ドコモは10日、都内にて2013年冬モデルおよび新サービスの発表会を開催しました。これまでドコモはau、ソフトバンクなどの3大通信キャリアの中で唯一iPhoneを販売していないキャリアでしたが、9月に発表された新型iPhone(iPhone 5s、iPhone 5c)から販売を開始し、ようやく他社と同じ条件での販売合戦を開始しました。

しかし9月の契約者数の推移では過去最悪の6万6800件の純減となり、iPhoneの販売が契約者数の増加もしくは現状維持にあまり貢献していない状況が浮き彫りとなりました。原因にはサービス施策の失敗やエリア展開状況への不満など様々に考えられますが、MNP流出が止まらない中での新製品発表会で、ドコモはどのような策を打ち出せたのでしょうか。

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スマートライフで人々の生活をハッピーに

登壇した加藤社長は冒頭、「弊社が掲げるスマートライフとは、ユーザーや社会に幸せを感じてもらうことです」と切り出し、携帯端末を通じたソーシャルコミュニケーションや社会インフラの充実を強調しました。

ドコモはこれまでにもiモードやiコンシェルといったサービスを利用したライフサポートの充実を掲げ続けてきましたが、今回のスマートライフの提案もその延長線上にあるものと考えて良さそうです。具体的には、スマートフォンを利用した安心・安全へのセキュリティサポートやコミュニケーションの充実、電子マネーによるショッピング利用、健康管理、環境・エコ活動への積極的な取り組みなどを挙げ、「スマートライフを支え、ハッピーにしていきたい」とまとめました。

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またスマートフォンをスマートライフのパートナーとして積極的に活用してもらう施策として、ネットワークフリー、デバイスフリー、OSフリー、そしてキャリアフリーの4つを提案。

150Mbpsに対応した高速通信端末の充実やOSに依存しないアプリケーションの開発、さらにこれまで端末IDと電話番号で紐付け管理していたユーザー情報を「docomo ID」で一括管理する方針とし、端末に縛られないサービス展開ができるほか、PCなどでもドコモメールを利用できるようにするなど、より柔軟で幅の広いサービスを提示。これまでの「通信キャリア」という位置付けから、一歩進んだウェブサービス事業者としての方向性を示しました。

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その後発表された新端末は、スマートフォンが10機種(バリエーション含め11機種)、タブレットが1機種、フィーチャーフォンが2機種、その他フォトパネルやモバイルルータなどが3機種、合計16機種となり、3大通信キャリアの中でも最多に。

多彩なラインナップを揃えつつ、夏モデルで採用していたツートップ戦略を転換、今回は「おすすめの3機種」として、ソニーの「Xperia Z1f SO-02F」、シャープの「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」、富士通の「ARROWS NX F-01F」をアピール。数多くのニーズを満たせる機種として紹介しました。

今回のレポートでは、これら「おすすめの3機種」の中から特に筆者が注目した2機種と、さらにその他の端末で気になった機種を1機種ピックアップし、合計3機種をご紹介したいと思います。

Xperia Z1f SO-02F

日本国内では不動のブランドを築き上げたといっても過言ではないソニーのXperiaシリーズですが、本機はXperia Zシリーズのフラットデザインを踏襲しつつコンパクト化したモデルであり、今回のおすすめの3機種のうちの1機種となります。

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画面サイズは4.3インチと小型化され、筐体サイズも約127(H)×65(W)×9.4(T)mmと手に収まりやすいサイズに。カラーラインナップも定番のホワイトやブラックに加えてライムやピンクを揃えるなど、カジュアルさをアピール。それでいて背面をガラスで覆うXperia Zシリーズのデザインもしっかりと受け継いでおり、可愛さと洗練されたクールさの両立に成功しています。

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性能面では液晶がHD解像度である以外はほぼハイエンド仕様。チップセットにはクアルコム社製の2.2GHz駆動のクアッドコア「MSM8974」が搭載され、内蔵ストレージは16GB、RAMは2GB。防水・防塵にも対応しており、イヤホンジャックなどはキャップレス防水を採用しています。

これまでドコモ端末では「docomo Palette UI」というホームUIが利用されてきましたが、この冬モデルからはさらに進化した「docomo LIVE UX」というUIを採用。ホーム画面へのアプリの登録を容易にしただけでなく、画面を上にスワイプすることで各種ニュースや最新情報を一覧することができるように。

auの新端末「isai」で採用された「isaiスクリーン」と同じように、横スクロールでジャンル選択、縦スクロールで情報を一覧できるクロスメニューバータイプとなっており、非常に軽快で直感的な操作が可能となっています。

カメラ機能に力を入れるソニーは、本機でも約2070万画素という超高画素タイプの撮像素子を採用。F2.0の明るいレンズや1/2.3型とスマートフォン向けとしては比較的大きな撮像素子を用いることで、画質面でも向上を図っています。

上位機種となるXperia Z1と比較するとそのコンパクトさは一目瞭然であり、Xperia Z1では大き過ぎるというニーズを満たすには十分な性能とデザインに仕上がっているという印象を受けました。Xperia Z1よりも若干厚みがあるものの、むしろ持ちやすく取り扱いやすいサイズでもあり、筆者的にはかなりの好印象。ドコモのAndroid端末のラインナップでは、今冬の一番の売れ筋端末になるかもしれません。

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ARROWS NX F-01F

富士通製のARROWS NXもドコモがおすすめの3機種の1つとして提案している機種です。特徴は省電力性と明るさに優れた「ホワイトマジック」液晶。従来の赤・青・緑の3原色に白を加え、発光効率と駆動効率を向上。これにより従来の液晶と同程度の明るさでは消費電力を最大で約45%抑え、同程度の消費電力まで引き上げると従来の1.6倍の明るさとなる800カンデラを実現しました。

800カンデラでの明るさは直射日光下でも視認性がよく、実用性も向上。通常の屋内利用では消費電力を抑えて長時間利用を可能とし、屋外ではどんな場面でも見やすい画面を提供します。

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今回発表されたスマートフォンは全て長時間駆動が売りとされており、全機種で2日間以上(ドコモ基準による)の連続利用が可能となっていますが、その中でも本機は特に長時間利用が可能な機種であり、省電力性に優れた液晶に加え、3,200mAhという大容量バッテリーによって、3日間以上(ドコモ基準による)の長時間駆動が可能としています。

富士通性端末伝統の指紋センサーも搭載しており、今回は端末のデザインに合わせた形状とカラーに。丸いデザインと本体カラーに合わせた色はデバイスとして浮いた印象が少なく、見た目の向上に寄与しています。

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性能はハイエンド。チップセットにクアルコム社製の2.2GHz駆動のクアッドコア「MSM8974」を搭載し、内部ストレージは32GB、RAMは2GB、カメラには約1310万画素のCMOSセンサーを搭載。

ボディサイズは約140(H)×70(W)×10(T)mmと5インチのフルHD液晶を採用した端末の中では横幅を比較的抑えてきた機種でもあり、背面のラウンドフォルムと相まって大きさの割には持ちやすい印象です。

省電力性能や長時間駆動、さらにセキュリティ性能などに魅力を感じる層には、十分にアピールできる端末だと感じました。

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AQUOS PHONE EX SH-02F

シャープ製端末では「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」がおすすめの3機種の1つとして挙げられており、ゲーム「ドラゴンクエストVIII」とのコラボレーションモデルも作られるなど大々的にアピールされていましたが、本機「AQUOS PHONE EX SH-02F」は、ハイエンド性能をコンパクトに凝縮した端末としてその隣で注目を集めていました。

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本機の最大の特徴は4.5インチのフルHD「IGZO」液晶。本来の意味での解像度は487ppiにもなり、グラビア印刷をも上回る超写真画質。もはや肉眼でドットを捉えることは不可能です。省電力性にも優れており、性能と長時間駆動の両立を図っています。

本機と同じ解像度を持つ機種としては、同社がソフトバンク向けに提供を予定している「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」がありますが、こちらは発表会の時点ではモックのみの展示であったため、実際にその液晶を目にするのは今回が初めてとなりました。

液晶の精細感は印刷物以上であり、肉眼で見ていても液晶画面なのかハメコミ画面なのか分からなくなるほど。その液晶が横幅63mmの小さな筐体に収まっている様子には、技術を売りとする日本企業らしさがにじみ出ています。

液晶サイズはXperia Z1f SO-02Fよりも一回り大きいにもかかわらず横幅では2mm小さくしてきた点などは特筆に値する部分であり、実際に手に取った時に本体の小ささと画面の大きさを強く実感させるものです。筆者的にはベストに近いバランスであり、今回発表されたスマートフォンの中では最も好印象でした。

また単に技術を詰め込むことに終始せず、本体前面下部にはLEDイルミネーションが搭載されており、電話やメールの着信時に光って知らせたり、充電時にも光の色で充電中や充電完了を知らせるなど、高い利便性も光ります。

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面白いギミックとしては、背面パネルが外れるようになっており(バッテリー交換などはできない)、その背面パネルを交換することで自分好みのデザインに変更することが可能となっています。この背面パネルは純正オプションとして販売される予定とのこと。

こういった発想が生まれた背景には、スマートフォンにカバーケースを付けるのが常習化している現状があります。せっかく小さくて薄い端末を作ってもカバーケースを付けてしまうことで大きくなってしまうのなら、いっそのこと背面パネルを交換できるようにしてしまおうという発想から作られたそうで、小型端末ということもあり、主に女性をターゲットとしてデザインも選定されているとのことでした。

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性能面でも妥協はなく、チップセットはクアルコム社製2.2GHz駆動のクアッドコア「MSM8974」を搭載、内部ストレージは16GB、RAMは2GB、背面カメラは約1310万画素のCMOSセンサーを内蔵。もはや小型端末であっても性能面で見劣りすることはほぼなくなりました。

Xperia Z1f SO-02Fとは違ったベクトルでコンパクト端末の方向性を示した本機はとても面白く、また実用性に優れている点が特徴的です。デザイン的には主に女性向けのようにも感じられますが、コンパクト機でも性能で妥協したくないという人は男性にも多いため、幅広い層から高く評価される予感がします。

端末から生活スタイルへのアプローチを

今回の発表会でドコモが見せた姿勢は従来からの「端末とサービスによる生活支援」という同社の姿勢をそのまま引き継ぐものであり、特別大きな変化を感じるものではありませんでした。しかしそれは同社がこれまで培ってきたノウハウや経営戦略に確固とした自信を持っている証でもあり、端末の主流がフィーチャーフォンからスマートフォンへと変わっても、同社の姿勢には変化はないという意思表示にも感じられました。

とはいえ、実際の数字として顧客の流出は止まっておらず、iPhone販売が始まった9月に過去最悪の純減となるなど、同社の理想と現実が乖離したままであるのも事実です。これまでドコモは着実に契約数を伸ばしつつもソフトバンクなどの他社の勢いには負け続けており、相対的に苦しい立場に追い込まれています。

夏モデル販売時のツートップ戦略も結果として「ツートップしか売れない」という事態を呼び、端末メーカー各社がスマートフォン事業からの撤退を余儀なくされるという状況を作ってしまったとも言え、業界トップの契約者数を持つからこその重圧が各方面から圧し掛かっているといった様相です。

ドコモが掲げるスマートライフへの提案は、果たして人々の心には届くのでしょうか。もはや「ドコモにはiPhoneがないから」という言い訳は通用しません。これからが同社の正念場と言えそうです。

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[ドコモ]