KDDIは20日、都内にてauブランドにおける2013年夏の新製品および新サービスの発表会を行いました。会場には同社CMでお馴染みの剛力彩芽さんほか、新たにCM出演をされるきゃりーぱみゅぱみゅさんなども登壇し、田中社長のプレゼンによってauの今後の戦略などが語られました。
この夏にauが掲げるサービスコンセプトは「あたらしい自由」。これまで「スマートフォンが欲しい」というセグメントであったのに対し、これからは「スマートフォンで何をしたいか」という時代と捉え、これまでに展開してきた「auスマートパス」のさらなる拡充や、24時間体制のサポートとスマートフォンをお試しレンタルすることができるなどのサービスを持つ「auスマートサポート」を開始させるなど、よりユーザーニーズに即したサービス体制を整えていくと述べました。
端末においては今回発表されたものはスマートフォン4機種となっており、ドコモ、ソフトバンクなどと比べると機種数も少なく勢いに欠ける雰囲気がありましたが、それぞれに訴求すべき対象がきっちりと分けられており、適材適所で端末を用意したというイメージです。
まずハイエンド端末としてHTCの「HTC J One HTL22」とソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia UL SOL22」をラインナップし、スマートフォンへエンターテインメント性を求める層や、いわゆる「全部入り」を求める層へ訴求。
さらにシャープの「AQUOS PHONE SERIE SHL22」や京セラの「URBANO L01」では大容量バッテリーと高い省電力性能などで、スマートフォンを長く楽しみたいというニーズに合わせてきました。
これら各種の機能について、端末ごとにポイントをチェックしていきたいと思います。
HTC「HTC J One HTL22」
ハイエンド端末の一翼を担い、事実上今回の発表会での目玉端末として注目されていたのが「HTC J One HTL22」です。6月上旬以降の発売を予定しています。
HTCは、古くはWindows Mobileの時代からスマートフォン市場を牽引してきた老舗であり、独自UIの実装や如何に端末を使いやすくカスタマイズするかという点において、他社の一歩先を行くノウハウを持った企業です。
本機でも同社らしい姿勢は前面に現れており、新たなUI「HTC BlinkFeed」の導入によって、ホーム画面に配置されたTwitterやFacebook、そのほかニュースや天気情報などがリアルタイムに更新されるようになっています。これはauが「INFOBAR A02」で採用した「iida UI 2.0」にも発想が似ており、KDDIとしてのユーザーニーズへの応え方の現れのようにも感じます。
端末性能の点ではハイエンドに相応しく、4.7インチのフルHD(1920×1080px)液晶や1.7GHz駆動のクアッドコアCPUを備えているほか、面白い機能として正面の上下に配置された2つのスピーカーがあります。
HTCが「デュアルフロントスピーカー」と呼んでいるもので、通常のスマートフォンでは背面に配置されるスピーカーを敢えて正面に、しかも2つ備えることで、端末を横画面にして使用した場合に、音声がステレオで再生される工夫がされています。
音に対するこだわりはアンプやDSPチップにも現れており、よりクリアで高音質なサウンドを提供する「Beats Audio」ブランドの名前を冠しているのも自信の証だと言えます。
カメラに対するアプローチも本機を特徴付ける大きなポイントです。
昨今のスマートフォンでは1300万画素クラスのカメラを導入するのがトレンドであり、カメラ(撮像素子)の高画素化は止まるところを知りませんが、その流れに逆行するかのように、本機にはわずか400万画素の撮像素子がメインの背面カメラとして採用されています。
なぜあえて低画素数の撮像素子を採用したのか。答えは高感度化と低ノイズ化であり、一般的な1300万画素のカメラと比較し、撮像素子の画素面積は約3倍になり、感度では約300%の向上、ノイズでは約50%の低減に成功したとしています。
同社が「HTC UltraPixel Camera」と名付けたこのカメラ機能により、より暗部に強く手ブレを起こしにくい、非常に高品質な写真を撮ることが可能になりました。必要以上に画素数を求めるのではなく、必要十分に抑えて品質を上げるという手法は、今後のスマートフォンのカメラ機能の在り方へ一石を投じることになるかもしれません。
カメラ機能に関しては、さらに「HTC Zoe」として、さまざまなレタッチ機能を搭載。人の表情を選択してより美しく加工したり、画面内に写り込んでしまった余計な人物などを取り除くなど、PCなどを必要とせず端末のみで簡単にレタッチが行えます。
ハイスペックをただハイスペックとして売るのではなく、ユーザーにその高性能の使い方まで提案してくれている点については、他社端末よりも一歩進んでいる印象を受けました。
また本機の周辺機器として、小型ディスプレイを持ったBluetoothによる通話端末が用意されている事も特徴的です。
スマートフォンが大型化し、片手で扱いづらくなってきたこともあり、スマートフォンへさらに通話用の小さな子機を繋げて使うという発想から生まれたもので、スマートフォンが電話機としてではなく、小型タブレット的な存在になりつつある傾向がうかがえます。
この子機では通話のほか、メールやスケジュールの確認、音楽プレイヤーの操作などが行えます(メールの入力はできません)。価格は9800円で別売りになるとのことですが、スマートフォンにあえて子機を使うというアイデアがユーザーに浸透するのか非常に気になるところです。
このほかにもスタンドになるカバーケースや汎用モバイルバッテリーを用意するなど、HTCの積極的なアクセサリー展開も発表会では大きくアピールされていました。周辺機器のラインナップやアピールからも、同社が本機に大きな期待と自信を持っているように感じられました。
ソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia UL SOL22」
2013年夏モデルのもう1つのハイエンド端末として用意されたのが、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia UL SOL22」です。発売は5月25日を予定しています。
本機は同社のXperiaブランドを引き継ぐ正統派ハイエンド端末であり、5インチ・フルHD(1920×1080px)液晶に1.5GHz駆動のクアッドコアCPU、約1310万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor RS for mobile」、IPX5、IPX8に対応した防水性能、IP5Xに対応した防塵性能など、十分に納得して使いこなせる性能を有しています。
デザインコンセプト的にはドコモが春モデルとして発売した「Xperia Z SO-02E」を継承しているとのことでしたが、背面に持ちやすいアール(曲面)が設けられていたり、サイドが直角ではなくわずかに傾斜しているなど、実際に触ってみるとSO-02Eとはかなり異なった印象を受けました。
端末としてはかなり大型で、横幅71mmの筐体は今回発表された4機種の中では最も大きく、片手で持った時に「大きいな」と実感するほど。ただ背面に丸みを持たせているため、大きさの割にはあまり持ちづらい印象はありませんでした。
機能面ではドコモから夏モデルとして発売された「Xperia A SO-04E」と同様、サイドに設置されたカメラボタンでスリープ状態からカメラを即起動することができ、カメラ機能の使い易さをアピール。連写機能も秒間15枚・無制限という性能を持っており、描写性能が売りのExmor RS for mobileセンサーを活かしたチューニングがなされています。
本体塗装にもこだわりがあり、ホワイトとピンクは僅かにパールが入ったクリア塗装が施され、ブラックには指紋が目立たないマット塗装がなされています。ブラックやブルーなどの濃い色の場合、クリア塗装では指紋がとても目立ちますが、こういった部分での配慮はとても好印象です。
このほか、機能的に面白いと感じた点ではシンプル系UIへの切り替えが可能な点です。
大手キャリア各社がスマートフォンを前面に押し出した販売戦略を打ち出し、従来のフィーチャーフォンに選択肢が少なくなってきた今、スマートフォンへの機種変更や新規契約を余儀なくされるケースも少なからずあり、そういった層からはスマートフォンの使い方が分からないといった問い合わせや不満が増えてきているのも事実です。
そうした声に応えるため、より端末を簡単に扱えるようなシンプル系のUIを搭載している端末がいくつかあり、本機もそういった端末の1つです。
本機に搭載されたシンプル系UIは「シンプルホーム」と名付けられており、ホーム画面上からアプリを起動すると瞬時にUIが切り替わります。シンプルホームではフィーチャーフォンのような各種機能へのショートカットアイコンがマス目状に配置されるほか、シニア向けのフィーチャーフォンなどでお馴染みとなっている短縮ダイヤルのアイコンが画面下部に並びます。
こういったシンプル系UIの導入には、スマートフォンのコモディティ化とは別に、時代のトレンドとしての端末のあり方のようなものを感じます。
あえてシンプルUIを導入してまでスマートフォンを使うべきなのかという議論もありますが、シニア向け専用の機種を用意するのではなく、専用UIを導入することで機種数を増やすことなく対応させていくという発想は、悪くない方向性だとも感じました。
シャープ「AQUOS PHONE SERIE SHL22」
大手3キャリア全てに端末を供給しているメーカーとして、シャープの存在は欠かすことは出来ないでしょう。au向けにもAQUOS PHONEシリーズを展開しており、今夏のモデルでは3080mAhという大容量のバッテリーを搭載したロングライフを売りにした端末を投入してきました。7月下旬以降の発売を予定しています。
カラーバリエーションにはブルー、ホワイト、ブラックを用意し、主に端末をビジネスや遊びでフルに使い倒したいという20代~30代の男性をターゲットとしています。
液晶ディスプレイにはフルHD(1920×1080px)ではなくHD(1280×720px)の解像度を採用していますが、ディスプレイサイズは4.9インチと妥協がありません。敢えて処理に負担が掛かりバッテリー消費を大きくするフルHD画面を用いず、HDに抑えつつも大画面化してきた点は他機種との大きな差別化になっています。
また液晶には同社自慢の低消費電力ディスプレイ「IGZO液晶」を採用しており、ここでも省電力化に貢献。様々な省電力技術と大容量バッテリーによって、公称値では3日間の連続駆動が可能となっています。
端末デザインの面では、横幅70mmと大柄なボディを持ちやすくするために、液晶面とサイドベゼルに段差をつけた「Two Layer Design」を採用、さらにベゼルの厚みを薄くして背面に掛けて丸みを持たせることで、ボディサイズの大きさを感じさせない持ちやすさも実現。大画面端末につきものの扱いづらさを可能な限り軽減する努力が感じられます。
UIでは同社端末でお馴染みの「Feel UX」を採用、AQUOS PHONEシリーズを使っている人はすぐに馴染める仕様になっているほか、スマートフォン初心者向けのシンプル系UIである「シンプルモード」も搭載し、10代前半の若年層やシニア世代でも使いやすい工夫がなされています。
使いやすさの点では画面全体がスピーカーとして機能する「ダイレクトウェーブレシーバー」を搭載し、街中の騒音の中などでも音が聞きやすいほか、2つのマイクを搭載し信号処理によって周囲の音だけを軽減、賑やかな場所などでも相手に聞き取りやすい音声を届けられるなど、細やかな作り込みが光ります。
そのほか、約1310万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用したカメラによる高品質な写真撮影や、Dolby Mobile v3を採用しバーチャル5.1chサラウンドに対応したオーディオ性能、aptXに対応した高音質なBluetoothによる音楽聴取など、快適さを追及した仕様にも注目。エンターテインメントを長時間楽しめる端末としても人気が出そうです。
京セラ「URBANO L01」
京セラは同社のカジュアル層向けのスマートフォンブランド「DIGNO」シリーズではなく、高品位な質感や大人の感覚を取り込んだ「URBANO(アルバーノ)」シリーズをラインナップしてきました。6月下旬以降の発売を予定しています。
本機はターゲット層を30代から40代の男女としており、比較的落ち着いたデザインと質感にこだわった端末を求める層に訴求。背面カメラまわりに削り出しのメタルプレートを配置したり、ホームボタンなどをメタリックな物理キーとすることでアクセントを付け、他社端末との差別化を図っています。
他社端末と最も異なった特徴と言えばやはりホームボタンやメニューボタンなどで、他社が静電容量式のタッチパネルや液晶ディスプレイ内のオンスクリーンキーを採用する中で、唯一ハードウェアキーを配置しています。
ハードウェアキーの利点は触っただけでは反応しない誤操作の少なさと、“押した” という感触が確実にある安心感です。とくに年配の方になるほどタッチパネルでの操作は不慣れな場合が多く、物理的なボタンであるという安心感は端末選びの際の大きなポイントになりそうです。
端末の使いやすさという点で本機はさらに様々な機能があり、ホームUIにもシンプル系UIの1つである「エントリーホーム」というUIを用意しています。
こちらは他社が用意しているシンプル系UIと同じく、表示する機能を最小限に留めつつ、大きな文字で機能などを分かりやすく表示します。これまでフィーチャーフォンに慣れ親しんできた人には非常に使いやすいでしょう。
そのほか、シャープのAQUOS PHONE SERIE SHL22と同じく画面全体を振動させて音を出す仕組みの「スマートソニックレシーバー」を搭載し、街の雑踏の中などでも明瞭に音声が聞けるほか、ロック画面から直接文字列を検索できる、同社端末ではお馴染みの「すぐ文字」機能なども搭載。より使いやすく、よりシンプルな端末に仕上がっています。
性能面では4.7インチ・HD(1280×720px)液晶に1.5GHz駆動のデュアルコアCPUと若干控えめな印象がありますが、バッテリー容量は2700mAhを搭載するなど、必要な部分にはしっかりとポイントを押さえた作りに。
IPX5、IPX8の防水性能やIP5Xの防塵性能なども備えており、日常での使用で不満が出ることはほぼないでしょう。
auはスマートフォンを「使いこなす」キャリアになれるか
以上、駆け足で発表された4機種について実機を触ったレビューをお送りしましたが、全体の雑感として感じたことは、他キャリア同様にスペック競争ではない新たな模索が始まっているという点でした。
HTC J Oneにおけるデュアルフロントスピーカーの搭載などはハードウェア的な差別化ですが、そのほかの端末に関してはシリーズ製品とのハードウェア的な差別化も薄く、正直見た目でのインパクトというのはあまりありません。
しかし実際の使い勝手という面においては、HTC以外のメーカーは全てシンプル系のUIを搭載しており、それぞれにターゲット層を持ちつつも若年層やシニア層、さらにはフィーチャーフォンからの乗り換えを検討している層に向けたソフトウェア的なアプローチが見られたことがとても印象的でした。
スマートフォンの性能は整った。さあこれから消費者に十分に使ってもらわなければ。というauとしての姿勢が、こういったUIや各種アプリケーションに表れていたように思えます。
また、各端末ごとにキャリアが専用カバーケースを用意したり、ポータブルフルセグチューナーといった製品を用意してくるあたりも実にauらしい視点だと感じました。スマートフォンをより便利に “使っていただく” ことを前提とした今回の発表会でしたが、端末のラインナップ数以上に消費者にスマートフォンとそのサービスをアピールしていきたいという同社の姿勢が見えたように思われます。
[au]
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