンプル出荷が行われており、2013年現在既に量産が開始されています。

R-CarシリーズはこれまでにARM Cortex-A9を搭載した「R-Car E1」、ARM Cortex-A9+SH-4Aのデュアルコア構成とした「R-Car M1A」、そしてARM Cortex-A9×4基+SH-4Aの5コア構成とした「R-Car H1」などがラインナップされてきましたが、今回発表されたR-Car H2はR-Car H1の後継に当たり、そのコア構成は最新のARMアーキテクチャであるARM Cortex-A15×4基+ARM Cortex-A7×4基+SH-4Aの、合計9コア構成と大幅に強化が成されています。

この大幅な性能強化の背景には、車載情報端末で処理すべき情報量の増加や高精細ディスプレイへの対応、後部座席用モニターなどへのマルチディスプレイ対応、そのほかレスポンスの向上やクラウドサービスへの対応など、あらゆる点において端末の高度化が求められていることが挙げられます。

H2-002

CPUがヘテロジーニアス・メニーコア構成となった理由については、単純に処理性能のみを求めた場合はより強力なCPUの導入が最も効率的ですが、車載用という観点から消費電力やその駆動時の発熱を抑えなければいけないため、高速で消費電力の比較的大きなCPUと低速で消費電力の小さなCPUとを動的に切り替える「big.LITTLE技術」を導入することで問題を解決、そのためにCortex-A15とCortex-A7という2つのCPUを並列搭載する方向となったとのこと。

それぞれ役割の違うCPUを並列搭載し連動させることによって消費電力に対する動作効率は飛躍的に向上しており、R-Car H1と比較して約6倍の消費電力効率を実現しています。

もう1つ搭載されているCPU「SH-4A」については、これまでの機種に搭載されてきたものと基本的には同等品であり(動作周波数などに違いがある可能性あり)、制御系システムとのインタフェースとなるCAN(Contoroller Area Network)や車載情報機器の高速起動など、リアルタイム性の高い処理を受け持ちます。

グラフィックスチップにはImagination Technologiesの最新アーキテクチャ「PowerVR G6400」を車載情報端末向けSoCとしては初めて採用。これによりR-Car H1と比較し、約10倍のシェーダー演算処理性能を実現。従来のアニメーション的なナビゲーションマップからリアルな3D表現まで可能にする性能を有するとしています。

H2-003

また運転支援強化として、R-Car H1と比較して約4倍の画像処理性能を有する高性能リアルタイム画像認識エンジン「IMP-X4」を採用。IMP-X4は主に車載カメラからの映像処理などを受け持ち、CPUやGPUとは独立して動作が可能。車両周辺に設置した4台の車載カメラの映像を合成し、自車両を上から見下ろした視点で周辺映像を合成表示する「サラウンドビューアシスタンス機能」などに活用できるとのこと。

そのほか、オーディオ処理に用いるDSPと映像コンテンツを取り扱うビデオコーデックをオープン対応にすることでソフトウェアの開発効率を向上。オーディオ処理用DSPにTensilicaのIPコアを採用することにより、100以上のコーデックに加えて「AAC+7.1Ch」や「AC3 5.1Ch」、「DTS HD Master Audio」といった高音質音源にも対応。アプリケーションプロセッサで処理を行うよりも大幅に消費電力を抑えられるとしています。

H2-004

映像処理に関してはビデオコーデックに「OpenMAX」や「Gstreamer」といったオープンソースのマルチメディアフレームワークと標準インタフェースを装備、1080p/30fpsでのFHD映像のエンコード/デコードを4系統同時に行えます。

R-Car H2を搭載する車載情報端末のソフトウェア開発環境も整備しており、R-Car H2の評価ボード「Lager」の提供やQNX Softwareの「QNX Neutrino」、Microsoftの「Windows Embedded」、LinuxといったOSが動作するボードサポートパッケージ(BSP)、さらにミドルウェアやライブラリも提供。加えて83社のパー トナー企業から、R-Car H2に対応するツールやミドルウェア、IPなども展開する計画です。

H2-005

ルネサスエレクトロニクスは現在経営再建中の企業であり、2012年度の合計人員削減数は1万5000人にも及ぶとみられ、コストカットと共に新たな市場開拓にも注目が集まる中での今回の発表となりました。同社にとって車載情報端末の分野は自社のSoCノウハウが活かせる上に今後成長が見込める市場として考えているものと思われます。

実際、車載情報端末に求められる性能は年々ハードルが高くなっており、衝突防止システムの普及や車載端末とスマートフォンとの連携なども増加し、その性能向上は急務となっています。その上で、電気自動車(EV)などの普及から如何に消費電力を抑えるかという問題にも直面しており、高性能且つ低消費電力という矛盾した要求に応えなければいけないジレンマも少なからず存在します。

ケータイやスマートフォンの分野で敗北を喫し、情報家電の分野でも情報家電そのものの売れ行きが伸び悩む中、車載情報端末は同社の最後の希望とも言えます。R-Car H2の市場投入はまだ2年以上先ですが、長期的で慎重な戦略が求められていることは紛れもない事実でしょう。

[Car Watch]
[MONOist]

ソーシャルシェア

このニュースでディスカッション
  • コメントを投稿する際には「コメントガイドライン」を必ずご覧ください
  • コメントを投稿した際には、コメント機能利用規約(ガイドライン)に同意したものとみなされます
  • 主要ニュースサイトなどの「許可サイト」以外のURLを含む投稿はコメントが保留されます