激動のスマホゲーム業界 「ネイティブアプリ」の復権と岐路に立たされるソーシャルゲーム

ガジェット速報でも既にお伝えしているように(こちらの記事)、14日、オンラインゲームやスマートフォン向けゲームで知られるガンホーの株価が東京取引市場の終値で155万5000円を付け、時価総額で1兆7851億円となって任天堂を超えました。

1年前には株価が1万4000円付近だったガンホーが、たった1年で100倍近い株価の上昇に至った背景には、間違いなく同社のスマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)」の大ヒットがありますが、この「パズドラバブル」とも言える超ヒットの背景にはどんな流れがあったのでしょうか。

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パズドラはソーシャルゲームではない

よく、パズドラについて語る際に「ソーシャルゲームの……」という枕詞が用いられることがあります。確かにパズドラではオンライン上でデータを管理し、フレンドと呼ばれるソーシャルネットワークによるコミュニティがゲームシステムの中核を担っているため、一見するとソーシャルゲームの一群として分類、もしくは考えられることがほとんどです。

しかし、パズドラのゲームとしての立ち位置はあくまでも「ネイティブアプリ」です。ソーシャルゲームとは、広義では「ウェブアプリ」と呼ばれるものに分類されるゲームを指します。

ネイティブアプリとウェブアプリの違い

では、ネイティブアプリとはなんでしょうか。ネイティブアプリとはスマートフォンなどの端末上で動作するプログラムによって作られたアプリであり、アプリとしてはオフラインで完結しています。いわゆるスマートフォン向けのマーケットで販売・配布されているアプリのほとんどは、こういったネイティブアプリであり、ゲームでは「アングリーバード(Angry Birds)」などが典型的な例と言えます。

一方、端末上に専用のプログラムを置かず、そのシステムのほとんどをネットワーク上での処理に任せ、端末では専用ブラウザなどを用いて使うアプリのことを、一般的に「ウェブアプリ」と呼びます。PCで言えばブラウザゲームなどがその例であり、スマートフォンなどではソーシャルゲームがこの範疇となります。

ソーシャルゲームがスマートフォンで爆発的にヒットしたのは、2011年8月にiOS向けアプリとして登場した「ドリランド」が先駆的存在であり、これをきっかけにグリーやDeNA(モバゲー)といった企業が一気にスマートフォン向けのゲーム市場を席捲したのです。

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ウェブアプリの強みとデメリット

では、何故ソーシャルゲームは僅かな期間でスマートフォン向けゲームの世界を席捲できたのでしょうか。そこにはアプリ開発の容易さと口コミという強みがあります。

まず、ソーシャルゲーム(ウェブアプリ)はスマートフォン向けの標準ブラウザ、もしくはアプリを動かす専用ブラウザの環境さえあれば、どのようなプラットフォーム(OS)環境であっても、同一プログラムでほぼ同じように動かすことが出来るという点が挙げられます。

そのためiOSやAndroidといったOSの違いを気にすることなく開発ができ、素早くマルチプラットフォーム対応ができたことが、アプリを急速に広めていく要素につながりました。

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そういった強みの一方で、デメリットも存在します。ネットワーク上にアプリ本体があり、全ての処理をオンラインで行うためにレスポンスが悪く、また複雑なゲームアプリを作るには非常に不向きです。そのためウェブアプリによってゲームを作ろうとした場合、ノベルゲームのようなものか、もしくはドリランドに象徴されるようなカードゲーム程度のものが事実上の限界となる訳です。

いわゆるソーシャルゲームがカードゲーム中心となっている背景には、こういったアプリの仕様環境が関係しているのです。

ゲームユーザーはカードゲームに飽き始めた?

ドリランドの爆発的ヒットによって一気にそのジャンルを広めていったソーシャルゲームですが、上記のように複雑なゲーム開発には向かず、またグリーやDeNAといった企業の方針などからテンプレート化したゲームシステムによって似たようなカードゲーム方式のアプリが大量に生まれ、粗製乱造に近い状況に陥ったことは、ソーシャルゲームにとって1つの悲劇だったように思われます。

またソーシャルゲーム最大の失敗だったのは、ユーザーに無理な課金を強いたことです。いわゆる「ガチャ」と呼ばれるアイテム課金システムは社会問題化し、コンプガチャの廃止や若年層への課金上限の設置など、様々な規制が生まれる原因ともなりました。

しかしその後も重課金への問題は解消されたとは言えず、「搾り取れるユーザーからは限界まで搾り取る」といったようなゲームシステムは未だに続いています。

この流れに消費者が拒否反応を示したり、ユーザーが疲弊してゲームを辞めざるを得なくなる状況は、遠からず予想できたものです。現在のソーシャルゲーム業界の伸び悩みの原因の1つには、こういった重課金からのユーザーの離脱や消費者に広がるソーシャルゲーム業界全体への不信感といったものが関係していると思われます。

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ゲームは再びネイティブアプリへ

そして2012年、あのパズドラが登場し、口コミによって瞬く間に1000万人以上ものユーザーを獲得しました。ゲーム単体では一過性のブームのようにも見えますが、この流れは確実にスマートフォン向けアプリ、特にゲーム関連の開発分野には大きな影響を与えつつあります。

ガンホー以外にも、ネイティブアプリで大ヒットし、業績を大きく伸ばしている企業があります。コロプラです。同社もまたここ数ヶ月で大きく株価を伸ばしており、現在の時価総額は3200億円以上。時価総額約2800億円のグリーを抜き、一躍モバイルゲーム業界の風雲児となっています。

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コロプラもまたネイティブアプリの製作が主体でありながら、ソーシャルコミュニティ機能に特化したゲーム製作によって業績を伸ばしてきた企業であり、そもそもは「2ちゃんねる」での有志によって作られた「コロニーな生活」というPHS向けの位置情報ゲームからスタートしたベンチャー企業です。

そしてさらに、ネイティブアプリでソーシャルネットワークをフルに活用したものとして忘れてはいけないのが「LINE」です。

LINEそのものはゲームではありませんが、ネイティブで作り込まれたアプリのユーザーインターフェイスとレスポンスの良さはユーザーに高く評価され、CM効果以上に口コミによって人々に広まっていったことは誰も否定するところではないでしょう。

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ネイティブアプリとして作り込むことの大切さ

現在のスマートフォンやタブレット向けアプリの動向を見た場合、確実にアプリの形態がネイティブアプリに戻りつつあることを実感します。しかしそれはただの原点回帰ではなく、ネイティブアプリとして完結した完成度を持ちつつ、ネットワークコミュニケーションを中心に据えたゲーム性やアプリの方向性を持っていることが重要になります。

また、パズドラやLINEのように、極小数の重課金ユーザーに収益を頼るのではなく、広く浅く収益を求める低ARPU(ARPU=月間電気通信事業収入)のエコシステムの形成が大ヒットアプリを生み出すカギであるとも言えます。

ソーシャルゲームの台頭によって、ゲーム(アプリ)の製作には時間を掛けず、ユーザーが課金したいと思わせる射幸心を煽ることだけを目的としたようなゲームだけがヒットするかのように思われた時期もありましたが、2012年以降、モバイル市場におけるアプリ開発の流れは確実にネイティブアプリへと戻りつつあります。

最近ではこういったネイティブアプリの復権に触発され、ソーシャルゲームにもゲーム性を重視するものがいくつか現れ始めていますが、それでもやはりネイティブアプリが持つアプリケーションとしての自由度の高さやゲーム性の奥深さなどには大きなアドバンテージがあるように思われます。

ネイティブアプリのデメリットとしては、アプリケーションそのものを有料化しないと収益が上げられないという点がありましたが、そこもネットワーク連携とアプリ内課金によって解決されるようになりました。今後モバイル市場において大ヒットアプリを生み出すには、如何に作り込まれたアプリを提供し、どのような形でソーシャル要素を組み込んでいくのかという点にあるのかもしれません。

[ガンホー / グリー / DeNA / ナムコ / コロプラ / LINE]

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