電気通信サービス向上推進委員会は8日、電気通信サービスの広告に関する自主基準を更新し、業界として実人口カバー率(メッシュ方式)を統一して採用することを正式に決定しました。これにより、現段階で各社の間でバラつきのあるエリア広告に関する表示方法が共通化され、消費者がより正しい判断を下すことができると期待されます。
メッシュ方式の “実人口カバー率” が正式に採用
今回改正されたのは、「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドライン」。ここで新たに示されたメッシュ方式のエリア表示とは、昨年5月に総務省が作成した「広帯域移動無線アクセスシステムの高度化のための特定基地局の開設計画の認定申請マニュアル(平成25年5月)」に記載される人口カバー率の算出方式に準拠したものです。
同マニュアルには、緯度・経度を分割したメッシュを使用するとされています。ここでいうメッシュは1辺約500mの長方形で、南北方向の長さは緯度によって異なっています。国勢調査にも使用されているため、各メッシュ内の居住人口は簡単に照会することができます。
今回改訂されたガイドラインではさらに具体的な事例を示し、業界としてはメッシュの50%をカバーしているか否かを判断基準とするとしています。メッシュ内の電波カバー率が50%以上なら全域をカバーしている(100%)とみなし、それ以下なら0%として扱う、ということです。
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旧来の人口カバー率表示と新基準による実人口カバー率の違いを表した図(筆者作成)。
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旧式は役場がエリア圏内ならばその市町村の全ての人口を圏内と見なすことができた。
各社の対応
KDDI
KDDIは、LTEのエリア表示で実人口カバー率を採用しています。全国を500m四方に区切ったメッシュを採用し、そのメッシュにおける面積カバー率をメッシュ内の人口に掛けるという仕組みを採るなど一部仕様が異なります。2014年3月時点での実人口カバー率は99%。
同社は今後、新基準によるエリア表示に切り替えていくとコメントしています。なお、新基準においてもカバー率99%は達成できているとのこと。
NTTドコモ
NTTドコモはこれまで、上の図でいう左側・すなわち旧式の人口カバー率をもとにエリアカバー率を表示してきました。2014年3月時点での人口カバー率は97.5%(計算方法が異なるため比較は意味なし)。
今回のガイドライン改訂を受け、NTTドコモは新基準によるエリアカバー率を計算中とのこと。準備が整い次第開示するとしています。
ソフトバンクモバイル
ソフトバンクも、LTEのエリア表示には実人口カバー率を用いてきました。ソフトバンクは最近のエリアカバー率を公式ホームページなどで公表しておらず、最新の実人口カバー率は2013年6月時点でのもので92%となっています。
同社は今月7日にエリアマップを実に4か月ぶりに更新したばかりですが、実人口カバー率の方は(1年以上たったにも関わらず)更新されませんでした。
筆者の勝手な推測ですが、同社が新基準に対応することはほぼ確実と断言してよいと思われます。というのも、エリアマップを見る限りでは、ソフトバンクは将来のLTEエリア拡大をまだ解禁されていない「900MHz帯(プラチナバンド)」に託しているように思えるからです。「プラチナLTE」が解禁された時にエリアカバー率を更新することで、広告効果を高めようとしているのではと考えられます。
公正な基準により、消費者が比較しやすく ー各キャリアは積極的な情報公開を
今回のガイドライン改訂による一番の成果は、これまで唯一旧来の人口カバー率を使い続けてきたNTTドコモがついに同方式を採用するに至ったという点です。これにより、消費者が携帯通信キャリアを選ぶ時の重要な判断基準となる「通信エリア」についての比較がより簡単で、かつ明瞭なものになると言えます。
とはいえ、各社のLTEエリアはすでに広範囲に展開されており、いまさら「最後の1,2パーセント」を競ってほしいとは筆者は思いません。それよりも現状ではハッキリとしない通信速度別のカバー率や、今後展開される “真の4G” であるLTE-AdvancedやWiMAX 2への対応状況などを実人口カバー率で示してほしいものです。
今回のガイドライン改訂を機に、我々消費者が知るべき「もっと詳しい」情報を、よりわかりやすく比較できるような仕組みが構築されることを願うばかりです。
[電気通信サービス向上推進委員会 via ケータイWatch]
参考:[KDDI 1, 2] [NTTドコモ][ソフトバンクモバイル]
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