MSバルマーCEO「Windows Vistaは最も後悔した…」の意味深さ

電撃の退任発表を行った米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOですが、ZDNetのMary Jo Foley氏が同氏にインタビューを行いました。その中で、バルマー氏は13年間のCEOとしての仕事を振り返り「Vistaが最大の後悔である」と明らかにしています。

インタビューの中ではVista…もとい「Longhorn」が同氏の中で最も後悔しているプロジェクトであったことを回顧しています。個人的には「最大の後悔がVistaなのか!?」とツッコみたくなってしまうところですが、振り返るとそこにPCがあるというのはなんともマイクロソフトらしい一面を現しているのかもしれません。

事実、今回の退任発表の中では「デバイスとソフトウェアを提供する企業に変貌する中で、長期的にCEOになれる人物が必要」と述べており、同社は変革のまっただ中。同氏はそれらを踏まえて、あえてPCにフォーカスを当てたコメントをした可能性もあります。

Windows Vista/7 サポート延長

さて、Windows Vistaといえば2006年にリリースされたOSですが、開発中もリリース後もゴタゴタしたイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。マイクロソフトの “失敗OS” を挙げると、Windows Vistaを挙げる人が多いようにも見受けられる程で、Vistaへの移行が上手く進まなかったことからWindows XPが異例のサポート延長を行ったほどです。

開発初期段階におけるLonghornは、『インターネットとの融合を進めつつも、クラウド(当時は言葉が存在しなかった)に全てを投げてしまうのではなく、手元のPCでも革新的な処理を行うOS』と説明すると伝わりやすいかもしれません。今ではSkyDriveがエクスプローラーに実質統合されるなど、まさに当時夢見たような世界が実現しているものの、2000年台初頭では開発ボリュームは時代に見合ってない非常に大きいものでした。

特にデータベースとファイルシステムを統合するという非常に斬新なファイルシステム「WinFS」の開発失敗は、今もなおマイクロソフトに影響を及ぼしています。

WinFSの存在がマイクロソフトのクラウド事業の足を引っ張っていたといっても過言ではなく、『PCはもっとハイスペックになり、手元のPCで全て完結できるのが良い』とする主張と『これからはインターネットへの接続性が向上するので、手元のPCよりもネットワーク越しにサービスを提供した方が良い』とする主張が社内でぶつかっていたとされています。つまり、前者がWinFSに相当するものであり、後者が現在のクラウド事業そのものであるわけです。

google-chromebook-pixel

2004年~2005年頃には「Googleデスクトップ」の台頭が著しく、PC内のファイル検索はネットワーク越しに提供する時代になりつつありました。マイクロソフトが社内政治で時間を無駄にする一方で、グーグルはマイクロソフト社内における後者の考えを企業一丸となって推し進めていたのです。

と、ここまで振り返ると第二段落で触れた「最大の後悔がVistaなのか!?とツッコみたくなってしまう」というのは誤りであることが分かります。そう、マイクロソフトがコンシューマ向けクラウド事業でグーグルの台頭を許さない程に成長する可能性があったのに、それを潰してしまった原因がLonghorn開発プロジェクトにあったといっても過言ではないのです。

実際は、Longhornの開発に着手した時点で「先を見誤ってた」といっても良いのですが、OSの開発は非常に長い目でみて前々から取り組む必要があるだけに、2000年頃にその潮流を見定めるのは容易ではなかったと思われます。ある意味『OSを開発しなければならない』というマイクロソフトならではの責務のようなものに、未来を潰されてしまったようなもの。イノベーションのジレンマそのものです。

ネットサービスインフラでどんどん成功を収めていったグーグルは、さらにYouTubeなどの代表的企業を買収。それらの強みを活かしてスマートフォンでも頭角を示します。対するマイクロソフトはモバイルシフトに失敗。Windows Phoneは決して良い状況とは言えません。さらにタブレット端末(Windows RT搭載端末)も同様です。

『OSを販売して利益を上げる』というビジネスモデルが崩れつつある昨今、皮肉にもOSを最もよく知るマイクロソフトが次の一手を打てなかったのは興味深いことです。

さらにAndroid端末の普及に伴い、グーグルの本業とも揶揄される広告事業はより輝きを増す一方です。何しろ位置データが分かり、ライフスタイルもビッグデータ(使用・移動履歴の蓄積等)から導き出せてしまうわけですから、非常に最適な広告を配信することができるようになります。仮にマイクロソフトが広告事業に力を入れたとしても、グーグルのアドネットワークには到底適うことはありません。何もかもが遅すぎました。この方面は諦めるしかないでしょう。

前述したように、デバイスとソフトウェアを提供する企業に変貌するマイクロソフト。こうしてみると彼らが狙いを定めるのはどうやらグーグルではなく、かつての幕下の相手「アップル」であるようにも思えます。それらの方針は次世代ゲーム機「Xbox One」の機能・サービスにも顕著に表れており、個人的にはXbox Oneの方針はあながち間違いではない(むしろ正しいようにも思える)と思っているのですが、みなさんはどうお考えでしょうか。

*こう考えるとPlayStation 3は “早すぎた” ようにも思えます。Longhornも同様ですが、何事も早すぎるとダメで時期が大切なのですね

10年後の2023年には一体どのような未来が広がっているか楽しみでなりません。

[ZDNET]

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