いよいよAndroidの独占状態になってきたスマートフォン市場。今回のコラムは非常に長いので、3行でまとめました。

  • AndroidとWindows Phoneの低価格スマホが伸びる。これからも安泰か。
  • iOSはシェア落とすも高利益、きっと大丈夫。
  • 「その他のOS」はもはや勝ち目がなくなりつつある。ちょっと遅すぎた。

現況

米国の市場調査会社IDCは、2013年第3四半期(6~9月)におけるスマートフォンの出荷台数シェアの調査結果を公表しました。それによれば、スマートフォンの総出荷量は約2億6110万台と、前年同期比+39.9%の驚異的な伸びを記録しています。

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Credit:IDC

中でも成長著しいのがAndroidで、たった3か月で、実に約2億1000万台のAndroidスマートフォンが世に送り出されました。これは全体の81%を占める驚くべき数字になります。

一方の2位・iOS(iPhone)は3380万台となり、単一メーカーでは恐ろしい数ではありますが、OS別シェアとしてみると12.9%に止まっています。台数としては前年比で25.6%伸びたのですが、上述したようにスマートフォン市場全体が約4割も拡大したため、割合としては前年よりも小さくなりました。iPhoneは秋の新製品発表やクリスマス商戦と重なる10~12月によく売れる一方、6~9月は買い控えが起こるため、この時期のシェアにおいては首位Androidとの差がより顕著にみられます。

そんな中、ここに来て一気にシェアを伸ばし、第3位の座をほぼ手中に収めたのはWindows Phone、この3か月間で950万台を出荷するに至りました(全体の3.6%)。ノキアのLumiaシリーズが特に欧州で人気を得、例えばイタリアではiOSを抜き販売シェア2位に躍り出たことは先日お伝えした通りです。今回の調査でもノキアが同OS端末の93.6%を占め、Lumiaの成功がWindows Phoneの成長を牽引してることがわかります。

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元祖スマートフォン・BlackBerryはここに来て失速。販売台数を4割減らし、そのシェアはわずか1.7%にまで落ち込みました。多様なアプリ・タッチインターフェースで他社に先行され、もう追いつけないところまで引き離されてしまった印象があります。最新OS・BlackBerry 10も消費者の気持ちを引き付けるには至りませんでした。価格・機能・話題性のどれをとってもパッとしないBlackBerry、今後も厳しい戦いを強いられると思われます。

また、Firefox OSやSymbianなど、「その他OS」を搭載するスマートフォンは前年の5分の1ほどに減少しました。主にSymbian端末の生産終了による販売減が響いていると思われます。シェアは全体の0.6%と、上位のOSの競合にもならないほど。

そもそもFirefox OSはまだ数機種を途上国を中心に展開しているのみで、年内の機種登場が計画されていたTizenに至っては1機種も発売できていません(来年以降発売予定)。

低価格帯のスマートフォンがシェア獲得の鍵 ―「その他のOS」に付け入るスキはあるか

今回大きくシェアを伸ばしたAndroidとWindows Phoneは、ともに低価格帯の機種がキーポイントとなっています。

 

             端末1台当たりの平均価格

上のグラフからもわかるように、iPhoneは飛びぬけて高価格で、ある程度のシェアを確保することで大きな利益を得ることができています。今秋にはハイエンドなiPhone 5sよりワンランク安いiPhone 5cが登場しましたが、特段低価格でもなく、この状況は今後も変わりません。

一方でAndroidおよびWindows Phoneは最新の端末平均価格が300ドルを切り、iPhoneの半額以下となっています。日本のような大幅割引制度がない諸外国では、この価格差は非常に有利に働くと考えられます。実際、Windows Phoneの牽引役Lumiaはローエンドの520や620が人気を博しており、低価格戦略が成功していると考えられます。

ところで、アプリストアの充実は市場シェアや収益の獲得に必要不可欠であると言われています。価格帯が同じならば、人々は様々なアプリが充実している端末(OS)を選ぶものです。

上に示した3つのOSはアプリストアが充実しており、AndroidやiOSは約100万本、Windows Phoneも16万本以上(6月時点)のアプリが公開されています。これらは盤石の体制を築いているといえます。

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それに対して、Firefox OSやTizenなど新興勢力は強力なアプリストアを有していません。Firefox OSはFirefox Marketplaceを開設していますが、まだまだこれからといったところです(Firefox Marketplaceは、実はAndroidでも使用できる。ますます優位性が見つからない)。

2012年10月には「Firefox OSの2013年のシェアは1%程度になる」との厳しい予測が別の米調査会社から発表されていました。しかし現実はもっと厳しく、「その他すべて」を合わせても予測に遠く及ばない成果(0.6%)しか残せていません。これら「その他のOS」は当初「低価格なスマートフォンの本命」とも期待されていましたが、Androidの低価格スマートフォンに市場を完全に喰われてしまい、入り込める場所がないように思います。

「新興OSが1年でシェアを奪えるわけがない」・「製品をまだ展開していない」とは言いますが、Androidは登場から2年でSymbian(それまでのシェア1位)を追い抜きましたし、製品展開の遅れは「いまだ勝算が見えない」ことを暗に意味しているのです。

とはいえ、新興国における低価格スマートフォン市場はまだ拓かれたばかりで、これから拡大するといった状況にあります。増え続ける需要にいち早く対応すれば、情勢はすぐに変わり、これら「その他のOS」が市場を制覇する可能性もないとはいえません。しかし筆者個人は、その可能性はほとんどないと見ています。

スマートフォン市場での勝者とは ―高利益のiOSと、低価格市場を開拓するAndroid・WP

年々拡大する世界のスマートフォン市場ですが、この中で「勝者」となるのはどのOSなのでしょうか。

収益の面では、今後もiOS(米アップル)が勝者であり続けると考えられます。iOSのシェアは年々減少しているとはいえ、販売台数を見れば毎年のように過去最高を記録しています。iPhoneは1台当たりの利益が非常に大きく、販売数の増加は利益の増加にそのままつながります。また、唯一のアプリストアであるApp Storeも含めて、サービス全体で収益を得るシステムをiOSは構築できているため、アップルはモバイル戦争を勝ち抜いていけると筆者は考えます。

シェアの面では、Androidの1強状態がますます強まることが予想されます。安価なローエンドから高機能なハイエンドまで、様々な機種が存在するAndroidは、先進国から新興国まであらゆる消費者のニーズを満たすことができています。また、Androidは消費者がGoogleのサービスを使うように上手くできているため、OS開発元の米グーグルは収益面でも「勝ち組」で居続けられると思われます。

また、今年に入って売上を伸ばしてきたWindows Phoneも、シェアを保つことができるだろうと筆者は予想しています。Windows Phoneは他のOSにはない独特のインターフェースを持っており、コモディティー化が進むスマートフォンの中でも独自の色を出すことに成功しています。さらに、ローエンド端末でも快適に動くため、新興市場にも対応していくことができると考えられます。

懸念材料として考えられるのは、現状ノキアのLumiaシリーズしか売れていないことです。熱狂的なファンを多く持つアップルですら1割強のシェアしか獲得できていないことを踏まえると、ノキア単独の力でWindows Phoneがこれ以上シェアを伸ばすのは大変なことだとわかります。HTCやサムスンなど、Windows Phoneを手掛けるメーカーの頑張りに期待したいと思います。

一方で「その他のOS」として期待される(された)Firefox OSやTizenなどは、非常に苦しい戦いを強いられるものとみられます。スマートフォンは製品としては既にほとんど完成された製品ジャンルとなっており、「その他のOS」が機能面で優位に立つのは難しくなっています。

さらに、Androidもバージョン4.4(KitKat)では低スペックな端末で動作するようになり、「その他のOS」は機能面でも軽快さ・価格の面でも太刀打ちできない状況になりつつあります。

これら「その他のOS」は出てくるのが1年遅かった、筆者はこのように思います。目まぐるしく変わるスマートフォンの世界において、開発の遅れはすなわち時代遅れを意味します。これらの陣営がのんびりしている間にAndroidが低価格帯のシェアを独占し、その隙間をWindows Phoneが埋めるという構図が完成しつつあります。

今のスマートフォンの後追いではなく、全く異なるアプローチを採るほうが新興国市場の需要を掴めるのではないかと思います。

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