WWDC 2014ではどのような機能が実現するか

初期のiOS(iPhone)でそうであったように、iOS in the Homeは概ね二段階に分けてリリースされるとみられる。iPhoneが初期には公式アプリのみの対応で、iPhone 3Gから一般開発者向けに解放されたのと同じように。とはいえ、今回の区分は「レイヤー」の違いにある。

つまるところ、家電制御に深く結びつく部分までアップルがコントロールするか否かという事だ。より低層のレイヤー(制御部分)は今回のiOS in the Home Ver 1.0では扱われないものとみられる。精々、Wi-FiやBluetoothを用いて対応機器と通信する程度に限定される可能性が高い。

忘れてはいけないのがiBeaconで、こちらは今回のWWDC 2014を機に一気に過熱する市場だ。既に国内外のメーカーがiBeacon対応端末の準備を進めており、リリースする準備は整っている。磁石で机の陰に目立たずに設置でき、さらに、電池が1年以上保つといった優れものが多く、iBeaconに反応して様々な指令をiOS in the Homeを通じて発することが出来る。

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外出先からコントロールできるHueは日本のApple Storeでも販売中

例えば、iPhoneのGPS機能を使用して現在位置を割り出し、自宅までの帰宅時間を推定。iOS in the Homeに対応したサーモスタット(日本では電子温度計)が現在の室温、天気が現在の外気温情報を取得。帰宅時間と室温・外気温に応じて冷暖房をONにするタイミングを自動的に算出し、帰宅したときには快適な室温に保たれるといった事は現時点で十分に実現可能である。もちろん、玄関前におかれたiBeaconを通じて照明器具の明るさ(調光)を100%にするといった使い方も考えられるであろう。

制御にまで踏み込めるかがポイント

真に手腕を問われる時だ

真に手腕が問われる時だ

今回のWWDC 2014で低層レイヤーにまで食い込む可能性も否定できないが、一気に進めてしまうと白物家電業界から猛反発を喰らう可能性が高く、リスクがあるのだ。

サムスンは独自のホームオートメーション構想を展開したばかりであるし、日本企業も同様。囲い込みができ、リアルな行動情報を握ることができるプラットフォームを自社で構築すれば、広告やO2Oビジネスで膨大な利益を上げられることは言うまでも無い。したがって、白物家電という “武器” を持っていないアップルに対して援軍を送る必要など無いのである。

ところがユーザーの声というのは素直なもので、単なるON/OFF程度の機能のみをiOS in the Home Ver1.0で提供すると必ず不満の声が出てくる。「もっと細かな制御まで出来るようになって欲しい」といった具合だ。そこで、より低層のレイヤーにまで食い込むiOS in the Home Ver2.0を後から提供すれば、消費者はそれを待っていた!と言わんばかりに欲する。となると、自然とVer 2.0に対応していない白物家電・メーカーが「消費者の敵」のように見えてしまい、購入候補から外れることすらある。

ユーザーに1年間の我慢を強いることで市場の欲求を増大させ、メーカーは対応せざるを得ない状況になる。そうなれば、地域シェアが2位以下の白物家電メーカーの参入を待つだけだ。日本の場合は家電連合という強みがあるので他の地域と同様にならない可能性もあるが、そうなればハイアールAQUAは絶好のチャンスとなり、国内シェアを伸ばすキッカケになるかもしれない。

家電製品のファームウェアもiTunesで管理

ホームオートメーションに必要不可欠であるのがセキュリティ対策。既に10万を超えるスマート家電が踏み台にされているという報告も有るだけに、避けては通れない話題だ。

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この点においてはiOS in the Homeがゲートウェイの役割を果たし、さらにiTunesないしそれに準じたソフトウェアで家電製品のファームウェアまで一括管理することは容易に考えられる。

ユーザーはiPhoneのアプリを更新するように、家庭内の電化製品におけるファームウェアをボタン一つ(または自動)で更新できる。そういった仕組みをユーザー側に提供することは一つのメーカーでは負担が大きいが、アップルが旗振り役となって行えばそのプラットフォームを利用し易くなる。

家庭内でコアとなる製品は一体何か

iOS in the Homeで忘れてはならないのが、家屋に設置するコア端末だ。そのコア端末が全ての対応デバイスにおけるゲートウェイ的な役割を果たしてセキュリティ対策・ソフトウェア更新・制御&管理を行う。

必要な要件としては一般家庭において「常に通電していること」「画面出力機能を有する、または、直結していること」の2つ。もちろん、ネットワーク対応などは最低限のデフォルト機能である。

上記の要件を満たす製品は「テレビ」「テレビ接続型端末」の二種類であることは間違い無い。あるいはネットワーク越しに扱うことができる「AirMac Express」も考えられる。

今回のWWDC 2014で最も注目になるのは、このコア製品が発表されるか否かである。

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一般的にユーザーは「目に見える製品がないと革新性を理解できない」ことが一般的で、ソフトウェアやハードウェアに関する深い知識を備え、様々な情報収集をしない限り未来を想像することはできない。アプリの設定1つ分からないユーザーに対してiOS in the Homeの概念と未来を理解しろといっても無理なのである(馬鹿にしているわけではなく、ユーザーは多種多様。PCに強いユーザーもいれば、土木・草花に長けた人もいる。得意分野は人それぞれで、IT・ハイテクに強いユーザーがマジョリティーではないことを忘れてはならない)

仮に発表されるのであれば、iTV(アップル製テレビ)またはApple TVのChromecast版のようなものだ。いずれも発売までは半年近い空き時間があり、デザインやコンセプト自体もサンノゼ(アップル本社)で厳重に管理されたままであろう。したがって、初代iPhone発売時のようにリーク情報が発表会前に漏れることはないし、サプライヤー経由から暴露されることもない。

特に、iOS in the Homeの成功には多数のメーカーの参加が必要不可欠であり、ソフトウェア開発者の協力を仰ぐ必要もある。既にアップルと親和性の高い家電メーカーは共同で開発を進めているとみられるが、一般開発者が隙間を狙った “おもしろ・便利アプリ” を提供するには、それ相応の時間が必要なのだ。したがって「明日から発売」といった具合にすぐにiTVやApple TVをリリースする必要がない。まさにiPhoneの時と同じなのだ。

音楽が重要、だからBeatsが必要

ipod_silhouetteアップルがBeatsを買収したことは既報の通りであるが、その目的にはアップルと音楽業界における関係性の修復が必要不可欠であったとする見方が多い。Re/codeのインタビューにおいても音楽の重要性をティム・クックCEOが力説しており、アップルと音楽が再び強く結びつく必要がある。

そこにはタワレコの「NO MUSIC, NO LIFE」という言葉がぴったりだ。部屋毎に自分の好きな音楽がレコメンド再生され、音楽と共に生活する。廊下は無音であるが、iPhoneを持ったまま自室に近づくと自室のiBeaconに反応し、iOS in the Homeに対応するオーディオセット(いわゆるオーディオコンポ)から自然に楽曲が再生される。まさにドラマのBGM効果が現実世界で起きているかのように。

『白物家電を制御する』というと、どうしても野暮ったいイメージでHomeとRevolutionという水と油の関係が邪魔をしてしまう。しかし、それを音楽制御でも使えるという切り口でいけばオシャレに映ってしまうのが憎いところだ。そのためにも、サブスクリプション型の音楽配信は必須であるし、オーディオセットにIR送信機能(赤外線リモコン)まで搭載されている商品が登場すれば、iOS in the Homeに非対応の家電も遠隔操作できてしまう。

「iOS in the Homeがあれば音楽が自然に流れる」このキャッチコピーさえ使うことが出来れば良いのだ。

どうなる日本勢

以上のことは、OS X、iTunes、iOS、iPhone、Siri、iBeacon、CarPlayという着実な準備のもと実現できることである。

筆者はIPv6で電化製品一つひとつにグローバルIPアドレスを割り振ろうとしていた時代から、(主に松下の)ホームオートメーション構想に関するワークショップに参加していた。その頃の松下…パナソニックの構想は素晴らしいものであったし、今現在のHEMSに繋がる部分もあった。もちろん、今の構想も素晴らしいモノであるが、仮に世界的な規模で普及させることが出来るのかというと疑問視せざるを得ない。結局の所、緻密な計画と売り方といった点でまたもやお株を奪われてしまう気がしてならないのだ。

日本の家電は日本在住である限りとても使いやすいだけに、外国産家電の選択肢はそう多くは無い。iOS in the Homeに対する障壁が大きくなればなるほど、ユーザーは国産メーカー各社にイライラさせられることであろう。そうなると、国産ブランドに対する先進性といったイメージが極めて低下してしまい、黒物家電(AV機器)などで影響が出ることも考えられる。

ユビキタス時代というのも懐かしく聞こえるが、Web 2.0と同じくしてバズワード化したあとに密かに実現する流れが起きようとしている。

スマートフォンのプラットフォームをAndroidとiOSに奪われた時点で先が見えていたといえば確かであるが、あと2日後に迫るWWDC 2014を目の前に、大きな期待と妙な不安が錯綜してしまうところだ。