米アップル、iPhone5sのゴールド色を増産へ ―高需要で

米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版(Digits)が19日に報じた内容によると、米アップルは、iPhone 5sのゴールドモデルに対する消費者需要の高まりを受けて、ゴールドモデルの増産を部品供給業者に求めていることが明らかになった。

アップルが20日に発売したiPhone 5sからは、従来の黒系・白系のカラー以外に「ゴールド色」を新たに追加。今回から取扱いが強化された中国市場における需要に応えるものとみられる。

日本では全国的に「スペースグレイ」モデルのみが入荷している状態であり、日本で人気の高いシルバーモデル(従来はホワイト)とゴールドモデルは入手困難な状況。そもそもiPhone 5s自体の初期出荷量が少ないとも言われているが、今回の供給体制には疑問も多い。

急な対応を迫られた携帯キャリア勢

弊サイトの取材によると、国内キャリアに対してアップルからiPhone 5sの予約を禁止する旨が伝えられたのは日本時間・10日午後のこと。同11日午前2時から予定されていたメディアイベント開催直前のことであった。

さらに、最も人気があると予想されたiPhone 5sの国内入荷が、スペースグレイに絞られていることも判明。「新型iPhone」という強力な商品をスムーズに販売することで、消費者の需要に応えようとしていた携帯キャリア勢は急転換を迫られることになった。

今回の販売施策と出荷構成については、業界関係者の間でも「アップルによる話題作りにすぎない」とする見方も多い。

Apple Storeを構える銀座や渋谷をはじめとし、キャリアの基幹店舗がある場所以外ではiPhone 5sを求める行列はほぼ出来ていない状況。地方都市のキャリア店舗でも「iPhone 5の方が(人が)多かった」との声も聞かれた。どうやら、テレビニュースでクローズアップされたのは、”特異例” を切り取ったものに過ぎないようだ。

発売日の20日午後4時過ぎになっても、iPhone 5sのスペースグレイを入手できる店舗も多数報告されており、インターネットのSNSサービスなどでは「たまたま立ち寄ったらそのまま買えた」との声も聞かれた。一方で、極端に出荷数が少ない「シルバー」「ゴールド」の両色は、開店と同時に「予約受付」という異例の状況。

弊サイトが確認できた大手2キャリアの店舗においては、20日正午頃の段階でもスペースグレイ色は並ばずに購入できた。iPhone 5s発売の為に特別体制を構築したとあるキャリア店舗の関係者によると、「iPhone 5の時よりも盛り上がりが少ない。万全を期して通常よりも人員を多めに確保したが暇な状況」と話す。

「上の指示より、お客様を優先」

アップルの指示を受けた携帯キャリア各社が、店舗を運営する代理店に「入荷商品の開封は発売当日の朝」との厳命を下していた。つまり、厳命を守れば当日の朝まで入荷数も入荷色の構成も知ることが出来ない。しかし、19日夕刻頃から入荷の具体数を掲示する店舗や、シルバーとゴールド色は予約対応になることを掲示する店舗も出てきた。

あるキャリア店舗の関係者はこう話す。

「せっかくお客様に徹夜で並んで頂いたにも関わらず、当日になって予約対応のみと説明できるわけが無い」

厳命を破れば代理店契約を破棄される可能性があるにも関わらず、目の前のお客様を優先した形だ。

iPhone 5sからメディア戦略を転換か

iPhone 5sの販売において従来とはメディア戦略が大きく異なるように見受けられた。一つは、昨年度では殆どのイベントで実施された生中継を止めたことだ。その代わり、新型iPhoneのリーク情報などを扱うメディアを事前内覧会に招待するという異例の対応を行った。

一般的にリーク情報を嫌うメーカーにとって、水と油の存在であるはずの二者がタッグを組んだことになる。「意図的にリークしているのではないか?」とも邪推されかねない危険を冒す理由の真意はどこにあるのか。

今後、これらの動きがどのような影響を及ぼすかは定かではないが、全ての消費者に生中継で同じ物を見せるのではなく、情報の出所を絞ることに何らかの意味があるものとみられる。

「総合的な顧客満足」のお手本は消えるのか

アップルといえば、商品の化粧箱デザインにまでこだわり、箱を開けた瞬間に商品が真っ先に目に飛び込む梱包方法を導入。優れた製品デザインだけでなく、自社小売店を通じたきめ細やかなサポートを通じて「総合的な顧客満足度」が高い企業のお手本として、各種書籍などにも取り上げられることが多かった。

しかしながら、今回の一連の動きを見る限りでは疑問符を付けざるを得ない。

真に顧客満足度を追求する企業であれば、発売時期をずらすという選択肢もあったであろう。仮に供給不足を隠したいのであれば、iPhone 5cという、新セグメント製品を投入したタイミングを利用して「iPhone 5cが先行販売で、iPhone 5sは1週間遅れになる」といった構図も不自然に見え難いであろう。

加えて、供給不足が事前に分かる状況でiPhone 5sのみを事前予約不可にする対応は理解に苦しむ。本来であれば入手困難なものであるからこそ前もって予約を受け付けるべきであるが、逆行するような対応をしている。その理由はなにか。

今回の一件を、カリスマとも呼ばれた故スティーブ・ジョブズ氏の不在と結びつけるのは極めて時期尚早であるが、アップルの販売戦略を立案するチーム(コンサルティング・広告)の早期見直しは必要かもしれない。

ブランドというものは、綿密な広告戦略と数々の顧客エピソードに支えられて成立するもの。これらを「虚業」として揶揄する声も多いが、ブランディングは商品販売の上で極めて重要である。「良い物を作れば神様は見捨てない」的な発想は世界でも日本でも通用しない。良いものを作ったからこそ売り方・魅せ方までも力を抜くことなく、徹底すべきなのだ。

iPhone 5sの発表から販売までを見ると確かに徹底はされているものの、本来の商売相手である「消費者」の存在が抜けているように思えてならない。

誤解無きように記載しておくと、管理人は19日から徹夜で並び、iPhone 5sだけでなくiPhone 5cまで購入する「アップル(も)好き」の一人。しかも、iPhone 5sはさらに2台予約済みで、iPhone 5s/5cと併せて4台購入するという “バカユーザー” だ。自意識過剰ではあるが、ここまで入れ込むユーザー(自身)が今回の対応に疑問を持つということは、一般消費者の間でも不満を持つユーザーが多数存在することは容易に想像できる。

いまや品薄商法など全く流行らない。「本日から販売!」で一世を風靡したアップルに一体何があったのか。「人気の高まりを受けてゴールドモデルを増産」などという情報が即日出てくるような “施策” をするよりも、大切なものをしっかりと見極める時期が来ているのかもしれない。

[WSJ]

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