米アップルの注目株、フェデリギ氏とは何者か

先日のWWDCを見ていた方はお気づきかもしれませんが、今年はあまり見慣れない人物が「iOS 7」と「OS X 10.9 Marverics」の発表をおこないました。ソフトウェアの発表といえば、事実上、更迭されたスコット・フォーストール氏が毎年のようにWWDCの基調講演で登壇を行い、”革新的” と称する新機能を紹介していた姿を記憶している方も多いのではないでしょうか。

同氏が更迭されて以後、そのような役割を誰が果たすのか?という点に注目があつまっていましたが、それが前述した「見慣れない」人物です。この人がアップルの注目株、クレイグ・フェデリギ氏。WSJ英語版が彼を大きく取り上げていたため、当サイトでもご紹介します。

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ここ数年、iOSの発表はスコット・フォーストール氏が行っていました。フォーストール氏は、故・スティーブ・ジョブズ氏の盟友とも言える人物で、アップルを追われたジョブズ氏が設立した会社である「NeXT」から共にする人物。NeXTがアップルによって買収されたのと同時にフォーストール氏もアップルコンピュータ(旧)入りしました。

OS Xのリリースに積極的に関わった以後は、iOSの開発に大きく関わっていましたが、社内での対立が深まっていたことや、話題となったアップルの独自地図の件で責任を取り、事実上、更迭されることとなりました。

アップルのキーマンといえば、チーフデザイナーのジョナサン・アイブ氏も欠かせませんが、彼はミニマルデザインを好み工業デザイナーから始まり、近代コンピューティングデザインにまで昇華した人物です。ところが、アイブ氏とフォーストール氏はデザインの指針や仕事の方針で衝突していたと報じられています。

フォーストール氏は「人々がコンピュータに慣れ親しんでいない時代に、いかにしてコンピュータを知ってもらうか」というユーザインタフェース(UI)哲学に長けた人物で、(彼の実績ではありませんが)コンピュータ世界の “ごみ箱” を現実世界のごみ箱と同じデザインにすることで、直感的に機能を伝えやすくするといった効果を随所に散りばめることが得意でした。iOS 6までにおいてもそのような表現は多々用いられており、「革」「フェルト(ラシャ)」といったテクスチャを使って現実世界にある物と似せることで、直感的に機能を伝えるデザインを好んでいました。

上記のようなフォーストール氏の哲学とアイブ氏のデザイン思想は相反する物ともいえ、アイブ氏とそのチームがハードウェアデザインに心血を注いで完成させたとしても、中で動くソフトウェアは自分が嫌うものであるという状況であり、アイブ氏は顔をしかめていたものと思われます(※報道や指針の違いから察するに)。

さて、話は遠回りしましたが、今回の主役ともいえるフェデリギ氏は、フォーストール氏と同様にNeXTから来た人物です。同社がアップルに買収された際、フォーストール氏がアップルのソフトウェアデザインに携わった一方で、フェデリギ氏はアップルには入社せず、企業向けソフトウェアを提供するAriba社へ行きました。そして2009年にアップル社に呼び戻され、現在に至ります。

Craig-Federighi

フェデリギ氏はフォーストール氏とは違って、しっかりとした合意の上で仕事を行う人物だったようで、フォーストール氏やクック氏の双方ととても仲良くやっていたようです。さらに社内でのメールにすぐに返信し、旧チームをどうまとめ上げるかに腐心するなど、かなり真面目な方のようです。

ジョブズ氏がこの世を去り、フォーストール氏もアップルから去るとなると、独断と強い意志で強引に推し進める人物がアップルから消えつつあるようにも思えます。今はどちらかというと、クックCEOを中心に、デザイナーのアイブ氏、新たなアシスト役としてフェデリギ氏などが、心地よく仕事ができる環境を築けているといっても良い状況でしょう。これが吉と出るのか凶と出るのかは今のところ分かりません。

iOS 7はソフトウェアや新要素としての面白みもありますが、アップルの社内政治を背負ったものであると考えると、また別の面白みが見えてきます。iOS 7のリリースまでまだ数ヶ月ありますが、iOS 7をどのような人が先導して開発に携わっているのかということを知るのも、また一興であるかもしれません。

[WSJ]

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