au版iPhone5の75Mbps対応エリアの実人口カバー率は14% ―auに何が起きたのか

KDDIが販売するiPhone 5に関して、過去に配布していたカタログやWEBページにおいて、75Mbpsの対応エリアに関する実人口カバー率で大きな誤りがあったことが波紋を呼んでいます。

今回の経緯

KDDIは21日、「au 4G LTE」広告の誤表記問題に関して発行したプレスリリースにおいて、iPhone5で利用できる下り最大75Mbps対応エリアの実人口カバー率が14%である事を公表しました。

過去に、KDDIが店頭で配布していた「au 総合カタログ 2012 “11”」「au 総合カタログ 2012 “12”-2013 “1”」や同社のホームページでは、上記の件に関して96%と書かれていたので結果的な点のみに着目すれば大きな水増しと取られる事態です。これが問題視されました。

パンフレット等における実際の表記は、4G LTEサービスの下り最大75Mbpsサービス対応エリアについて、Android端末だけでなく「iPhone 5も含む」との表記がなされており、どちらの端末でも実人口カバー率96%のエリアで下り最大75Mbpsのサービスが利用できると受け取れる表現になっていました。

37.5Mbpsの実人口カバー率は不明

au 4G LTEは、下り最大75Mbpsのほかに、下り最大37.5Mbpsのサービスも展開していますが(*1)、今回、誤表記問題の対象となったのは「75Mbps」の方になります。一方、下り最大37.5Mbpsの方については実人口カバー率が公表されていません。

*1 下り最大100Mbpsのサービス開始も先日発表された

37.5Mbpsの実人口カバー率は75Mbpsの実人口カバー率である「14%」よりも多いとみられていますが、KDDIは現在も公表していない状況であり、実体は明らかになっていません。KDDIが公表を渋る理由の1つに、iPhone 5のLTE通信が対応する対応周波数がソフトバンクと比較して大きく不利である点があるものとみられています。

LTEの対応周波数が混乱を招く

やや語弊がある言い方をすれば、LTEの周波数は「Band(バンド)」と呼ばれる区切りが行われており、バンド1~バンド44まで存在します。使用するBandは世界の国々や通信キャリアによってバラバラな状況です。KDDIが積極的に投資する「バンド18(通称:800MHz帯)」は世界でもKDDIのみが使用している状況であり、iPhone 5はバンド18に未対応として発売されました(*2)

*2 実際は対応できるとの声も存在するが、ガードバンドに関する諸問題で未対応になったとされている。しかしながら、真相は明らかにされていない。ここではメーカー側が公表する対応基準・および国定認証機関が認める認可周波数を基準とする。

現在、KDDIが提供している「au 4G LTE」サービスは、Android端末向けに提供している800MHz帯(バンド18)・1.5GHz帯と、暫定的にiPhone 5向けに提供している2.1GHz帯の2つが存在しており、そのエリアは共通ではありません。前述したように、KDDIは800MHz帯に積極的に投資しており、その結果、下り最大75Mbps対応エリアの実人口カバー率は96%を達成していますが、その恩恵を受けられるのはAndroid端末のみとなっています。

KDDIは誤表記が起きた原因として、パンフレットやWEBサイトを製作した広告会社がバンドの違いを理解しておらず、一律に75Mbpsに対応していると誤って理解してしまったと報告しています。

 ネットメディアや在京キー局でも大きく取り上げられる

今回問題は、96%が14%に大幅に減少したというセンセーショナルな点もあり、インターネット上のメディア、ブログメディアでも数多く取り上げられ、さらには22日放送のフジテレビ系情報バラエティー「とくダネ!」ではトップニュースとして扱われました。

消費者庁が措置命令を出す

今回の誤記に関して、総務省は以下の措置命令を下しています。

  1. 誤記載に関する事実を消費者庁長官が承認する方法により一般消費者に周知徹底すること
  2. 今後、同様の取引に関し、同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ、これを当社の役員及び従業員に周知徹底すること
  3. 今後、同様の取引に関し、同様の表示をしないこと
  4. (1)(2)に基づいて採った措置を消費者庁長官に報告すること

 

なお、KDDIは広告表示を是正するために以下の対策を行ったとしています。

  1. 本件誤記の修正と表示の改善 ―広告を 2013年 3 月中旬までに修正
  2. お客さまへの周知 ―新聞への謹告文の掲載・当社ホームページ及び au 販売店へ詫び文の掲示
  3. 再発防止策 ―広告チェック体制の強化・内部監査・従業員の教育、研修・役員及び従業員への周知徹底

 

さらに、関係責任者の報酬の一部返上も発表しています。

  • 代表取締役社長 田中 孝司 月例報酬の 20%を 3 ヶ月間
  • 取締役執行役員専務 石川 雄三 月例報酬の 10%を 3 ヶ月間
  • 取締役執行役員常務 奈良谷 弘 月例報酬の 10%を 3 ヶ月間
  • 執行役員常務 福﨑 努 月例報酬の 10%を 3 ヶ月間
  • 理事 菅 隆志 月例報酬の 10%を 3 ヶ月間
  • 理事 菱岡 弘 月例報酬の 10%を 3 ヶ月間

複雑化する広報業務と求められるアフターフォロー

パンフレットなどにおける誤表記問題はKDDIに限らず、全業種のメーカーなどで多発するものです。ただし、今回誤ってしまった部分は「携帯契約の決断に大きく影響を与える部分」であり、いわば「絶対に間違っていけない部分を間違えてしまった」ともいえます。

KDDIは先日発表した新機種「HTC J One」におけるプレスリリースの中で、搭載CPUに関して、実際は「APQ8064T」であるにもかかわらず「APQ8064」と誤って表記してしまい、詳しいユーザーの間では情報が錯綜しました。

末尾に「T」が1文字付くかつかないかの差で、搭載されるプロセッサの世代が1つ違うだけでなく、それによって性能が大きく変わってしまいます。そのことがきっかけで「HTC J One」が周回遅れのスペックであるかのような誤った認識が広まったことも事実です(Twitterや各種コミュニティの発言による)。

規格や仕様が複雑化するにつれて、広報業務に求められる技術的な知識や間違いを防ぐチェック体制の強化が求められていることは間違いありません。

また、今回の誤った表記をきっかけに契約の決断してしまったユーザーに対する対応も、「問い合わせがあった際に個別に相談に乗る」といったイレギュラー対応ではなく、しっかりとWEBサイト上で対応策を公開するなどの「レギュラー対応」として、周知徹底することが望まれます

共著:健人、塚本直樹、管理人

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