ついに、夢の解読に成功

ATR(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)の研究グループは2日、睡眠中の人の脳活動パターンから見ている夢の内容を解読することに成功したと発表しています。この成果は、Science誌オンライン版(Science Express)に掲載されます。

研究では、3人の被験者がEEG(脳波計)を装着した状態で fMRI 装置の中で眠ることで、睡眠中の脳活動を計測しました。

まずは、EEGとfMRIについて簡単にご紹介します。

EEGは電極を頭部に設置し、脳の神経活動に使われる「電気信号」を電位差(電圧)として感知することで、脳の神経活動を計測することができます。時間分解能(時間についての計測精度)が高い一方、空間分解能(位置についての計測精度)はやや劣る傾向にあります。

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Credit:Daniel Weissman’s Attention and Cognitive Control Laboratory

fMRI(機能的MRI)は、MRI(核磁気共鳴画像法)を脳活動の計測に応用したものです。

MRIは、強い磁気パルスをかけることによって起こる「スピンの傾き(核磁気共鳴)」の緩和の様子から、物質を特定し、画像化します。fMRIでは、血液中のヘモグロビンが酸素を持っている状態では「非磁性体(磁石に反応しない)」、酸素を失った状態では「常磁性体(磁石を近づけると”弱く”磁化する)」となる性質を利用します。血液の状態によって信号に変化が現れるので、脳のどの部位が酸素を消費しているかを計測することができるのです。

fMRIは空間分解能には非常に優れていて、ミリメートル単位での検出も比較的容易なほどです。しかし高解像度になるほど、(毛細血管ではなく)静脈の血液の信号を強く検出するため、信号が実際の活動よりも数秒遅れてしまうという「時間分解能の低さ」が欠点となっています。

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Credit:Wikipedia日本語版「fMRI」

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EEGとfMRIを組み合わせて使用する様子。
Credit:Bergen fMRI Group

実験の流れは、EEGで脳波をモニターしながら睡眠状態の判定をリアルタイムに行い、夢を見ている状態で発生する睡眠脳波のパターンが生じた時に被験者を起こし、直前まで見ていた夢の内容を報告させるというものです。この時、fMRIによって睡眠中の脳活動を計測しています。得られた報告を記録し、再び被験者を眠りにつかせる、という手続きを各被験者につき200回も繰り返すことで、夢報告とそれに対応する脳活動データを大量に取得したとしています。

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Credit:ATR報道発表資料

まず被験者の報告から、夢の内容を言語的に解析します。このとき、「本」や「クルマ」など20の物体のカテゴリーについて、それが登場したかどうかをチェックします。さらに、被験者にそれぞれの物体のカテゴリーに関連する様々な画像を見せることで、被験者の脳がどのように反応するかを計測します。
これら2つの計測から、物体情報を解読するパターン認識アルゴリズム(デコーダ)を構築し、夢を見ているときの脳活動に適用させたところ、夢に登場する物体のカテゴリーの情報を解読することに成功しました。

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Credit:ATR報道発表資料

図からもわかるように、起こされる直前(0~15秒前)の脳活動から得られた各カテゴリーについての「存在度合(スコア)」は、夢の報告から得られたカテゴリーについてとくに高い値を示すものとなっています。
つまり、目が覚めた時に憶えている夢は「目が覚める直前に」見た夢であり、それ以前の内容は忘れてしまっているのかもしれないということです。

また、夢を見ているときに活発に活動していると分かった高次視覚野は、これまでの研究から実際に物を見るときに強い活動を示すことが知られています。したがって、夢を見ている時にも、画像を実際に見ている時とよく似た脳活動パターンが生じていると考えられます。

今回の研究では、夢の中に現れる色や形などの画像特徴を解読するには至りませんでしたが、将来さらに研究が進むことによって、夢を映像として取り出すことができるようになるかもしれません。

[ATR via IT Media]

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