日本の通信料金は本当に高いの?米国従量制プランから読み解く料金事情

「従量制の通信量上限を複数台の端末でシェアできる」そんな「Mobile Share」プランが米国で導入されてから1年が経ちました。最初にこのプランを導入したのは、米国最大の携帯通信会社ベライゾン。それに続く形でAT&Tが導入し、”複数台持ち” が増えてきた米国においては一般的なプランになりつつあります(半ば強制的に)。

『米国のように従量制で賢く・安く』といったことは一時期日本でも叫ばれていましたが、データシェアプランの登場によって大きく風向きが変わったといっても過言ではありません。そんな米国の事情からは、増え続けるモバイルトラフィックと、設備投資をし続けなければならないというキャリアの苦しい事情が垣間見られます。

今月26日から、AT&Tは新たに300MBと2GBの従量制プランを新たに追加することもあり、今一度、米国の従量制について読み解いて行きたいと思います。キャリアは土管屋が良いのか、それとも良きコンテンツパートナーであるべきなのか、米国の事情から考えられる点は多々あるかもしれません。

具体的にどんなプランなのか

日本では「無料通話を家族で分け合える」といったものが一般的になっていますが、それの「データ通信版」といったようなものです。1つの従量制データ通信プランを契約し、それに副契約がぶら下がる形で複数のスマートフォン・タブレット・ゲーム機などと、許容データ量をシェアすることができます。もちろん、家族全体でのシェアも可能です。

例えば上限5GBのプランに契約しているとすれば、父・母のスマートフォンがそれぞれ1GB分(計2GB)を使用し、子供のスマートフォンが2GB、家族共用タブレットで1GB使用するといったシェアができるのです。

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シェアのイメージ Credit:AT&T

これだけ聞くと「データ通信は1契約で済むし、日本のようにムダな月額基本料やパケット定額プランを個別に払わずに済むではないか」と思ってしまうところですが、そうはいかないのが米国のシェアプラン。AT&Tの最新の表をご覧下さい。

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まず、表中の「Monthly Cost」は月額料金です。多くのユーザーが境目となる部分では小刻みにプランが用意されているのが特徴。300MBプランの月額20ドル(約2000円)から始まり、日本で一般的な「7GB制限」に最も近い6GBプランは月額90ドル(約9000円)になります

注目すべきは「Cost per Smartphone」の部分。シェア枠に台数を1台追加する毎に料金が発生する仕組みです(最大10台まで)。こちらも月額で徴収されます。つまり、日本と同様に月額基本料金のようなものが発生することになります。ただし、容量の大きいプランになればなるほど1台毎にかかる月額料金は安くなる仕組みが採用されているので、ヘビーユーザーや家族が多い場合にはお得になります。

日本では、ソフトバンクモバイルの「ホワイトプラン」とKDDIの「LTEプラン」が980円。NTTドコモの「タイプXiにねん」が780円と、比較的安い料金設定になっていますが、AT&Tで6GBプランを申し込んだ場合は35ドル(約3500円)の基本使用料が発生します。ただし、AT&Tとベライゾンの双方は、音声通話とSMSの無制限利用プランが同時に付いてくる点は大きな違いといえるでしょう。

データ通信料比較

実際にスマートフォンにおけるデータ通信料を日米で比較してみましょう。今回はNTTドコモとAT&TのMobile Shareプランを比較。

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比較を行ったグラフが上のもの。このグラフを読む際の注意点としては、AT&TのMobile Shareが設けるプランに合わせて算出していること、強制的に円単位の比較にしていることです(レート:1ドル100円)。やや乱暴なグラフなので、イメージをつかむ程度にご利用下さい。

なお、NTTドコモの場合は7GB(ライトの場合は3GB)を超過した場合に、2625円を支払うことで2GBを追加出来ます。AT&Tの場合は、契約プランの上限を超過した場合に1GB毎に15ドル(約1500円)を支払うことで追加出来ます。両者を比較すると、1MBあたりのチャージコストはAT&Tの方が割高になります。

「Mobile Share(水色)」はプラン毎の料金推移を示しています。契約する際 or 月初めにプランを設定する仕組みになっており、月の途中でプランを変えることはできません。「Mobile Share 6GB加入者(青色)」は、6GBプランに加入した場合の想定モデルで、それ以降、どのように通信料が増えていくのか示しています。

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赤丸 3.5GB付近は日米ともに料金がほぼ同じ

注目すべきは「3.5GB付近で日米各社で料金がほとんど変わらない」という点です。携帯電話の料金を設定する際には、大量の統計データから収益とコストのバランスを算出しますので、日米共に3.5GB付近が何らかの特異点であると推測されます(例えば該当者が一番多いといったことや、コストのバランスが良いなど)。

それを踏まえると、日本における3.5GB未満のユーザーは、利用頻度のわりには高い費用を支払っていると考えてよいかもしれません。そんな方のためのプランが「Xiパケホーダイ・ライト」ですので、プラン変更を検討してみましょう。3GB制限のXiパケホーダイ・ライトといったプランが登場した理由もなんとなく納得できる結果となりました。

さて、日本基準で考えるならば次に注目すべきは「7GBの部分」でしょうか。Xiライトはあまり利用しないユーザー向けのプランなので、3GBを超えた途端にAT&T並の高価格になりますが、その他のプランであればNTTドコモが圧倒的に安い事が分かります。具体的には最大4515円差ですので、非常に大きな差となります。

7gb

10GBの場合はAT&TとNTTドコモに料金差はほとんどありません。しかし15GB以降になるとジワジワと日本の方が高くなっていきます。

ただしそれは、AT&Tユーザーが「初めから大容量プランを選択していた場合」のみの話です。前述したように月の途中でプランを変更しても新たな上限が適用されるわけではありません。常に30GB近い通信量の方は迷わず30GBプランを選択すべきですが、使用量が変動する方にとっては「6GBプランのモデルケース」が最も現実に即した結果になると思われます。

日本にはUQ-WiMAXといった上限がないサービスも存在しているので、月々30GBも通信するユーザーはWiMAXなどを利用しているといったケースも多いはずです。

米国においては、AT&Tに限らずベライゾンも「初めから適切なプランを選択しておかないと結果的に高くなる」という仕組みが用いられています。従って、大多数の人が収まるであろう「7GB」までの料金が最も安いNTTドコモ(日本)の料金は、安心と安さを両立した価格設定であるとみてよいのではないでしょうか。

シェアの効果はいかほど?モデルケースでみる日米価格差

さて、ここまで見ると『米国(AT&T)の方が高い』といった印象を受ける方も多いと思われます。しかし、重要なのは “シェア” の部分。モデルケースを使って、データ通信量+月額基本料のみの比較を行ってみます。今回もやや乱暴な「1ドル100円」のレートで円換算の比較を行っていますので、ご注意下さい。

家族 1ヶ月の平均使用量
2GB
2GB
息子 5GB
5GB

モデルケース

上記表は一家4人構成のモデルケース。いずれもスマートフォンを利用しており、子供の方がパケット通信量のウェイトを多くしてあります。一家全体における合計通信量は『14GB』。それでは、AT&TとNTTドコモの両方に当てはめてみましょう。

■AT&Tの場合

  •  最適なプランは15GBプラン・160ドル(約1万6000円)
  • スマホ一台登録する毎に30ドル(約3000円)が毎月発生
1万6000円 + (3000円×4台) = 2万8000円
■NTTドコモの場合
  • 父と母は「Xiパケホーダイ・ライト」が最適。月額4935円。
  • 息子と娘は「Xiパケホーダイ・フラット」が最適。月額5985円。
  • 月額基本料は「タイプXiにねん」で780円。台数毎に発生。
(780円×4台) + (4935円×2台) + (5985円×2台) = 2万4960円

以上のような結果になり、モデルケースではNTTドコモの方が安くなりました。コレに加え、MNPによる毎月割のかさ増しや、各種キャンペーン(KDDIはスマートバリュー、ソフトバンクはiPhoneが安い)といったことを考えれば、大幅に安くなることは間違いありません。

もちろん、日本ではこれ以外に「インターネット接続料」などの付帯サービス料金が発生しますが、それでも割安感があります。

選択する自由の代償

「土管屋」とも称される米国の携帯電話会社ですが、やはり本業の通信費で稼ぐことは不可欠です。選択する自由をあたえつつ、しっかりと通信料金の見直しをおこなう賢いユーザーにとっては、それ相応のお得さを提供出来ているようです。

ただし民衆の大多数を占めると思われる「考えるのが面倒な層」は、過剰に支払っているのではないか?とする、根拠のない仮説を立ててしまいたい衝動に駆られます。

サービスというものは一部の賢いユーザーからお金を取るよりも、賢くないユーザーからいかに不満を持たせずに支払わせるかという、心痛い手法で成り立つ側面もあります。見直さなければ損をするのは日米変わりがありませんが、少なくとも日本においては、キャリアがオススメするプランに入っておけば、米国以上に損することはないものと思われます。

[Android Police]

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