通信キャリアは電波品質を競う時代へ ―ソフトバンク2013年冬・2014年春モデル発表会レポート

ソフトバンクは9月30日、都内にて2013年冬および2014年春モデルとなる新機種の発表会を行いました。携帯電話業界ではiPhoneや一部Android端末に人気が集中し、非採算化したメーカーが相次いで撤退や撤退発表をするなど暗い話題も多い中、野心的にシェアの獲得と顧客満足度の向上にまい進する同社がどのような発表を行うのかに注目が集まりました。

sbm-001

電波品質No.1を目指すソフトバンク

「通信キャリアが端末の機種数を争う時代は終わり、電波品質を競う時代に突入しました」 ‐発表会が始まり登壇した孫社長がまず発した言葉は、これまでの “端末ありき” の携帯電話業界の流れからの脱却を予見させるものであり、これからの同社の経営戦略にも大きく関わるものでした。

プレゼンの前半はほぼ全て同社のエリア改善や電波品質の改善状況を示すデータで埋め尽くされ、同社がドコモやKDDIに劣らないインフラ構築を行ってきたことを強調。2010年時点でのデータなども公開し、当時と現在との比較なども交えながら「繋がらないソフトバンク」と批判されてきたことに対しても真摯に受け止め、ひたすらに電波状況の改善に努めてきたと語りました。

sbm-002

 

スライド資料では客観性なども重視し、第三者機関による調査結果なども公表。「スマートフォンでは」と注釈をつけながらも電波品質や通信速度などでソフトバンクがトップであることを強調し、これまでのインフラ整備の成果をアピールしていました。

今後の展開についても、900MHz帯のLTE導入による「トリプルLTE」の実現などを掲げ、さらなる品質向上と快適さの追求に努めると明言。その後発表された端末についても、その言葉を裏付けるような性能を有したものがラインナップされました。

2つのLTE方式に対応した新機種ラインナップ

今回発表された端末は、スマートフォンが4機種、フィーチャーフォンが2機種、その他モバイルルータや体組成計などがありますが、スマートフォン4機種は全て同社が運用しているFDD-LTEとTD-LTEの2つのLTE方式に対応した「Hybrid 4G LTE」を採用。

これまでiPhoneやiPadなどで利用されてきたFDD-LTE方式の「SoftBank 4G LTE」の回線をAndroidスマートフォンでも利用できるようにすることで、従来からAndroidスマートフォンで利用されてきたTD-LTE(AXGP)方式の「SoftBank 4G」と併用し、より広いエリアの確保と安定した通信品質を実現するものです。

都市部などで基地局の設置が過密化し、これ以上の増設が困難になる中で、さらなる電波品質の向上を図るために利用できる電波の周波数帯を増やすのは非常に合理的な回答です。同社では既にイーモバイルのLTE回線も利用できるようにするなどの品質改善策を打ってきましたが、今回のHybrid 4G LTEの採用は、その流れをさらに一歩推し進めたものと言えるでしょう。

sbm-003

今回のレポートでは、発表されたスマートフォン4機種の中から実際にホットモックが展示されていた2機種をピックアップしてご紹介したいと思います。

AQUOS PHONE Xx 302SH

1機種目は、シャープ製のハイエンドスマートフォン「AQUOS PHONE Xx 302SH」です。今回発表された機種の中でフラッグシップに位置付けられる機種であり、その特徴となっている5.2インチの大画面液晶はデザイン面でも大きなインパクトを与えてくれます。

sbm-004

 

一見して分かるのは液晶周辺部のベゼルの薄さです。左右以外にも上辺も狭額縁化され、まるでスマートフォンの前面全体が液晶画面のように。本体前面に対する液晶ディスプレイの占有率は80.5%にもなり、狭額縁化したことで5.2インチの大画面にもかかわらず、本体横幅は70mmに収まっています。

また物理キーの徹底した省略化で本体には電源キーしか存在せず、音量調節キーなどはタッチパネル式に。利便性や誤操作防止の面で若干の不安もありますが、筆者の印象としては使い勝手はそれほど悪くありませんでした。

sbm-005

 

機能面では、英文をカメラで映すとリアルタイムに日本語変換を行ってくれる「翻訳ファインダー」の搭載や、画面上に自由に配置してマルチタスクで閲覧ができるフルセグの搭載などが面白い特徴となっています。

翻訳ファインダーはカメラに映し出された英文を撮影保存することなく日本語翻訳してくれるもので、カメラが認識できる範囲内であればどれだけの長文であっても翻訳可能とのこと。また英文を撮影することで原文と日本語翻訳文の2種類が保存され、さらに英文画像では英単語を辞書やウェブの検索エンジンなどで調べることもできるようになっています。

 

フルセグはもはやハイエンドスマートフォンでもおなじみとなりつつある機能の1つとなっていますが、本機ではその視聴アプリにも一工夫がなされており、より使いやすくエンターテインメント性の強いものに仕上げています。

本体を横持ちにして全画面表示で楽しむことができるのは当然ですが、縦持ちした場合などにフルセグの画面をウィンドウ化することができ、画面内に自由に配置することができます。またこの時ウィンドウ化されたフルセグのバックグラウンドでは別のアプリを起動することが可能で、フルセグを視聴しながらウェブブラウジングを行うといった使い方もできます。

PCなどでは複数のアプリを同時起動して画面上にウィンドウ配置し、利用することは当たり前ですが、これをスマートフォンで実現しているのは非常に珍しく画期的です。こういった使い方に便利さを感じられるのも、5.2インチ・フルHDという大画面&広い表示領域だからこそでしょう。

 

ハイエンド端末だけありスペック面での妥協は一切なく、2.2GHz駆動のクアッドコアCPUや32GBの内蔵ストレージ、F1.9と明るいレンズを採用した約1630万画素のカメラなどを、薄さ9.9mmの筐体に収めているところに、技術の進歩と成熟を感じます。

本機の詳しいスペックについては、こちらの記事をご参照ください。

ARROWS A 301F

2機種目にご紹介するのは、富士通製のスマートフォン「ARROWS A 301F」です。ハイスペックながらもデザイン面にこだわった端末で、男性でも女性でも使いやすいラウンドフォルムを採用しているのが特徴的です。

sbm-006

 

本機の最大の特徴は圧倒的な急速充電性能。バッテリー残量警告が出るバッテリー残量15%の状態から、約10分の充電で1日(16時間)利用できるだけの充電が可能としています。

この急速充電を行うには専用の急速充電用ACアダプタを使用する必要があり、2.6Aと非常に高い電流量で充電を行うことで実現しています。急速充電は付属の卓上ホルダーのほか、microUSBからも対応しており、シーンを選ばず利用できるのも便利です。

満充電時には最大3日間の利用が可能としていますが、これらの「○日間利用可能」という表記には実利用との計測方法の乖離などもあり、信用できる数値なのか若干疑問が残るところではあります。

 

富士通製のケータイおよびスマートフォンと言えば指紋認証センサーの搭載が売りの1つですが、本機にもその機能は健在。今回は本体の丸いデザインに合わせ、センサー形状も四角から丸に変更されています。

sbm-007

 

若干残念なのは、長く指紋認証センサーを採用し続けている富士通でも、端末のセキュリティ機能以外にはあまりこのセンサーが活用されていないことです。

例えば先日発売されたアップル製の「iPhone 5s」にも指紋認証センサーが採用されて話題となりましたが、iPhone 5sでは指紋認証を使ったApp Storeなどの決済が可能となっており、パスワードの入力などが不要となっています。

しかし本機ではGoogle Playなどでの決済に指紋認証を利用することができず、未だに端末のロック解除などにその用途が限られています。説明員によれば、今後はGoogle Playなどでの決済にも使えるように努力していきたいとのことでしたが、アップルのように自社でエコシステムから端末までを一括管理・運用している企業との違いがはっきり出た形となりました。

 

その他スペック面では、5インチのフルHD液晶、2.2GHz駆動のクアッドコアCPU、64GBの大容量内蔵ストレージ、フルセグの搭載など、ハイエンドと呼ぶに相応しい性能。ただしフルセグの視聴では同梱されるフルセグ用アンテナ兼用イヤホンケーブルの利用が必須となっており、不便さを残してしまったのが少々残念です(ワンセグ視聴では、電波状態がよければ外付けケーブルは不要とのこと)。

sbm-008

Hybrid 4G LTEはソフトバンクの戦略転換の象徴か

日本の携帯電話市場は世界的に見ても非常に特殊であり、ことスマートフォンに関してはiPhoneが市場シェアのトップをひた走り、Android勢が2位以下で泥沼のシェア争いをしているという構図を持っています。

こういった構図を生み出したきっかけとなったのがソフトバンクによるiPhoneの優先的な販売戦略にあったことは誰もが認めるところでありますが、そのソフトバンクがこれまでiPhoneなどにしか活用してこなかったFDD-LTE方式のSoftBank 4G LTE網をAndroidスマートフォンに展開してきたことには、大きな意味があるように筆者は感じます。

穿った見方をしてしまえば、同社にとってAndroid端末市場はSoftBank 4G LTE網のトラフィックを圧迫するほどの市場規模ではないとも読み取れますが、ユーザー視点で考えた場合、より広くより安定した通信が行えるという意味でHybrid 4G LTEを搭載した機種を選択することには大きなメリットがあります。

これまで「iPhone一辺倒」とまで言われてきた同社の経営戦略ですが、十分なユーザー数と十分な通信品質を手に入れた今、顧客満足度の向上に向けて新たな戦略を敷いている最中なのかもしれません。

sbm-009

[ソフトバンク]

ソーシャルシェア

このニュースでディスカッション
  • コメントを投稿する際には「コメントガイドライン」を必ずご覧ください
  • コメントを投稿した際には、コメント機能利用規約(ガイドライン)に同意したものとみなされます
  • 主要ニュースサイトなどの「許可サイト」以外のURLを含む投稿はコメントが保留されます