京大、水も油もをはじく”マシュマロ”を開発 ―物性両立のゲル材料は世界初

2013年9月6日 20:57 │Comments(42)

Written by dequal

京都大学・早瀬元氏らの研究グループは、水と油を両方とも弾く「マシュマロゲル」を開発しました。早瀬氏らは今年1月に、水を弾いて油分を吸収するマシュマロゲルを開発していますが、今回発表された材料は、「撥水」と「撥油」という二律背反にあるものを同時に達成した世界初の新素材です。

本研究成果は、独化学誌「Angewandte Chemie(国際版)」に掲載予定です。

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干しマシュマロゲル(図は中西研究室HPから引用)

「第一弾」のマシュマロゲル

先に発表されていたゲルの正体は、「多孔性物質」です。これは、物質の表面に無数の細かい孔が開いている もので、多くのガスや液体を吸着することから様々な用途に展開されています。しかし、そのほとんどが硬く、吸着したものを改めて取り出すことは容易ではありませんでした。

このマシュマロゲルは、その名の通り柔軟で、水を弾いて油を吸収できることが特長です。それだけでなく、ゲルが柔らかいため、スポンジのように吸着した油を絞って回収することもできます。

このゲルの原料は下図のようなケイ素(Si:シリコン)化合物を重合させた樹脂で、シリコン樹脂が持つ撥水性と、マシュマロ状にした際にできる多孔質によって超撥水性を発揮してしているものと考えられています。一方で、上図の通りケイ素の周りは多くの炭素が存在しているため、油と親和性があるというわけです。

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 マシュマロゲルの原料。”Me”の部分は、炭素(C)に水素(H)が3つついたメチル基。

2010年、英BP社はメキシコ湾で原油流出事故を起こしました。海洋に流れ出た原油の回収にかなりの時間が掛かってしまったことから、沿岸部の環境や生態系に大きな被害が出たことは予想するに難くありません。”第一弾” のマシュマロゲルでは、吸収と圧搾を繰り返すことで水分と油分を分離することができるため、このような事故の際にも有効に働くとのことです。

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メキシコ湾の事故により流出した原油。(図はTelegraphより引用)

今回開発されたマシュマロゲル

超撥水のコーティング剤は、車の塗装や家の外壁などにも使用されています。これは、雨水がコーティング部分にかかることで、自然に汚れが流れ落ちる「セルフクリーニング効果」を利用したものです。

しかし、水となじみやすい汚れは雨水などで流れてくれるのですが、油系の汚れは、一度付いてしまうとコーティングしていてもなかなか汚れが落ちにくいことがあります。もし、コーティング剤が撥油性を持っていれば、ほとんどの汚れに対応できることになります。

今回発表されたゲルは、”第一弾” ゲルが持つ撥水機能に加えて超撥油性が付与されています。開発の鍵は、”第一弾” ゲルの原料のケイ素化合物に化学修飾を施したこと。上図の b)に示されているように、「チオール-エン反応」でフッ素を導入したことで、撥油性を発現させることに成功しています(身近なものでは、フライパン表面のテフロンコーティングのようなものが近いです)。

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(図はAngewandte Chemie誌より引用)

下図aでは、”第一弾” ゲルと今回のゲルの違いが見て取れます。ビーカーの上層(ピンク色液体)が油で下層の透明部分が水なのですが、”第一弾” ゲル(図中 “MG1″)は油を吸収して沈んでいる一方、今回のゲル( 図中 “MG2” )は油を吸収しないため表面に浮いています。さらに、図cでは、今回開発されたマシュマロゲル・シートの上で水とが玉状になっており、撥水と撥油を同時に実現していることがわかります。

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(図はAngewandte Chemie誌より引用)

早瀬氏らは、このように原料に手を加えることで機能をチューニングできる点が、このマシュマロゲルのメリットの一つであると述べています。個人的には、このマシュマロゲルがフィルム化でき、それに透明性があれば、今後ヒットする素材の一つではないかと思っています。

[Angewandte Chemie誌][Mashmallowgel.com]

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