Yahoo!JAPANは13日、同社が提供するクラウドストレージサービス「Yahoo!ボックス」のMac用アプリケーションの提供を開始しました。
Yahoo!ボックスは2011年10月にWindows版やケータイ版の提供とともにスタートしたサービスです。5GBまでは無料で利用でき、50GBプランと1000GBプランが提供予定となっています。
今回は他のクラウドストレージサービスとの比較も交えながら、提供されたMac用Yahoo!ボックスのレビューをお届けします。
クラウドストレージサービスとは?
「クラウド」という言葉を耳にされる方も多いと思いますが、そもそもクラウドストレージサービスとは一体どんなサービスなのでしょうか?
例えばパソコンで作成した文書ファイルをスマートフォン上でも確認したくなったとします。従来の内蔵ストレージに保存する形式であればファイルの保存場所はパソコンなので、当然スマートフォンでは見られません。宅内LANやUSBメモリなどでファイルを交換する必要がありました。
しかし、クラウドストレージサービスを使うとスマートフォン上でも見ることができます。
これはファイルの保存場所をパソコンの内部ストレージではなく、インターネットでアクセスできるサーバーに保存するためです。ファイルを保存しているサーバーにアクセスできる機器なら、(動作保証の有無はありますが)どの端末からでもファイルを見ることができるのです。
その他のサービスとの比較
Yahoo!ボックス以外にも数多くのクラウドストレージサービスが提供されています。私が使用しているのはDropbox、Skydrive、Box、GoogleドライブとYahoo!ボックスの5つになりますが、ここではこの5つの比較をしたいと思います。
なおビジネス向けのプランを提供しているサービスもありますが、ここでは一般ユーザー向けのプランで比較します。
Dropbox | Skydrive | Box | Googleドライブ | Yahoo!ボックス | |
基本容量 | 2GB | 7GB | 5GB | 5GB | 5GB |
追加容量/価格 | 100GB 月額$9.99 年額$99.00 200GB 500GB |
20GB 年額¥800 50GB 100GB |
25GB 月額$10.00 50GB |
25GB 月額$2.49 100GB 月額$4.99 200GB 月額$9.99 400GB 月額$19.99 1TB 月額$49.99 2TB 月額$99.99 4TB 月額$199.99 8TB 月額$399.99 16TB 月額$799.99 |
50GB 月額¥399 ※ |
1ファイルの最大サイズ | 無し | 2GB | 250MB(無料プラン) 1GB(有料プラン) | 10GB | 無し |
対応サービス | Windows、Mac Linux、iOS Android、BlackBerry | Windows、Mac iOS、Android Windows Phone | Windows、Mac iOS、Android BlackBerry Windows Phone | Windows、Mac Chrome OS iOS、Android | Windows、Mac iOS、Android |
備考 | 招待機能を利用すると無料で最大18GB利用可能 | MS Office2013と連携 | 無料で50GBプランにできるキャンペーンあり | Googleのサービスと連携 共同編集やファイルにコメントを入れられる 有料プランでGmailの容量が25GBに | ※ Yahoo!プレミアム会員の料金 Yahoo!BB会員は無料 |
どのサービスも一長一短であり、どれが一番使いやすいと断言することはできません。DropboxはHTCとキャンペーンを組むといったことや、Boxも50GBが無料で入手できるキャンペーンを行っていたことがあるので、キャンペーンで容量を増やせるサービスを利用するのも選択肢の1つでしょう。
また、クラウドストレージサービス以外のサービスが提供されているとサービス間の連携機能が便利です。最近ではMicrosoft Office2013にWindowsLiveアカウントでログインすることで、Skydriveに作成したファイルを保存できるようになりました。Googleドライブは保存したファイルを簡単にGoogle+に投稿できます。Dropboxは先日、同期用のAPIを公開しました。アプリ間の同期に使われることの多かったDropboxですが、この傾向は一層強まりそうです。
さて、今回の主役であるYahoo!ボックスの強みですが、追加容量の価格にあると思います。Yahoo!プレミアム会員とYahoo!BB会員は追加料金を支払うことなく50GBが利用できます。Yahoo!プレミアムのサービスも利用できる上に50GB使えるのは十分メリットになるのではないでしょうか。
現在は50GBが提供されている最大の容量ですが、今後プレミアム会員のみ300円追加で支払うことで1TB(公式では1000GBと表記)のプランを提供する予定となっています。年額で計算しても9588円と、他のサービスを圧倒するコストパフォーマンスなだけに早期の提供が期待されます。
Mac版は珍しい提供形式
次に今回提供されたMac版を見ていきましょう。対応しているのはMac OS X 10.6以降です。
他のクラウドストレージサービスは「Finder」を拡張する形で提供されていますが、Yahoo!ボックスは単体のアプリケーションとして提供されました。
インターフェースはFinderと似ており、操作に困ることはありません。表示形式はCover Flow以外Finderと同じになっているので、左上の「表示」から好みの表示形式に切り替えることができます。この表示形式はアプリケーションを終了させても前回選択したものが記憶されます。Finderでは表示オプションの変更が必要なことを考えると、こちらの方が親切な設計だと言えます。
このMac版はフォルダやファイルにアクセスしたときに通信が発生します。つまりパソコン側の容量を大幅に減らすことはありません。アクセスするファイルの大きさや通信環境にもよりますが、無駄な通信が発生しない点や容量の心配が不要なのは大きなメリットではないでしょうか。
ファイルを開くときのアプリケーションは固定されており、画像やPDFはプレビューで立ち上がります。またスライドショーの機能もないためビューアのような使い方には向きません。Quick Lookのような機能の実装は難しいと思いますが、せめてスライドショーは対応して欲しいところです。
表示のサイズはスライドバーで変更できます。Macはピンチイン・アウトによるジェスチャーが定番なので、ジェスチャーによる拡大・縮小にも対応して欲しいところです。
左は最大サイズで表示したところです。Cover Flowはありませんが、これだけ大きく表示できれば代用になりそうです。右は最小サイズですが、サムネイルがかろうじてわかる程度でファイル名は何の役にも立っていません。ファイル名を非表示にしてサムネイルをもう少し大きく表示できれば、画像が多くなったときに便利かもしれません。
環境設定からは現在使用中の容量や空き容量だけでなく、ゴミ箱の容量も確認できます。Finderに拡張するタイプのサービスではここまで細かく表示されませんが、容量の管理はYahoo!ボックスの方が断然楽です。ゴミ箱をこの画面で空にできるのも利便性が高いと感じました。
しかしアプリケーション左下の「ゴミ箱」を選択してもゴミ箱を開くことはできず、ブラウザが立ち上がってしまいます。不要なファイルではありますが、いちいちブラウザからログインしなければならないのは手間になります。フォルダを開くタイミングで通信する仕様であればアプリケーション内で開けてもいいような気がします。
キャッシュでは保存場所の変更などができます。SSD+HDDの構成にされている方はHDDを指定することで、SSDの容量がひっ迫する心配がなくなります。外付けのHDDも選択できたので、環境に合わせて柔軟に使えるのは好感が持てます。
フォルダを一通り開いてみたところ、キャッシュファイルは約29MBでした。次に65MBの自炊した漫画1冊分のフォルダを開いたところ、キャッシュファイルは約10MB増加しました。ファイルやフォルダの数が多かったり、大きなファイルを保存されている方は空き容量の大きいディスクを指定しておくと、後々面倒がなさそうです。
またキーボードショートカットが使えるのも単体アプリケーションとして提供するメリットです。コピーや削除はFinderでもできますが、公開URLの発行やお気に入りの設定といったサービス独自のものはFinderと統合するタイプでは使えない機能です。
2013/02/17 17:01 GMT+9
上記打消し文章部分は誤りで、FinderのDropbox内のファイルに対して右クリック(サブメニュー)を表示させることで「共有リンク(いわゆる公開URL)や過去のバージョン表示が可能です。お詫び致しますと共に訂正させて頂きます。
アップロード時は専用のウィンドウが立ち上がり、ファイル名やアップロード先、ファイルサイズ、アップロードの進捗を表示できます。ここからアップロード先を変更できますが、サイズの小さいファイルはアップロード先を変更する間もなくアップロードが完了するので、ファイルの追加をする前にあらかじめフォルダを選択しておいた方が良さそうです。
通知機能もFinder統合型より凝っています。左の画像はファイルをゴミ箱に移すときの注意ですが、共有設定をしている場合や公開URLを利用している場合の影響についての記述があります。動作としては当たり前かもしれませんが、誰もが皆こういったサービスにあかるいわけではないので初心者でも安心して使える設計だと思います。
一つ残念なのはバックグラウンドでの動作に対応していない点です。アプリケーションを閉じる際に右のような注意が表示されます。ダウンロードやアップロード中はcmd+wでウィンドウを閉じるしかありません。特にダウンロードは中断状態から再開することができないので、大きなファイルを扱う際は要注意です。
プレミアム会員はもちろん、一般ユーザーにもおすすめ
以上でMac版のレビューは終わりになります。最後にバグに触れてから改めて使用した感想を述べてこの記事を締めくくりたいと思います。
まずバグの方です。
公式サイトで案内されているバグは以上の4つでした。まず3番目のフォルダー作成のバグを検証したところ、入力できないばかりかアプリケーションが強制終了してしまいました。
1番目のフォルダコピーはコピー開始直後にアプリケーションを終了させてみましたが、すんなりコピーが成功してしまいました。容量の大きなファイルが入っていなかったのが原因だと思いますが、再現性はそう高くはないのではないかと思います。
2番目と4番目は環境の再現ができなかったので検証はできませんでした。利用される場合は注意が必要です。
次に感想ですが、使ってみて想像以上に快適だったのが意外でした。
iOS版のYahoo!ボックスは快適とは言えない状況だった上に、サービス開始から1年以上経過しているのでユーザーの要望で仕方なく提供を始めたような印象を受けてしまいましたが、iOS版とは全く別物と言っても良さそうです。
Yahoo!プレミアム会員の方は追加料金なしで50GBが使えるのでもちろんおすすめですが、プレミアム会員でない方でもディスク容量を節約したい方やMacBook Airなどをテザリングで使っている方にもオススメできます。多くのクラウドストレージサービスはパソコンが立ち上がると同時に同期を始めるので、追加したファイルが多いと通信量が増えてしまいます。テザリングはほとんどの場合通信量で制限がかかる仕組みになっているので、不要な通信は避けたいところです。
同期するフォルダを選択できるサービスもありますが、同期専用のフォルダを作って管理するなりしないといけません。画像や書類などとは別に同期したいものをフォルダに移すのは、利用後のファイルを元のフォルダに戻すなどの後処理が必要になり効率的とは言えません。
その点、必要なファイルのみダウンロードするYahoo!ボックスは他のサービスほど通信しないので、必要なときに必要なファイルのみを選択できます。
Macお使いの方はかなり待たされたと思いますが、最初のリリースとしては十分安定しており重要な機能は揃っているので待った甲斐があるアプリケーションになっています。
クラウドサービスもブラウザなどと同じように熾烈な競争が続いていますが、一般ユーザー向けの日本製サービスはあまり多くありません。その中でYahoo!JAPANがクラウドストレージサービスを提供する意義は大きいと感じます。
今後も日本のサービスとして使いやすさ、わかりやすさを削ぐことなくアップデートを重ねていってもらえると、いちユーザーとしても、またご紹介した身としても嬉しく思います。
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