韓国サムスンが鳴物入り(!?)で投入した「スマートフォンとコンデジ」の境界を曖昧にするカメラ「Galaxy Camera」をレビューする。今回もEXPANSYS Japanさんから機種をお借りした。
外観と機能
箱から取り出して真っ先に感じるのが「ずっしりとした重み」だ。普通のスマートフォンを想像すると圧倒的な重さだし、昨今のコンデジと比較しても非常に重く感じる。それもそのはず。4.77インチ(1280×720)のディスプレイに21倍光学ズーム(23mm)を搭載。スマホとしてはあり得ないほどの豪華なレンズを積んでいるし、コンデジにはあり得ないほどのリッチなディスプレイと処理機構(SoC・通信)を搭載している。
テレ端にするとレンズの自重で前に下がってしまう
持った際のホールド感はお世辞にも良くなかった。というのも、基本的には4.77インチのスマートフォンにリッチなカメラを取り付けたというスタンスなので、本体がスクウェア形状になっている。左手の親指と人差し指で本体上下をつまむようにホールドしようにも、70.8mmという縦の大きさが足枷となってホールド感が足りない。右4本指を咬ませるグリップが存在しているが、それでも両手でカメラを支えた際に左手がやや持ちにくく感じるのだ。
ただ、大画面でのライブビュー撮影は圧巻だ。これを体験すると、多少の持ちにくさなど気にならなくなってしまう。その位のポテンシャルがある。一方で、カメラに慣れた人にとっては画面サイズが大きくなったことで、構図をチェックするために四隅に気を配るのが大変という印象を持つ人もいるかもしれない。
本体上部にはポップアップ式フラッシュ、電源ボタン、集音マイク、レリーズボタン、ズームスライダー。本体右側面にはステレオミニジャック、microUSB端子、ストラップホールを備える。
本体下部にはカメラらしく三脚用のネジ穴があり、バッテリー取り出し口とHDMI端子がある。HDMI端子はバッテリーカバーに隠れているのだが、別途専用のアクセスカバーがついており、使い勝手に配慮されている。バッテリーカバーを開けると、SIMスロットとmicroSDスロットが顔を出す。本体左側面にはスピーカーとフラッシュボタン。
ここまで列記するとまさに「コンデジ」といった感じだ。ところが、電源を入れるとまさに「スマホ」に変化するのだ。
そこにあったのは「スマートフォン」
電源ボタンを長押しすると「Galaxy」シリーズではおなじみの起動音が流れる。左上にあるホームボタンを押下すると、見慣れたAndroidのホーム画面になるのだ。ズームスライダーが音量キーも兼ねており「-」と「電源」を同時に押下することでスクリーンショットだって撮ることが出来る。
上の画像が初期状態のホーム画面なのだが、驚くことに「ブラウザ」がホームポジションに存在しない。これは何を意味しているかというと「サムスンとしてはあくまでも “進化したコンデジ” というスタンスでこのカメラを送り出したのではないか?」ということでる。スマホなら必要不可欠なブラウザアプリも、カメラならあくまでも予備といった具合である。
前述した際には「スマホにリッチなカメラ機能を付けた」と書いたが、どうやらサムスンは正反対の方向からアプローチをしているようだ。
かといってブラウジングが遅いとかいうことも全くない。それもそうだ。1.4GHz駆動の「Exynos 4412」を搭載しているのだから、ハイスペックスマートフォンに位置づけられてもなんらおかしくないほど。ガジェ速のコメントが大量に寄せられている記事をスクロールしても重くなることはないし、ピンチズーム操作も快適に行うことができる。タッチパネルの精度も非常によく、スマートフォン「Galaxyシリーズ」で鍛えられたものがそのまま反映されているかのようだ。
Google Palyにも対応しているので普通のスマホのように各種アプリをインストール可能である点も見逃せない。写真編集アプリや各種連携ソフトと併せて多彩な使い方ができることは想像に難しくない。
ここでスマートフォン記事に倣ってスペックのおさらい。
搭載OS | Android 4.1 |
ディスプレイ | 4.77インチ |
解像度 | 1280×720 |
CPU | 1.4GHz駆動 クアッドコア Exynos 4412 |
RAM | 1GB |
内蔵ストレージ | 8GB |
外部ストレージ | microSDHD 最大32GB |
背面カメラ | 1600万画素 21倍光学ズーム(23mm) |
対応ネットワーク | 3G回線 LTE対応モデルもアリ |
Wi-Fi | 802.11 a/b/g/n |
Bluetooth | Bluetooth 4.0 |
NFC | 未対応 |
バッテリー容量 | 1650mAh |
バッテリー取り外し可否 | 可能 |
サイズ | 128.7(H)×70.8(W)×19.1(T)mm |
重さ | 305g |
カメラの起動速度
電源ボタンを押下すると真っ先にカメラ機能が立ち上がる。撮影可能までの時間は実測で約1秒。純粋なコンデジと比較すると遅いレベルになるのかもしれないが、比較的速いからストレスを感じない。
レンズ駆動音は比較的静かで高周波の音というよりは落ち着いた低めの音がなる。パワーズームの駆動音も静かで「ッサー」といった感じの音がわずかになる程度。動画撮影時に駆動音が極力入り込まないように考慮されているようだった。
前述したようにカメラモードの際に左上にある「ホームボタン」を押すとスマートフォン側のメニューが表示されるのだが、レリーズボタン(シャッターボタン)かスマホの「カメラアイコン」を押下することでカメラモードに戻る。仕組み的にはカメラアプリがAndroid OSの上で動いているだけの話なので、当然といえば当然だ。
カメラの撮影モード(スマートモード編)
カメラの撮影モードは3種類。完全おまかせの「自動」。風景・マクロ・スポーツなど、環境に合わせて品質を変える「スマート」。絞り優先・シャッタースピード優先・プログラムオート・マニュアルなどが選べる「エキスパート」だ。
いわゆるシーン別撮影機能である「スマート」の選択画面
使う頻度が高いとおもわれる「スマート」は用意された撮影シーンが豊富で面白い。下記の表にまとめてみた。
アクション | 被写体の動きが速い場合 |
マクロ | 虫や草花、テキストなどを接写する場合 |
風景 | 緑と青を強調して、青空や草原を綺麗に魅せる |
ベストフェイス | 2人以上の人間が映り込む写真に有効で 5枚の連続写真を撮影し、各人が笑顔の写真を合成 |
連続撮影 | 毎秒4枚の連続撮影 |
ベストフォト | 連続撮影し、ベストな写り具合のものを選ぶ |
ビューディーフェイス | 人物写真を撮影し、顔を修正する |
ライトトレース | 夜に長時間露光することで流れる光の筋などを表現 |
花火 | 長時間露光で花火を綺麗に撮影 |
夜景 | 写真を合成し、暗い場所でも綺麗に撮影 |
夕焼け | 色を強調して夕焼けを引き立たせる |
シルエット | 逆光でシルエット撮影(人物が暗くなる)をする際に有効 |
滝 | 流れる滝の水を長時間露光で撮影 |
パノラマ | スイングパノラマ撮影 |
パノラマはスイングパノラマではあるが、よくあるスイングパノラマと若干違う。Microsoftが提供しているアプリ「Photosynth」を想像すると分かりやすいかもしれない。
仕組み的には、本体に内蔵されたジャイロやデジタルコンパスを使用して適切に合成しているようだ(推測)。試しに、スイング途中で極端に角度を変えてみたところ「上に向けて下さい」との警告がでた。このことからも、各種センサーを使って角度などを検知していることが推測できる。スマホを内包しているからこそできる芸当だ。
最近のコンデジではこのようなシーン別撮影が一般的ではあるが、「ベストフェイス」「ビューティーフェイス」などの合成系はもちろん、「風景」「夕焼け」といった色調補正を積極的に加えることで、撮った後の満足感を高める方向性を追求しているようだ。
ちなみに「ビューティーフェイス」機能は、顔のテカリを極力抑え、諧調を下げることでシワなどを目立たなくさせた上で、白目と黒目がよりハッキリと映るようになっている。唇はより鮮やかなピンクになるが、流石に顔の輪郭などは変更されていないように見受けられた。
カメラの撮影モード(エキスパート編)
このカメラで「エキスパート機能」を常用するのがイレギュラーなのかもしれないが、このサイトをご覧頂いている方はこの点が気になる方も多いと思われるので軽く触れておく。
ミラーレス一眼と違って各種設定に物理的なボタンが存在しないため、各数値の設定はタッチパネル操作で行う。設定幅については、ISO100~3200、EV±2(1/3ステップ)、絞り2.8~8.0(1/3ステップ)。
画面中央上部にある「現在の設置値」をタップすると設定を変更でき、仮想ダイヤル式で数値を上下して変更する方式だ。反応はまぁまぁといったところ。ここは本来もっと俊敏な反応にできると思われるので、あえて数値を選びやすくするために反応を鈍くしているのかもしれない。なお、各種設定を変化させるとライブビューでもその設定値が反映される(これが原因で反応が鈍い可能性もあるが)。
本格的に撮影のしやすさを求めるのであれば物理ボタンを持つミラーレス一眼を使ったほうが良いと思われるので、完全タッチ操作だからといってこの機種の評価を下げるのはナンセンスといえる。想定されるターゲット層はシーン撮影を使うユーザーで、時には上級者も露出を調整して撮影を楽しめるといった感じの端末だ。
とにかく共有することが醍醐味
Galaxy Cameraはとにかく共有することに尽きる。Dropboxに即座にアップロードできる仕組みが用意されており、撮影した写真をどんどんクラウド上に保存できるのが便利だ。
さらにGalaxy S3のTVCMなどでもおなじみの「周囲のGalaxyを使っている人に即座に画像を配布できる機能(共有ショット)」も備わっている。Wi-Fi Directを使って配信を行うので対応端末が必要ではあるが、『あとで写真を送って!』というお願いにも煩わしさを感じることなくどんどん “送り付ける” ことが可能だ。
もちろん、Google Play対応なので外部のサービスとも親和性が高い。デフォルトでInstagramがインストールされており、撮った画像にフィルタを施して共有できるし、Twitterに流すことだってできる。
Galaxy Cameraで撮影 : AWB
「写真を撮って残す」という目的よりも「写真を使ってどうするか」という目的の方が大半を占めるようになった昨今、コンデジとスマートフォンの曖昧さを狙った端末が今後どのような発展を遂げるのか見守りたい。
さて、肝心の画質については次回お届けする。というのも、本日25日から管理人はライターさんの面談で中欧「ハンガリー」と「フランス」に渡航する予定だ。EXPANSYS Japanさんの許可を得たので、渡航先でGalaxy Cameraを使いながら画質などをお届けする。
機材提供(貸与):EXPANSYS Japan
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