MMD研究所は26日、「【大阪・名古屋】通勤・帰宅ラッシュ時のスマートフォンのWEB表示時間調査」の結果を公表しました。それによると、ソフトバンクモバイルのスマートフォン(iPhone・Android)やau(KDDI)のAndroid スマートフォンではパケ詰まり(定義は後述)が見られなかった一方、auのiPhoneおよびドコモのAndroidスマートフォンではパケ詰まりが発生するという結果になりました。
今回の調査は、先月に東京・山手線で行われた調査(リンク)の名古屋・大阪編となっています。
調査は7月16日から19日、22日の平日5日間の通勤ラッシュ(7:00~9:00)、帰宅ラッシュ(17:00~19:00)に行われました。名古屋市・大阪市それぞれの主要な鉄道駅3か所において「Yahoo! JAPAN」トップページが完全に表示されるまでの時間を計測することで、端末の通信・表示速度を比較するというものです。全ての計測は全端末が4G(LTE)環境下となるようなスポットを選んで計測したとのこと。
MMD研究所では「1回の表示に30秒かかった」段階で「パケ詰まり」と定義。パケ詰まり状態での表示時間を「30秒」とカウントし、平均データに加えています。
調査対象端末は、3社の2013年夏モデルのAndroidスマートフォン、そしてauとソフトバンクの「iPhone 5」となっています。
ドコモ | Xperia A (SO-04E) |
au | HTC J One (HTL22) iPhone 5 |
ソフトバンク | AQUOS PHONE Xx (206SH) iPhone 5 |
調査駅は各都市で乗客数が多い上位3駅で、以下の通りです。
大阪 | JR大阪駅環状線ホーム 南海なんば駅北口改札付近 JR天王寺駅中央改札付近 |
名古屋 | JR名古屋駅東海道線ホーム 栄駅東山線中央改札付近 JR金山駅改札口付近 |
結果(大阪市)
大阪市では、auのiPhone 5とドコモのXperia Aが「パケ詰まり」を起こしましたが、他の端末では1度も起こりませんでした。auのiPhone 5は大阪駅で100回中53回、ドコモのXperia Aは天王寺駅で100回中80回(ちょっと多すぎ)「パケ詰まり」と判定されたため、Web表示時間でもこれらが足を引っ張っています。
Credit:MMD研究所
Credit:MMD研究所
しかし、両端末とも他の駅では「パケ詰まり」は1度も発生せず、Web表示時間も非常に良好な結果となっていることには注意が必要です。駅によって測定値に大きな差があるにも関わらず、たった3駅の値を単純に平均化することにはあまり意味がありません。1つの駅での計100回の測定の平均を取ることについては、サンプル数が十分に多いためある程度は意味があると思われます。
とはいえ、「パケ詰まり」の影響を考慮(すなわち駅ごとに比較)しても、iPhoneの場合はauよりもソフトバンクのほうが、Androidスマートフォンの場合はau、ソフトバンク、ドコモの順に快適な通信ができているとの結論に至ります。ただし、なんば駅ではソフトバンクよりもドコモのほうが良好な値を計測しています。
余談ですが、天王寺駅でのau HTC J Oneを除いて、全ての駅・端末で通勤ラッシュ時よりも夜のほうが表示時間が長いということも判明しました。大阪駅周辺の「キタ」、なんば駅周辺の「ミナミ」、そして天王寺駅周辺の「天王寺・阿倍野」と各駅の近くには大阪の3大繁華街があるため、夜の駅利用者が朝と比べて多くなっているのではないかと考えられます。
Yahoo!地図より
結果(名古屋市)
次に、名古屋市での結果を見てみましょう。
名古屋市では、ドコモ Xperia Aが名古屋駅で100回中27回「パケ詰まり」を起こしましたが、他の端末は1度も起こりませんでした。ドコモにとっては大阪市の天王寺駅に続き不名誉な結果となってしまいました。
時間帯ごとのデータを見ると、名古屋駅での「パケ詰まり」はほとんど帰宅時間帯に起こっていることがわかります。夜の名古屋駅にあふれる大量の利用客を、ドコモだけが捌ききれず容量オーバーとなっていると考えられます。
Credit:MMD研究所
Credit:MMD研究所
Web表示時間のデータを見てみると、iPhoneでは大阪市と同じく、全ての時間帯・駅でソフトバンクがauに対して大きく差をつけています。
Androidスマートフォンでは、全ての時間帯・駅でau、ソフトバンク、ドコモの順となりました。
また余談ですが、3キャリアとも名古屋駅では朝より夜のほうが、金山駅では夜よりも朝のほうが通信が遅くなっています。このことから、夜に名古屋駅を利用する人が多いと推測でき、名駅(名古屋駅)に娯楽が集中しているという名古屋の性質を垣間見ることができます。
名古屋の娯楽の中心と言えば「栄」も含まれるのですが、栄はエリアが非常に広い点、また栄駅が地下鉄の駅でしかも乗換駅である点を考えると、駅の中央改札口は待ち合わせ場所としてあまり適切ではないので、昼と夜とで明らかな差が出なかったことも納得できます。
Yahoo!地図より(大阪市よりも拡大してある)
まとめ
今回は、ソフトバンクのiPhone、そしてau・ソフトバンクのAndroidスマートフォンが全ての駅・時間帯で良好な結果を残した一方、auのiPhone、ドコモのAndroidスマートフォンが一部の駅・時間帯で「パケ詰まり」を起こすという残念な結果となりました。駅のように大量の利用客がいる中でも滞りなく通信ができるように、各社ともますますネットワークの整備を進めてほしいと思います。
パンフレットの実効値表示に関して
一方、今回の調査で改めて明確になったのは、通信状況は機種(使用周波数帯域)、場所、時間帯によって非常に大きな差があり、平均を取ったりデータを混同して統計を取ったりするのはほとんど意味がないということです。
また先日、日経BPによる全国的な通信速度・エリアテストが行われましたが(使用機種は全く同じ)、その結果は今回のものとは対照的に、ドコモ、au、ソフトバンクの順になったというものでした。つまり、測定方法・場所によって結果は全く異なるのであり、その結果に一喜一憂することは(「中の人」でもない限り)ほとんど無駄であるといえます。
特に測定場所による調査への影響はかなり大きく、携帯電話で使われる2GHzの波長は約15cm、800MHzの場合は約37cmであるため、測定箇所が「一歩分」違うだけで我々の想像している以上に電波状態が変化しているのです。
青の波と赤の波、向きこそ違えど実は同じ波。何重にも反射した波が干渉しあう中、
端末は”基地局が自分に向けて送信した信号” を見つけ出し、受け取るのである。(イメージ)
総務省はこれまでさんざん批判されてきた「通信速度の理論値と実測値のかい離」を重くみて、今後はパンフレットなどに記載する数値を実効値に切り替えるように各キャリアへ要請していくということですが、果たしてどのような方法で調査し、どのようにまとめて表記するのが正しいのか(消費者の実感に近づけられるのか)、道のりはかなり長いように思えます。
電波干渉に関して:[ITmediaビジネスモバイル]
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